第12話
「無理ね。」
「なぜだい?」
「だってアタシは剣も扱えなければ、魔力すらないただの一般人よ?アンタたちと冒険になんて出たら町の門をくぐって数分であの世いきじゃない?」
王命を受けたのはさっきの冒険者たちで、アタシやアレクスが直に命を受けたわけじゃない。
彼らの都合でせっかく自由に生きられる今世の大事な命を一瞬でなくすつもりはさらさらない。
「この話は聞かなかったことにするわ。自力でアレクスを口説き落とすか、それかアレクスは諦めて他の屈強で日銭を稼ぎたい傭兵や冒険者を雇うかしたらどう?それじゃ、アタシは急ぐから。」
そうだ。のんびりしていたらすぐに夜がくる。今はまだ日の光が明るいが、早く魔光屋でクリスタルに魔光を補充してもらわないと、自宅の灯を点けることも風呂の水を温めることもできない。
「ま、待ってくれ!!もう少し話を...」
「...っ!!」
足早に金髪の白魔法使いの横を通りすぎようとした時、焦った白魔法使いに腕を掴まれた。
しっかりとクリスタルを両手で抱えていたところを掴まれたため腕に激痛が走る。
??
痛いっと目をぎゅっと瞑ったが、なせがそれ以上引っ張られることはなく、白魔法使いの手がぱっとアタシの腕から離れた。
ん?と目を開けると白魔法使いは顔を真っ青にしてガタガタとなぜか震えている。そして彼の視線はアタシを見ていなかった。
「ア、アレクス・ラシガー...!!」
そう、彼の視線の先。アタシを掴んだ白魔法使いの手を逆に捻り上げて私の腕から離させた男がアタシと白魔法使いの前にいつのまにかいたのだ。
「...エレメルに何をしている?」
血に、いや地に響きそうな怒りの声でアレクスが白魔法使いを睨んだ。
「ひっ!いや違う。別に彼女に危害を加えようとしたわけじゃないんだ!」
「危害を加える?貴様何を言ってる?危害どころかおまえにはエレメルと会話する権利すら、同じ空気すら吸う権利すらないんだよ?」
「ひいいいっ。ま、待て!話し合おう!おいっ!剣を抜くなああぁぁ!」
スラリと抜いたアレクスの剣が沈み出した夕陽に照らされ紅く光った。
「待って!待て待て!こんな場所で騒動おこされて町警備のおっちゃん達が来たら、事情聴取で時間取られて魔光屋が閉まってしまうじゃないのーっ!!」
アタシは火をつけたコンロで暖ためたご飯を食べたいのだ。温かい風呂にも入りたいし、髪はドライヤーで乾かしたい。その全部は魔光の力がないとかなわない。
「アタシのぬくぬく生活を邪魔すんなあぁぁぁ!!」
がごんっ
アタシが勢いよくぶん回したクリスタルがアレクスの頭に直撃する。
「ふぎゅる...」
「成敗完了!」
「いや、成敗って君を助けにきたんじゃないの?この子」
口を引き攣らせて、さっきよりさらに青くなった白魔法使いが、なぜかアタシをみてビクビクしている。
「む。確かに。いや、でも街の中で抜刀はいけないわね。なのでこれで良しっ。」
「い、いいんだ?」
完全に地面にのびているアレクスを見ながら白魔法使いが固まっている。
「それよりも急がないと店が閉まっちゃう!」
慌てて駆け出そうとしたアタシに気付き、白魔法使いがはっと顔を上げた。
「ま、待ってくれ!せめて任務の話だけでも聞いてくれ!どうしても無理なら諦めるからっ」
「聞いても同じよ!見ての通りアタシは魔力すらないただの町娘なの。危険な旅についていくなんてできないわ。足手まといになるだけよ!」
走りながら魔光石であるクリスタルを白魔法使いに見せる。
「ちょ、調査と討伐依頼なんだ!!や、山をこえた先のフレイユールの街に!なぞの巨大モンスターが出現していて!!」
無視しているのに、白魔法使いがアタシを追いかけながら走って勝手に王命のクエストの内容を語り出してくる。
「だから聞いてもアタシには無理.....」
「聞いてくれ!恐ろしいモンスターが街を這いずり回るらしいんだ。『オシショーミズヤラナキャオシショーオシショーココロダマスープハヤメテヤメテ』と意味不明の言葉を発しながらっ!」




