これは『練習』だから! 〜それでも妹と戯れたい〜
これは『練習』だからシリーズ3作目!
前作を知らない人にも読めるように頑張りましたが、200%楽しみたい方は作者名かこれは『練習』だからシリーズをクリック!
あけましておめでとうございます!
正月とはまったく関係ない話ですが……。
杉崎凜は高山祐香のことが好きだ。
同性に対して抱く不思議な感情――。
その気持ちは純粋な恋愛じゃない。
正しい表現をするならば『萌え』。
かわいいと思うし、もっと親密な仲になりたいとも思う。
盗撮した写真はお宝だし、ハレンチなことだって考えた。
しかし凜が同性に『萌え』を感じたのはこれが初めてのことじゃない。
初めて萌えたのは中学生になってすぐの時。
自分とそこまで似ない妹――沙菜に対して感じた気持ちだった。
どうしてこんなにもソワソワするんだろう、と――。
最初は恋だと思った。
妹に恋をするだなんて、自分は異常者なんだと。
悩みに悩んだが解消に時間はかからなかった。
キスをしたら気持ちが晴れたのだ。
恋なんて高貴な気持ちじゃない。
自分の欲望をぶつけているだけだった。
それが判明してから約3年。
今では自分の気持ちに悩むことなどなく吹っ切れている。
むしろ凜の欲望は抑えられなくなっていた。
「沙菜、今日もちっちゃい胸だねー。お姉ちゃんが育ててあげる」
「んっ……! ゲームやってんだけど! 集中、させぇ……!」
学校では男子以上にイケメンな性格で、いつも無表情のクールビューティー。
そんな凜も妹相手だとデレデレの甘々だった。
「あんた、こんなに弱かったっけ……。久々に摘んだけど力加減忘れちゃった」
「せめて揉むで終わってよ! 何よ、摘むって!」
キツく睨む沙菜。
彼女の目つきが鋭くなってきたのは凜のセクハラが原因かもしれない。
「あ、もしかして自分で触ってた? だから感度が――」
「うわ、最低……。お姉ちゃん、本当に病院行って。頭のね」
「どこの姉妹でも下ネタくらい話すでしょ。軽いコミュニケーションだって」
沙菜を膝の上に乗せて体温を味わうのが凜の日課。
沙菜はいつもなら抵抗するが、テレビゲームをプレイ中の時だけはほとんど無抵抗なのだ。
たとえ服の中に手を入れられようと敏感な部分を愛撫されようと、どうにかゲームは続行する。
そこに姉は目をつけた。
今日も昼間からセクハラ三昧だ。
「はぁー、幸せ……」
「幸せなのはいいけど、さっさと指の動きをとめて」
「摘んだままでとめてるけど。動かしてほしいの?」
「ふぁ……!」
指の間に挟まった突起を動かすと、合わせて沙菜が声を出す。
その艶っぽい声こそが凜の好物。
「冬にはやっぱり女の子の肌……。妹カイロ、いい……」
「カイロとして使うなら変な場所触るな! もうゲームやめるから、どいて!」
「そういう反応も含めていい! やっぱり幸せだわー」
胸から手を移動させ、凜は腹を撫でる。
元日の今日、どうせなら祐香と話したいと考え電話をかけたのだが不在。
祐香がダメならイチャイチャできる相手は妹しかいない。
今日はとことん弄ぶつもりなのだ。
「お、ゲームやめた。じゃあ沙菜、お姉ちゃんと遊ぼ」
「最近、お姉ちゃんが言う『遊び』ってだいたいアダルトなやつじゃん……。絶対やだ」
「お願い! 変なやつじゃないから!」
「この前もレスリングって言ってエッチなこと。また前もプロレスって言ってエッチなこと……」
「あのさ、『ストレス発散』って言ってくれない?」
「やっぱ最低……」
ゲーム機のコントローラーを床に置き、沙菜は凜に体を傾けた。
態度に棘があっても結局は姉が好きだった。
もちろん凜の『好き』と沙菜の『好き』は違うニュアンスだが。
「それで、何するの? 内容によっては、つきあってあげないこともないよ」
「うん。昨日『最強操り人形催眠』ってアプリを買って――」
「却下」
「お願いぃ! これは『練習』だから!」
「妹を実験台にしないで! 放して!」
本当は祐香に使うはずだったが、催眠が本物かどうか確かめたかった。
もしアプリが偽物で自分の下心が祐香に知られたら……。
――凜ちゃんってそんな人だったんだ、気持ち悪……。
――私は凜ちゃんのことなんて好きじゃないから。さよなら、二度と話しかけないで。
なんて言われる危険性があるからだ。
(ま、これは適当に考えたカバーストーリーなんだけどね)
そう、実際には無料ダウンロードのジョークアプリ。
本当に催眠効果なんて得られるわけもなく、ただの雰囲気づくりだ。
ただ妹と遊びたいがために入れたものである。
「ほら、スマホをよく見て。これ高かったんだから」
「ほんっとバカだよね……。催眠なんてあるわけないのに」
(こんなんが姉で大丈夫かなぁ……)
無理やりスマホの画面を見せつけてくる凜が鬱陶しくもあるが、どうせ催眠なんてあるわけない。
ここで姉の目を覚ましてやろう――と沙菜は画面を凝視する。
「見てるけど……?」
「まずは深呼吸して。はい、吸って。……吐いて」
スマホの画面には白い背景の中心に黒い点がポツンとあるだけだった。
紙に鉛筆で黒い点を書けば再現できそうなレベルだ。
これだけで催眠だなんて、バカバカしい。
「ほら、次は目を閉じて。BGMに集中して」
気がつくと、たしかにスマホから音楽が流れていた。
とても静かで安眠できそうな音楽だ。
「お姉ちゃん、眠くなってきたんだけど……」
「え、マジ!? やっぱりこのアプリは本物――」
(全然効能のない嘘っぱちなのに。この子、演技してる? M?)
