6.幼なじみ
「上原さんと裕司、来てないな」
朝のホームルームが始まっても、2人の席は空席のままだった。
裕司は昨日のこともあって、なんとなく休んでいる理由の察しはつく。あいつも心配だが、上原さんはどうしたんだろう。竜一は心配そうな顔で考える。
「ごめんね酒井、昨日は私のせいであんなことになっちゃって、応援するはずだったのに邪魔しちゃってた」
申し訳なさそうになゆが謝る。
「ああ、別にいいけどさ。……北島、裕司のこと、いつから好きだったの? てかなんで好きになったの?」
「な、なんで? 別に、そんな」
一気にしどろもどろになる。明らかに顔が赤い。
「見てりゃ分かるって、流石の俺でもな。で、どうなの?」
「酒井って人のことになったらえらく喋るようになるのね……」
呆れ顔になるなゆだったが、ため息をつき、観念した様子で話し始める。酒井に対しての申し訳ないという気持ちも働いたのかもしれない。
「私、小さい時はこんなにうるさくなくって、静かに本とか読んでる子だったらしいの。そんなによく覚えてないんだけどね。
でも裕司のことは覚えてる。家が近所だし、よくお互いの家に行ったりして、いつも一緒にいたっけ」
最近は全く裕司の家行かないな……と寂しそうな顔でなゆは呟く。
竜一も2人の幼少期の話が気になるのか、話に聞き入っている。
「……で、やっぱり男女2人が仲良くしていると、からかってくる男子とかがいるんだよね。私はなにも言い返せなかったんだけど、それを見た裕司が私の代わりにその子達に向かって行って、がむしゃらに暴れ回ってくれたの」
「今の裕司からは想像がつかないな、昔は活発な子だったのか?」
竜一は若干苦笑しながら聞いた。
「うん、……小学生の時、裕司のお母さんが亡くなったのは知ってるよね?」
「ああ、あいつはそんな話しないけど、何度か噂で聞いたことはある」
「そう、お母さんが亡くなってから、裕司は1週間以上学校を休んでたの。そしたら、小さい街だしすぐに噂って流れるものなんだね、裕司が次に学校に来た時にはクラスのほとんどの人がそのことを知ってた。」
思い出しながら、なゆは辛そうに話す。
「私と裕司のことをからかってた子達が、……裕司に心ない言葉を被せるの。いつもなら反撃する裕司も黙り込んでた……。
気づいたら私は、生まれて初めて人を殴ってた。ただ、裕司は私が守らなくちゃいけない、ってことしか頭になくって。もうその時には裕司のこと、大好きだったんだと思う。」
なゆは話し終えてから、なんてこと喋ってんだろ私、と恥ずかしくなって今度は耳まで真っ赤にする。
竜一はずっと真剣な顔をしている。
「北島、」
竜一は真剣な顔のまま、考えをまとめ、なゆにある提案をした。