勇者召喚されたおっさんに聖女様の嫁がくるまで
ネタを思いついたのですが、長編を1本書いていて余裕がないので短編にしてみました。
投稿時間が遅く寝ぼけて書いているところもあると思いますが、温かい目で読んでいただけると助かります。(^^;)
* 2019/10/07
誤記を修正しました。
誤記報告、ありがとうございました。
* 2019/10/11
誤記を修正しました。
併せて読み難いところを少し直しました。
5月×日
今日、いわゆるクラス転移で勇者召喚された。
王様の説明によると、国が強大な力を持った魔王に蹂躙されているので戦ってほしいとのことだった。
まさか、学校の先生から勇者にジョブチェンジするとは思わなかった。
平和な世界から来たので戦えないと言ったのだが、「転移者には漏れなくチート能力が付与されているので問題ないはずだ」と説明された。
こういう知識は生徒から没収した雑誌やライトノベルでなんとなくあったが、まさか我が身に起きようとは。
20年間、数学教師をやってきただけの俺にどうしろというのだろうか。
召喚したのは聖女様で、透き通るかのような色白の肌とエメラルドグリーンの瞳、顔も端整で白を基調とした絹のような光沢のあるドレスを身にまとっていた。もうすぐ22歳らしい。
服の盛り上がりから胸も大きいようにも見えたが、見えていない部分はいくらでも盛れるので本物かは分からない。
あと、一人一部屋貰ったが、どの部屋も俺のアパートの部屋よりもでかかった。
待遇は悪くないようだが、さて、どうしたものか・・・。
5月△日
今日はスキルチェックでみんなにステータスプレートが配られた。
教え子たちはみな、戦闘系や魔法系、職人系でチート過ぎる能力が身についていた。
俺はと言うと、何故か家事スキル全般がチートだった。
25年も一人暮らししていたせいだろうか・・・。
5月□日
明後日からダンジョンに潜ることになった。実習というやつだろう。
家事しか出来ないのに行ってどうするのだろうかと思って聞いたところ、ステータスの伸びを確認するので是非とも来てくれと言われた。
どうせ、家事スキルしかない俺はクズ扱いされて生徒たちにも罵られるようになるのだろう。
5月&日
今日は武器を選択した。
俺は家事スキルしかないが、厨房に行くと魔物解体用の1m以上もある巨大包丁が目に付いたので、それをもらうことになった。
俺だけ何故か、鍋やフライパンを鎧代わりに身に着けたほうが、本物の鎧を装備するよりもステータスが上がることが判明した。
生徒には別の意味で受けが良かった。
軍の総司令から冷ややかな目を向けられた。
たまたま通りかかった第三皇女からは、見苦しいと言われてしまった。
この恨み、いつかはらさでおくべきか。
5月☆日
今日からダンジョンに潜ったのだが、意外にも料理スキルがモンスターの解体で役に立った。
モンスターの肉を前にすると、色々なレシピが頭の中に浮かび上がってきたので、そのとおりに作ると滅茶苦茶美味しかった。
生徒たちにも好評だったので、チートの生徒たちに見放されずに済みそうだ。
5月%日
今日はダンジョン二日目。
最終決戦に備えて、聖女様も実習に加わった。
聖女様は、怪我をした人が出たら治癒魔法をかけたりするのが主な役割だそうだ。
俺も基本的には料理や解体など、後方支援なので色々と話すことが出来た。
人を召喚して、こいつらの人生設計はかなり狂ったろうなと言ったら、泣きながら平謝りしてきた。
どうも、自分たちのことで精一杯で、召喚される側のことは考えていなかったらしい。
「王様とかの偉い人に言われてやったのなら、貴女には罪はないでしょう」と言ってうっかり頭をなでたら、俺の胸で聖女様が大泣きしてしまった。
生徒から、「聖女様を泣かせるな」と散々抗議されてしまったが、聖女様が「先生殿は悪くない」と言ってフォローしてくれた。
一部の女生徒に「フラグを立てるな」と怒られたが、どういう意味だったのだろうか。
ちなみに今日もモンスター料理は好評で、晩御飯の後はみんな機嫌も良くなった。
一時は険悪な雰囲気になっていただけに、料理スキル様様だ。
あと、地味ではあるが、テントを片付ける時に掃除スキルが役に立った。
俺、本当に裏方だなぁ。
5月◯日
ダンジョン三日目が始まったが、本来いるはずのフロアマスターがいないということで騒然となった。
でも、しばらくして生徒の一人が雑魚と間違えてやっつけていたことが判明。
どれだけチートなのだろうか。
実習にならないので、結局予定していたよりも3階層も下のフロアーまで行ってしまった。
そうなると食料が気になるところだが、俺がモンスター料理を振る舞っているおかげで余裕があるのだそうだ。
俺にも50人規模の集団を予定よりも進軍させることのできる支援能力があるというのなら、これも一つのチートの形なのかもしれないと思った。