「眠くない」
きっとたまたまだ。
たまたま眠くなっただけで、催眠とは関係ない。
「じゃあ、お姉ちゃんが手を叩くからね。そしたら目を開けられなくなるよ」
(これにノッてきたらこの子本物のMよ……)
「バッカじゃない。私それ嫌いなんだよね」
(これはきっと大丈夫……)
自分の体が自分で動かせないわけがない。
テレビを見ても酷いヤラセにしか思えず、沙菜はどこか不快になった。
眠気はたまたまタイミングが重なったが、目が開かないなんて状態はさすがにならないだろう。
「じゃあいくよ。3、2、1、ハイ!」
耳元で大きな音が鳴った。
今まで眠かった意識が戻され、世界が鮮明になる。
しかし体は眠ったように動かない。
目も開かない。
(待って待って! そんなことあるわけない!)
ここにきて沙菜は恐怖を感じた。
自分の体が自分の自由に動かせないことを知ったのだ。
もう何を信じればいいのか。
「どう、沙菜? かかった?」
(まさか、ね)
「うん! こ、怖くなってきたから、そろそろ解いてよ!」
(私だってかかりたいわけじゃないのに! 催眠って実在するんだ……)
「ガチ焦りじゃん。大丈夫、もう一回叩いたら楽になるから」
(え、今日はOKな日なの!? YSE、NO枕でYSEの日!?)
またも沙菜の耳元で音がした。
途端、重力が半減したかのように軽くなる。
目も自然と開いた。
(……怖かった)
姉が二度と手を叩かなければあのままだったかもしれない。
自分の自由は姉に握られている状態だったのだ。
もう絶対に催眠なんて経験しない。
そう誓った沙菜だが――。
「さて、前準備終わり」
凜の一言で絶望した。
「お姉ちゃん、前準備って――」
「今のは催眠のための準備。ここからが本番だけど?」
(もっとセンシティブなことをするための!)
「も、もういいでしょ! 本物だってわかったんだから……」
(そもそも本番ってこれ以上何をするのよ)
「言っておくけど、沙菜はまだ完全に催眠が解けてないからね。注意事項に『途中で催眠をやめる時はしっかりと催眠を解くこと』ってあったし」
(適当に後づけ設定重ねてるけど、ノッてくるかな)
「じゃあ解いてよ!」
(最初から無視しておけばよかった……。本番って何されちゃうの……)
「最後までやったら解いたげる。ね……?」
「はぁ!? 祐香さんが家に来た時、お姉ちゃんがクレイジーサイコレズだってことを黙ってあげたのに!」
「はい、スマホの画面見てくださーい」
凜が沙菜の眼前に長方形を押しつける。
沙菜は恐怖心もありながら、これ以上催眠を体験したくなかった。
「お姉ちゃん、ホントに! 恩を仇で返すつもり?」
「だから、最後までやったら解くってば。集中しないと中途半端に催眠かかっちゃうよ?」
「だーかーらー! もう催眠は嫌なの!」
もちろん、沙菜に伝えたほとんどの情報は凜が適当に考えたデマ。
集中しないと中途半端に催眠にかかる――なんてことも適当に言ったこと。
しかし、今日は適当に言ったことがなぜか実現する。
「3、2、1、ハイ! よし、これで意識を失うはず……」
(アプリ入れた時点で人が気絶するわけないって思ってたけど、この子は偽物の催眠にすらかかるしなぁ……)
偽物と本物の曖昧さをそれとなく考えていた凜。
しかし、催眠にかかりやすいのか演技しているのか、よくわからない妹は気絶なんてしなかった。
「……あれ? 沙菜、気絶してよ」
(催眠ごっこ飽きたのかな)
「気絶なんてできるわけ――」
沙菜の体がだらりと横たわる。
気絶したわけではない。
沙菜の意識ははっきりしていた。
だけど体は気絶したように動かない。
「お姉ちゃん、これなんの催眠!? すっごく怖いんですけど!」
「『操り人形催眠』だけど……。意識を失って、そのまま催眠をかけた人のいいなりに――」
「何よそれ! で、でも私、意識あるよ……」
――中途半端に催眠にかかる。
