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4.デートのはずだったが


「なんで竜一のデートに付き合わされてんだよ……」

 まさかの巻き添えを喰らって、次の休日、僕は待ち合わせ場所の駅へと向かっていた。







「本当に大丈夫? まだあんま日が経ってないけど」


 映画館へ4人で遊びに行く予定の前日、あっさり誘いを受けた上原さんに、僕は本当に無理していないか確認する。


「私は大丈夫です。それにせっかく誘って頂いたので断るのも悪いですし」


 まだ彼女と関わりを持ってから期間が短いが、中学の頃から名前や顔は知っている。

 けどそれ以上彼女について、知っていることなんてほとんどないのに、不思議と本人がそう言うのなら大丈夫なんだろうと納得してしまう。


 泣いているところなんて想像ができないくらい彼女の心は強いんだろう。そう、上原千里は強い人だ。


 


 家から歩いて10分程のところにある駅に着いたのは、僕が4人の中で1番最後だった。

 一応レディーファーストということで上原さんには

先に行ってもらっていた。


「もう、裕司遅いー」


 いつにも増してオシャレな服装のなゆが軽い口調でそう言う。

 なんでなゆが張り切ってんだよ、と思いつつ、上原さんの様子を確認する。

 あまり露出が多くなく、上品な服装。さっき家でも見たが、やはり目を見張るものがある。

 ……僕は何を考えているんだろう……ま、まあ時々だが笑顔を見せることも増えてきたし、大丈夫そうだ。




 電車に乗り、3駅ほどの所にあるショッピングモールに着いた。映画館はこの建物に併設されている。

 まだ時間があるので、昼ご飯を食べて、その後もどうでもいい話などで盛り上がった。

 

「そろそろ時間だし、行こっか」

 

 みんな時間を忘れかけていた中、なぜかずっと静かだったなゆに声をかけられ、3人は思い出したように映画館へ向かった。なゆもそれに続く。

 







 恋愛ものがあまり好きではない僕でも楽しめる、中々いい話だったと思う。左隣に座っていた上原さんも、クスッと笑ったり、悲しい顔になったりしていた。


「面白かったなー、特にヒロインが気持ちに気づかない主人公に意を決して告白するシーン、あそこは良かった」


 竜一は映画が終わると、すこぶる興奮して上原さんに話しかける。彼女はそんな様子を見て微笑む。


「そうですね、すごく……感動しました」



「あの2人、いい感じになってるね」

「ああ、まあそうかな」


 曖昧に答えると、なゆはあからさまに不機嫌な顔をした。


「裕司あんた、ほんとに酒井のこと応援するつもりあるの?」

「ああ、あるよ」

「ないでしょ」

「あるって」

「だって今日、ずっと上原さんばっか見てたじゃん」

「……」

 

 答えられなかった僕に、なゆはそれ以上追求してくることは無かった。

 しかし明らかに雰囲気が悪くなり、竜一も何かあったんだろうと察してくれて、今日は解散ということになった。


 やっぱり事情を話すべきなのかな。

 そんなことを考えながら重い足取りで僕は家に帰る。









「……上原さん、……なんで泣いてるの?」



 そして、さらに翌日、僕は自分のしてしまっていた事に気付かされる。



 


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