6月#日
今日は4日ぶりにダンジョンから外に出た。
生徒たちは、自分のチートの力を試せたということで殆どの生徒が充実感を味わったようだった。
しかし、一部の生徒は、思ったほど力が発揮できなかったと言ってがっかりしていた。
「俺も役に立たないと思っていたが、料理でみんなを支えることが出来た。
お前らもどうすれば自分が他のみんなを支えられるか、考えてみたらどうだろう。」
と提案したが、まだ若いのもあり、自分を中心に世界が回る事を望んでいるのだろう。
百人が百人、みな主人公になれる世界なんてありえないのに、下手にチートの能力を授かったせいで自分に期待してしまったのだろうと思うと不憫ではある。
6月@日
今日は、聖女様が相談にやってきた。
生徒の一人に付きまとわれているらしい。
ということは、俺の部屋に入ったのも見ていたに違いない。
やばい。
チートの能力を使われたら、俺なんて風前の灯火だ。
6月+日
今日は生徒から抗議を受けた。
聖女様が俺の部屋に入ったことを咎めてのことだ。
この生徒がストーカーから殺人者にジョブチェンジしないことを祈るのみだ。
6月!日
ついに、生徒たちの実戦投入の日取りが決まってしまった。
どうも、魔王軍との戦いに慣れさせようということが狙いらしい。
俺はまだ早いと言ったのだが、聞き入れてもらえなかった。
生徒に負傷者が出なければよいのだが・・・。
6月×日
ついに進軍開始となった。
魔王軍と遭遇するのは半月後の予定だ。
1日10Km進んで7日後に遭遇するなら、70Kmの道のりとなる。
俺も生徒たちもそんなに歩いたことがないのに、こんなに歩いた後にまともに戦えるのか心配だ。
6月△日
今日は、例の生徒が聖女様を押し倒そうとしているところを偶然見つけて注意した。
攻撃されたら一瞬でペチャンコだろうから、何もされずに済んでよかった。
チート共から恨みは買いたくなかったが、仕方なく生徒を全員集めて、どうすれば二度とこんなことが起きないか、話し合ってもらった。
一先ずその生徒は拘束することになったが、王国との関係がこじれると元の世界に帰れないかもしれないと説明すると、一部の生徒はこっちの世界に残るから帰れなくてもいいと言い出した。
王国に残るなら、なおのこと関係をこじらせない方が良いと説得したが、チートなのだから冷遇されることはないの一点張りだった。
なので、「言うことを聞かない勇者なら、魔王を倒すまではちやほやするだろうが、倒して用済みになった後は冷遇される可能性もあるぞ。過ぎたるチートは王国の邪魔になると考える者もいるだろう。」と言って聞かせた。
生徒の殆どは頷いていたが、分かっていない奴らが3〜4人いるようだったので今後が心配だ。
6月□日
昨日から聖女様が俺の側を離れようとしない。
どうも、生徒に襲われたのがよほど堪えたらしい。
俺は、「もう拘束してあるので大丈夫ですよ」と言ったのだが、男はみんな狼に見えているようだ。
俺も一応、男なのだが・・・。
6月&日
魔王軍が予定よりも早く進軍しているという知らせが入った。
早ければ明日、鉢合わせするかもしれないらしい。
それならここに陣を張って体力を温存してはどうかと提案したのだが、将軍にそのようなことは必要ないと一蹴されてしまった。
この将軍、軍のトップとして大丈夫なのだろうか・・・。
6月☆日
夕方、ついに魔王軍と接触した。
俺は後方支援なので日記を書く余裕もあるが、聖女様は次々と運び込まれてくる負傷者の治癒で疲れているようだった。連日の移動も疲労に拍車をかけているのかもしれない。
今撤退しても、ここまで砦になりそうな地形もなかった。
これ、詰んでいないだろうか。
6月%日
ついに聖女様が倒れてしまった。
医者によると、魔力欠乏症らしい。
俺は薬草入りの粥を作って聖女に食べさせたのだが、妙にしなだれかかって来る。
俺はよほど疲れているのだろうと思うことにして、頭をなで、「これ以上無理をして体調を崩されると、かえって戦線の維持が困難になります。頑張っているのはわかりますが、貴女が休むことで助かる命もあるのですよ。」と声をかけた。
すると聖女様は驚いたような目で私を見て、「貴男は私を消耗品のように扱わないのですね。」と言って顔を赤らめていた。
こんな時に不謹慎ではあるが、聖女様をもうひと押ししたらいけちゃいそうな気がしてきたのは、俺にも気の迷いがあるからなのかもしれない。
6月◯日
今日は、魔王軍の幹部がやってきて猛威を奮った。
前線が半壊している。
生徒たちは半分が大怪我を負い、今は聖女様が懸命に治療している。
俺は食事を作るくらいしか出来ないので、近くの野草も使って滋養や体力回復に役立つ素材をたっぷり使った料理を振る舞った。
