― 転 2 ―
斧木弁護士がファミレスでの費用を支払った後、一足お先に、と宮田の家へと向かった。
そのあとに、私達は家へと向かった。斧木弁護士と一緒にいる姿を、誰かに見られてたくなかったというのが本音だ。
その誰かというのは、もう、誰でもいい。
ちょうど、父親も家に帰ってきたという連絡が入ったので、なら、それに合わせて帰ろうと思ったのも事実である。家に父親がいるならば安心だと言いたかったが、どこか、そうはできない自分がいて、竜馬の小さな手を少し自信なく握るしかなかった。
家が見えてくるまで、ココもついてきてくれたが、家が見えてくると、さすがの彼女も、臆した。
「あの家だよね」
私の家の向かいの家を見ながら、ココが言う。
時刻が夕方であたりが薄暗いせいもあるかもしれない。
ただ、私たちの目には、その家は普通の家とは異なる雰囲気があった。
「そう。あの家」
「どうする?」
「どうするって、別に、あの弁護士の話が全部、真実かどうかも」
「でもさ。弁護士が嘘を吐くかな」
それもそうだ。噓を吐くメリットがない。
仮に、宮田の悪評を流すのが目的だとしたら、筋は通る。しかし、宮田の悪評を流して何になるのか。
だから、きっと、真実なのだろう。
と、思いたいが、だとすると、子供が一人行方不明になっているのも、真実になる。
それを信じたくないから、嘘だと思いたい。
が、宮田を怪しいと思っている自分がいるのも事実であり、思考がぐちゃぐちゃになってしまう。
「あのさ。なんなら、二人ともうちに泊まる?」
「いや、いいよ。ココ、それはまたの機会にする」
「そう。あのさ。連絡」
「する」
混乱する頭を落ち着けるため、一つ、息を吸って吐き出した。
ココとわかれ、家へと向かう。
一度、振り返ると、ココは足を停めて、私のほうを見ていた。そして、手を振った。
「ただいま」
「お帰り。遅かったね」
急いで、家に入ると、父親が出迎えてくれた。
その顔には心配そうな顔が浮かんでいる。
竜馬をぐっと抱きしめ、そのあとに、父は私へと目線を向ける。
「保育園から連絡が来てね。心配していたよ」
「うん。それで、ね。お父さん。あの、話があるの」
リビングで、私は父親に全てを話すこととした。
父はその全てを相槌を打つことなく、粛々と聞いていた。そして、話が終わると、席を立ちあがった。
それから、キッチンへ入り、ホットコーヒーを入れて戻ってきた。竜馬の分として、ジュースがあった。
「わかった。引っ越しだ」