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7・婚約

 

 レオナルドに指輪を押し付け…… もとい貰ってから二年が経ちました。ルナミナは十二歳、すっかり女の子らしく━━━━ なっていませんでした。


「ルナミナ様!貴族の子女たるものが、木登りとは何事ですか」


「だって良いお天気だから」


 ルナミナの住む塔は遠くの街まで見渡せます。けれども距離があるので小さく見えるのです。少し塔から離れた場所ならば、もっと良く見えるかも、と木に登りました。ルナミナはルナミナになる以前はとっても元気な女の子だったと思います。


 お付きの侍女がお昼を持ってきてくれました。折り畳んだ木製のテーブルと椅子を用意して、並べてくれます。ミルクで煮込んだ紅茶、チャイをポットから注ぎます。

 ここでは多少の魔法があるので、特別な魔法のかかったポットから、温かい紅茶が注がれます。


 木陰でランチとは何とも贅沢だと思いました。回りに人がいますが、貴族であるルナミナは何時も一人で食べます。以前の世界でもルナミナは一人で食事していた様に思います。


 記憶にはありませんが、ひょっとして社会人だったのでしょうか。話し相手がいるだけでも以前よりは、ましに感じます。家族がそろう週末は自宅での食事が許されます。

 兄と妹は学校に通っていて、ちょっぴり羨ましくなります。


 ルナミナは三ヶ月に一度位は人前で歌います。神に捧げる歌なので、人前である必要は無いのですが、多くの人がカナリア姫の歌を望みます。気持ちは分かります。娯楽の少ない庶民にとって、歌姫の存在は大きいのです。


 ルナミナも以前はアイドルに夢中でした。綺麗な歌声をもっともっと聞いていたいと考えていました。


「ルナミナ!」


 不意に名前を呼ばれました。例の王子様です。


「ルナミナ、私はもうすぐ卒業だ。だから私と結婚しよう」


「お断りです」


「不自由はさせない。以前に君が言っていた三食昼寝つきを約束する」


「まあ、素敵ですけれども、今も三食昼寝付きですわ」


 以前に王子に結婚の条件を聞かれ、そう答えてしまいました。面倒くさいのが嫌いなルナミナです。


「私と結婚した方がお得だぞ。まず君は間違いなく、多くの人から求婚を受けるだろう。誰か一人を決めなければ、周囲は黙っていない」


「だからってレオナルド様と結婚する事にはなりませんわ」


「他国の王族も君に目を着ける筈だ。君は外国語は得意かい?」


 うっ、と言葉につまります。ルナミナは意識せずに育った母国語は喋れますが、前世では英語は不得意でした。今も比較的簡単な筈の隣国の言葉も、さっぱりなのです。


「それが何だっていうの?」


「他国は君をこぞって望む。私と婚約すれば他国にいかずに、権力者を退けられる」


 確かにルナミナは巫女として、他者を拒む権利がありますが、貴族は強引な人間も多いのです。ルナミナが望まない結婚を、知らぬ間にさせられるかも知れません。


 でも━━━━ それでも。


「婚約破棄からの処刑台は嫌なのよーっつ!」


「ルナミナ、私は婚約破棄等はしない。誠実に君に接するよ」


「王子様は皆そう言うのよ」


 ルナミナが接した王族は自分だけのはずです。ルナミナの行動は逐一密かに着けた監視によって、報告されているので間違いありません。


「困ったお姫様だね」


 レオナルドは優しく微笑み書けます。これでも学園では女の子にモテて、激しくアタックされているのです。けれどもルナミナのように、心を動かされる女性はいないのです。


「お願いします。私と婚約してください。絶対にその手を離しません」


 ルナミナの前に片ひざをつき、右手を伸ばします。思わず手をとると軽く手の甲に口付けがおとされました。


「あ、うぅ……… 」


 いくら女子力の低いルナミナでも、これには赤面ものです。


「はいって言ってルナミナ」


「はい?」


「よし!言質は取った!直ぐに手配を。ミッシェルド家にも早急に連絡を」


「えっ!待って今のは違うの」


「言い訳は結構だ。王族に嘘をつくのは反逆罪に問われるぞ。いいか、君は今から私の婚約者だ。異論は認めない」


 どうしてこうなった。ルナミナは頭を抱えます。今まで頑なに拒んで来たのに、婚約者にさせられてしまいました。



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