聖女様は、今、手を離せないから口まで運んでほしいと言ったので、近くにいた女性に頼もうとしたのだが、俺に食べさせてほしいとご指名でお願いされた。
これ、勘違いじゃないよね?嬉しいが、生徒の手前、困る。
7月#日
どうしよう。
近くの森で食材を取っていたら、ハイオークと遭遇した。
俺は咄嗟に例の巨大包丁で料理スキルを使って薄切りにスライスしたのだが、倒したと言うか、生きたまま解体が出来てしてしまった。
先日からどんどん解体の速度が上がっているとは思っていたが、まさかこんなことが出来るとは。
戦えると判断されると最前線に送られるので、ここで起きたことは内緒にすることにした。
生徒に最前線で戦わせておいて、なんとなく気持ちが悪いが命あっての物種だ。
7月@日
まずい。
私は魔王軍の幹部が来たとしか聞かされていなかったが、どうやら昨日料理したハイオークは魔王軍の幹部だったらしい。
そう言えば、ハイオークとは言え、かなり立派な鎧兜を身に着けていた気がする。
これは絶対にバレてはいけない。
バレたら最前線送りだ。
やばい。
7月+日
聖女様がまた倒れた。
連戦で疲労が溜まっているのだろう。
俺は、「また無理をしたのですね。駄目ですよ?ちゃんと自分の体も大切にしないと。」と言ってお粥を食べさせてあげた。
女生徒から「またそんなにいちゃついて、不謹慎よ。」と言われた。
聖女様が「申し訳ありません。私ばかり甘えてしまって」と言って罰の悪そうな顔をしたら、女生徒が慌てて、「倒れるまで頑張っているのに、言い過ぎました。」と言って取り繕いつつ、俺を睨みつけていた。
つい女生徒に片手で拝みながら、「すまん。」と謝ったが、呆れたような顔をしていたので、後日吊るし上げられそうな気がしてならない。
7月!日
そのまま元の予定地まで進軍させることになった。
昨日も聖女様が倒れたと言うのに、砦を築いて守ろうという気はないのだろうか。
補給とかも心配だ。
近くの森で見つけた大きな鳥の肉は、そのままでは固くて食べられたものではなかったが、圧力鍋で香草と一緒に柔らかく煮込んたら美味しくなった。
生徒たちにも好評だった。
7月×日
森でクミン、コリアンダー、レッドペッパー、黄ウコン、胡椒に似た味の食材を発見した。
なんちゃってカレーにした。
米はないが、小麦粉を練ってかまどに貼り付けて適当にナンっぽいのも作ってみた。
どちらも、生徒たちには大絶賛だった。
聖女様をはじめ、一般の騎士達の胃袋もガッチリ掴んでしまったようだ。
カレー、恐るべし。
7月△日
カレーの匂いで他の魔王軍の幹部がやってきてしまった。
チートの連中は前線で戦っているので、媚を売ることにした。
食欲をそそる香りだと言ってきたので、二日目なんちゃってカレーをご馳走し、お土産に持たせ帰ってもらった。
普通に戦ったら、只では済まなかっただろうから、我ながらいい仕事をしたと思ったのだが、将軍に毒をもるなりしてなんで倒さなかったのかとこっぴどく怒られた。
7月□日
魔王軍から停戦の申し入れがあったらしい。
なんでも、幹部が魔王になんちゃってカレーを献上したところ、魔王はそれをいたく気に入ったのだそうだ。魔王はなんとか常時食べられるように出来ないかと考えた挙句に、停戦と引き換えになんちゃってカレーのレシピをもらえないか交渉することにしたらしい。
前代未聞の事態に、王国軍も魔王軍もどう対応してよいか分からず、困っているようだ。
7月&日
停戦合意を受け入れることが決まったらしい。
王国というのは王様の気持ち一つで決められるので、民主主義に比べるとこういう判断は迅速だ。
一先ず、レシピを書いた紙を将軍に渡し、俺達は城に帰ることになった。
帰り道、聖女様が私の隣をずっと歩いていた。
これ、抱き寄せてもよいのだろうか・・・。
あ、生徒の目があるから駄目か。
7月☆日
最近、聖女様が近い。
今朝、目を明けると聖女様と目が合った。
俺は聖女様に、「そんなに近くで見つめられたら、照れてしまいます。お嫁にしちゃいますよ?」と冗談で言ったら、「喜んで!」と言われてしまった。
俺は冗談だろうと思い、「では、お城に戻ったら早速王様にご報告しましょう。」と言ったのだが、聖女様は本気だったらしく、「いえ、これから伝書鳩を使います。」と言って、文を書き始め、本当に鳩に結んで飛ばしてしまった。
これでは、生徒に示しがつかない。
どうしようか・・・。
7月%日
聖女様が俺と婚約したと嬉しそうに生徒たちに告げて回っていた。
物凄く嬉しそうだ。
おかげで、俺は一部の女生徒を除き、生徒たちから白い目で見られてしまった。
その一部の女生徒からは、「やっと聖女様の気持ちを受け入れたのね。お幸せにね。」と言って、満面の笑みで祝福されたのだが。
生徒よりも俺のほうがやらかしてないか?
