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7.僕にできること


「ごめん、上原さん……」




 上原さんの本当の気持ちを聞いた僕は、彼女が今するべきことはなんなのか、僕に何かできることは無いかを必死に考えていた。







「裕司ー、あーけーて」

「また来たの?」

「ずっと来るよ? 裕司が学校に来ないなら」


 母さんが亡くなった頃のことを思い出す。

 僕は死という物を受け入れられなくて、ずっと部屋に閉じこもって泣いていた。

 でも学校を休んでいた間、なゆは放課後毎日、家に様子を見に来てくれた。

 

「でさ、母さんがその時……」

「うん、うんうん」


 そんななゆに自分の中に溜まっていた母さんへの思いをぶつけると、笑顔でその話を聞いてくれた。

 

 本当に彼女には感謝している。




 ……僕が上原さんにできること、それはすでに知っていたんだ。

 彼女は、両親の死と向き合うことから逃げている。




「お父さんとお母さんの話、聞かせて貰ってもいい?」


 僕の言葉に、最初彼女は戸惑っている様子だったが、やがて自分の中に溜まっていた両親への思いを僕にぶつけ始める。


 2人との楽しかったこと、おもしろかったこと、2人の大好きだったところ、直して欲しかったところ。全てを僕は受け止める。

 

 彼女はまるであの時の僕のように見えた。


 上原さんと僕は似ている所があるのかな。なんて一瞬思ったが、境遇が似ているだけだ、勘違いするな、と自分を戒める。







 いつの間にか窓の外の空は赤く染まっている。上原さんは話し疲れたのか座ったまま眠ってしまった。その横顔は、心なしか明るくなっているように見える。

 

 静かに彼女の膝に毛布をかけ、僕は階段を下り、乾いた喉を潤す。

 学校休んだこと父さんに説明しないとな、なんて考えていると、不意にインターホンが鳴った。誰だろう、と思いながら玄関を開ける。


「なんで……」


 そこには竜一と、気まずそうな顔をしたなゆが立っていた。

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