今に至る前日譚
時は三十年ほど遡る。
その日、
二十を超える国が犇めく大陸、「ディスペイン」で、
ある戦争が起こった。
後に子供たちに伝えられるこの戦いは
誰もが予想もつかない結果に終わる。
大陸内で群を抜いて軍事力を誇った五つの大国。
中央のイグニオ帝国。
北のセムジア連邦。
南のパライゾ公国。
西のストラーシャ教国。
東のスリレン国。
その内、東のスリレン国が
齢二十にも満たぬ若き小国の君主に打ち取られたという話し。
五か国の中で最も弱小であったスリレン国ではあったが、
まさか名も上がらぬ小国に負けるなど有り得ない。
その事実は大陸中を巡り、ことなくして名が上がる。
「アガルタ王国」
一夜のうちに大国へと成りあがったアガルタ王国を、
早めにつぶしておこうと考えた北のセムジア連邦は返り討ちにされ、
崩壊寸前まで追い込まれた。
アガルタ王国の激進はそれだけに収まらず、
数年で近隣諸国を飲み込み、
十年で帝国と名ずくまでに成長した。
そして現在、
各大国は不可侵を貫き、均衡を保っている。
王は今もなおその若さと秀才を保ち健在でいる。
その鋭き刃がいつ立つかわからぬまま、
今に至るのだ――
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