意識は失わないが、体は催眠をかけた人のいいなり。
それが今の沙菜の状態だった。
「お手、おすわり」
「ちょ、お姉ちゃん! もう終わりにしてよ!」
何も意識していないのに自然と体が動いてしまう。
何を言われても逆らえない。
さながら操り人形――。
しかし、このアプリは本物の催眠アプリじゃないはずだ。
「沙菜ったら、本当にドMね……。こんなのに頼らなくても素直になりなって」
凜は沙菜が姉に構ってもらいたくてかかったふりをしているとばかり考えている。
「はぁ!? 私がMってどういうことよ! 催眠かけたのはお姉ちゃんでしょ!」
「……あ、Mって面白そうだね。沙菜、ちょっとMになってよ」
「なっ!? ちょっと、変なこと命令しないで!」
自分の意思では口くらいしか動かせない沙菜。
その状態の妹を凜は叩いてみた。
「うぅん!」
動けないから、たとえ痛くても逃げられない。
否、逃げるどころか――。
「もっと、お姉ちゃん! もっと叩いて!」
(ちょっとー! 私の口からワケわからんこと言わすなー!)
催眠のせいでドMになっていた。
「さ、沙菜……。それはちょっと引く……」
「わ、私だって言いたくなかったよ! 催眠のせいだってば」
「ふーん、催眠ねぇ」
(この子がどこまで演技を貫くか試してみようかな)
いいなりになった妹。
はたしてどのような命令を下してくれようか。
「沙菜、脱いで」
「はぁ!? バカバカバカ、もう催眠解きなさいよ!」
そう懇願しつつも沙菜の体は衣服を脱ぎ捨てるのに夢中だ。
「え、全裸になろうとしてんの? 風邪引いちゃうでしょ」
「お姉ちゃんのせいじゃん!」
下着くらい着させてもよかったが、面白そうなのでやめた。
次の命令を考える。
命令をひとつ言うごとに変な高揚感があった。
「あんた、肌きれいだよねー」
「な、何よ」
「もっとよく見せてって」
見せろと命令されれば見られることへの抵抗を忘れてしまう。
むしろ体の一部を突き出したり、見てほしいと言わんばかりの魅惑的なポーズもしてしまった。
「あんたお尻きれいだねー。こりゃ触りたくなりますわ」
「うぁ! どこ触ってんのよ、変態!」
「よく言うよねー。もうわかってるって。あんたが催眠にかかったふりをしてることくらい」
真相を告げるが、沙菜は納得がいかない。
「ふりじゃなくて、本当に動かないの! じゃないとこんな恥ずかしい格好しないでしょ!」
「……お尻上げて」
四つん這いのようなポーズ。
じろじろといろいろな部分を見られ、沙菜の羞恥はピークに達した。
「お姉ちゃんのバカぁ! こんなことさせて! 終わったら絶対に殺すかんね!」
「あくまでも『言いなり』は演技じゃないって主張するんだねっ!」
バシンと沙菜の尻を叩いた。
高揚感がさらに増す。
無抵抗な人間の、しかもかわいい女の子の尻を叩いていると何かに目覚めそうだった。
これを祐香にできたら――。
よからぬ気持ちが湧き上がっては沈んでいく。
でも確かに、もう一人の自分はそこにいたのだった。
―――――――――
「あはっ……。はぅ……」
あれから後は、もう一人の自分に任せて妹をいじめ続けた。
目の前に妹が横たわって、ビクビクと体を震わせているのはそのせいだろう。
自分はただ、ちょっとした遊びのつもりだったのに。
今もなおゾクゾクと背中をなぞる気持ちが心地良い。
「沙菜、沙菜ー」
「ふぁ……? おね、ちゃん……」
「あは、かわいいねー。涙目で、こんなに震えちゃって」
背中をなぞられていた気持ちがスッと奥に入っていく。
妹の顔を見れば見るほど奥に、奥に――。
「もうちょっとだけ、お姉ちゃんと遊ぼっか」
これがクレイジーサイコレズ。
祐香には見せない顔。
いつか必ず、見せてあげたいなぁ……。
お読みいただきありがとうございました!
凜はやべーやつなんですね……。
次作は
これは『仕事』だから! 〜それでもあの子を支配したい〜
です。
ご期待ください!