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3.竜一はいつも間が悪い


 教室に入ると、竜一となゆはもう席に着いており、2人で何か話をしているようだった。


 僕も席に座り、吹き出した汗を拭く。2階とはいえ、スクールバッグを持って階段を上ると、この季節は汗をかく。


「お、裕司、来たか」


 何か言いたげなことを隠しきれていないその表情は、短髪でいかにも高校生らしい見た目とは裏腹に、どこか小学生のようなあどけなさを感じる。


「おはよ、何かあったのか?」


 勿体ぶられても嫌なのでストレートに聞く。


「上原さんが学校に来たら映画に誘ってみようと思ってさ。どんな感じで誘えばいいか北島に相談してたんだ」

「え、昨日まで喋りかけづらいって言ってたのに急にどうしたんだよ」

「ずっと眺めてるだけじゃ嫌だからな。いい加減勇気出そうと思って」

 

 なんで今なんだよ竜一……両親を亡くしてすぐの彼女は映画をあまり楽しめないだろう。断る可能性も十分ある。

 竜一も、こんなに勇気を振り絞って残念なことになったらショックも大きいだろう。


「別に今じゃなくても良くないか? 病み上がりかもしれないしさ」


 なんとか理由を付けて今は止めさせよう。


「なに裕司、あんた上原さんをデートに誘われたくないわけ?」


 そうじゃないんだよ……


 その後もなゆに睨まれつつ無理やり理由を作ったりして説得するが、これまたこういう時に限って竜一は意思が固い。


 そうこうしているうちに、上原さんが教室に入ってきてしまった。竜一には悪いが、もう見守るしかないようだ。

 なゆの目配せに気づいて、平然を装う竜一。なぜか手を膝に置いて背筋を伸ばしている。

 竜一は彼女が席に着くと、ふぅ。と深呼吸をしてから話しかけた。


「おはよう上原さん、風邪ひいてたの? 大丈夫だった?」

「おはようございます。もう大丈夫です、元気になりました」


 彼女はおそらく誰の目にも、事情を知っている僕でさえ、特に違和感を感じない。いつも通りの落ち着いた雰囲気に見える。


「そ、そっか、良かった。……ところでさ、この間上原さんが読んでた本、たまたまチラッと見えたんだけど、あれ映画も今上映してるみたいだね。」


 理由もしっかり打ち合わせしていたんだろう。

 というか教室で誘うのか……


「そうなんですか? 知らなかったです」

「……で良かったらなんだけど、一緒に見に行かない?……」


 竜一の顔がどんどん赤くなって行く。


「……コイツらと」



 は?



 

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