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第13話



「嬢ちゃん、ほんとにここで降りるのかよ?なんもねぇただの枯れた草原だぜ?」


「ええ。ここでいいの。ありがとう。」


アタシは風になぶられる髪を抑えながら乗り合い馬車の御者の男をふりかえった。


「そうか。まぁ、この辺りは強い魔物や野盗は出ねえが女の1人歩きはあぶねぇし、暗くなる前にここを通る馬車つかまえて帰るんだぜ?」


無精髭で豪快そうな見かけに似合わず心配性な御者はそう言い残して、次の街へと馬車を走らせて去って行った。




ーーーサアアァッ


草原を勢いよく風が通って行く。


ただただ続く枯れ草で覆われた広い平野。


「変わらんな。ははっ。まるであの頃に戻ったかのようだ。」


アタシはすっと片手を前に出した。


「変わったのはアタシだけか。」


前に差し出した指先からは魔力の一欠片すら生まれ出てこない。

わかってはいたけどやはりこういう時魔法が使えないというのは不便だなと改めて思った。

だが、感傷に浸っている時間はない。

比較的安全な地域だとしても、あの御者の言う通り魔法も剣も使えないただの少女が遅い時間まで町の外をウロウロするのは危ないだろう。


「さぁーって、目的のブツを探すとしますか。しっかしアタシの魔法が使えないとなれば、記憶と勘に頼るしかないなぁ」


だだっ広い草原を見渡してみる。


「あんま遅くなるとアタシの行動をやたら見張っているアレクに不在に勘づかれて怪しまれる恐れもあるしな。とりあえーず、こっち!」


勘のまま歩みを進める。30分ほど歩いただろうか。

アタシの勘は当たったのか、なんだか懐かしい気配がした。

「さあ、今のアタシの声は届くかしら。」

ここかなと思う岩の近く、枯れ草が生い茂る土の上に仁王立ちになったアタシは目を閉じ...るどころか、目を見開いて平野の隅々まで響き渡る大声を出した。


「族長の酒瓶ーーっ夜な夜な減ってくのなーぜかなっ!」

「村の酒樽.....


「や、やめんかーーー!エレメナ!この小娘がぁっ!!」


ボゴオッッ!!


アタシの声に反応して 野太い声と共に毛むくじゃらな小さな男が土の中から飛び出してきた。


「大きな声でそれを言うなと何回言ったらわかるんじゃおぬしはっ!!....ぬ?」


小さな男はその小さな体には似合わない筋肉隆々な腕を組んで首を傾げた。


「おぬし何か見た目がかわったのう?前はもうちょっと髪の色が白くなかったか?んん?背も縮んだか?ぬ?」


「へー。やっぱりドワーフってすごいわね。アタシがエレメナの生まれ変わりと気づいたの?」


「生まれ変わりじゃと? ぬ?今は何年じゃ?おぬしがここにやたらいらんもんを埋めて、ワシにこの場所の番をおしつけてから何年たった?」


「ざっと300年かな。」


「ほう。300年か。そりゃヒト族は生きとらんな。そのちんちく...いや 小さな姿が今のおぬしか。」


「いま ″ちんちくりん”って言いかけなかった?」


「い、言っとらん。」


「いいのよ?族長の酒瓶くすねてるのバラしても。」


「く、くすねてなどおらぬっ。ど、毒見じゃ!それに沢山ありすぎて倉庫に入りきらなくなるからワシが間引いていたのじゃ!決してくすねてなど...くそう!おぬしに目撃されてから、脅されるわ、この場所の番は押し付けられるわ、散々じゃ!」


うーん。必死に小さな男は反論してくるが、半泣きのドワーフは毛むくじゃらで涙目でもあまり可愛くない。


「まぁ、そのお役目も今日で終わるわ。いろいろあったけどこの場所の宝を300年も守ってくれてたアンタには感謝してる。」


「なんじゃと?おぬし この場所に隠した物は弟子たちへの遺産じゃなかったのか?」


「状況が変わったのよ。それにアンタがまだここにいるってことはアタシの弟子はこの場所に1人も来なかったんでしょ?」


「来なかったのう。まぁ、おぬしの弟子は大半がヒト族じゃったからもう殆ど生きてはおらぬか。この先ここに来る者もおらぬか。」


「それがそうでもなさそうなのよ。」


「ぬ?」


ははは、と枯れた笑いをするアタシに小さな男は再び首を傾げた。


「何にせよ。今は時間がないの。さぁ、解放するわ。

アンタの名前を呼んであげる。汝、小さき職人、堅実な友、そなたの名はーーーーツダルクル!」


過去のアタシが小さな男にかけた縛りの魔法を解除する。方法は簡単かけた本人がかけられた相手の真名を呼びながら解除を願うだけ。魔力はいっさい必要ない。


小さな男、ドワーフのツダルクルがきょとんとした表情をする。彼はハッとしたあと、自らの足をじっと見つめた。見えない透明の足枷は消え失せ彼はもう自由に動かせるはずだ。その足でどこまでも歩いていける。


「ぬ、ぬぬぬ。解けたのか。では、ワシはおぬしのガラクタをおぬしに渡して行かねばな。ほら。これじゃ。」


「ガラクタじゃないわよ。失礼ね。」


口を尖らせながら文句を言うと、ツダルクルが笑う。


「ワハハハハ。受け取れ。」


がしゃんかしゃん。がしゃん。

何もない空間からアタシのコレクション、弟子たちへの遺産だったモノが落ちてくる。

ツダルクルが魔法を使って地中に埋めた遺産を地上へと転移させたのだ。


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