7月◯日
行きは1日10Kmくらいだったが、帰りは哨戒も不要なので、進軍の時よりも速い速度で帰っていた。
おそらく、明日には王都に着くのではないだろうか。
王都に帰った後、そう言えば俺は無職であることに気がついた。
使えるのは家事スキル。
さて困った。
聖女様に相談したら、専業主夫になることになった。
8月#日
王都に戻ったのだが、私は王様、王妃様、教皇はじめいろいろな人に白い目で見られた。
会う人みなに、要約すれば「聖女様が決めたことだから仕方がないが図に乗るなよ」という趣旨でねちねちと説教された。
理不尽だ。
まぁ、なんちゃってカレーで停戦することになった実績のおかげか、結婚するなという人はいなかったが。
確かに、最初は冗談で言ったことが始まりだが、本人がその気なのだから問題はないはずだ。
8月@日
聖女様と俺の結婚式が執り行われた。
国中の貴族が集まり、他国からも来賓がやってきた。
俺は右往左往していたが、このあたりは全部聖女様がやってくれる。
こんなに肩身の狭い結婚式を上げるのは世界広しと言えども俺くらいだろう。
ちなみに、宗教上の理由で、聖女様が正式に次の聖女様を任命するまでは夜のアレはお預けなのだそうだ。
8月+日
女生徒たちから、昨夜はどうだったかと散々聞かれた。
いくら、何もなかったと言っても信じてもらえない。
俺としても夜のアレがなかったのは残念だが、宗教上の理由ではしかたがない。無理やりとかもまずいし。
多分、聖女様は良くても、周りが怖い。
はやく聖女様の引き継ぎというのが終わってほしいものだ。
8月!日
突然、帰還の日程が明日に決まった。
聖女様に残ってほしいと泣きながら訴えられた。
俺は「残る!」と迷わずに言ったら喜ばれた。
一人でも生徒が残るとなれば、俺が責任の所在を問われて吊るし上げられるのは目に見えている。
既に、何人かはこの世界に残ると宣言していた。
だったら、迷う理由はどこにもない。
こんな美人の新妻がいて、不満などあるはずもない。(夜を除く)
8月×日
今日、俺の嫁は聖女様としての最後の仕事らしい。
帰還の魔法陣に生徒たちを入れ、最後の挨拶を済ませた。
俺の嫁が祝詞を読み上げ、魔法陣が発動し、生徒たちは帰還した。
こちらには3人ほど残ったが、2人は家庭に問題があった生徒で、残りの一人はこっちの世界の人と恋仲になったからだ。
まぁ、残るべくして残ったと言うべきか。
例によって俺の嫁は魔力欠乏症になって倒れたので、介抱した。
新しい聖女を任命し、無事、役割を終えた。
今後は大神官として教会を率いる立場となるらしい。
8月△日
ようやく、夫婦らしい生活を送ることが出来るようになった。
他の夫婦と違うところは、妻が働きに出て、俺が家事全般をやっているところだろうか。
魔王軍も引き上げたが、そのうち代替わりしてまた戦争になるのかもしれない。
だが、今は束の間の幸せを堪能しようと思う。
終わり。
ちなみに、思いついたネタは、
・家事スキルで魔王を屈服させる
・聖女様、おっさんに恋をする
・日記形式であらすじだけ列挙して誤魔化そう
というものでした。
雑ですみません。(--;)