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君の瞳に  作者: 志崎誠
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1章

 周の通っている美しが丘高校は私立の共学校だ。

 高校では珍しく制服が学ランとセーラー服なのもあり、近隣の人たちには学校名がすぐに分かり、通称「美高」として知られている。この略称は生徒たちや学校側も使用している。


 そんな美高の朝は、全校集会から始まった。内容はもちろん佐藤についてだろう。


 周のクラスが講堂に着いた時にはほとんどの生徒が集まっていた。いつも集会が始まる前は生徒たちの雑談で多少のざわめきが聞こえるのだが、今日はいつもの5倍くらいだった。その理由としていつもは注意しない教師たちが今は生徒を静かにさせるために注意をしている。ざわめきというより、騒音のほうが近いかもしれない。


 周は自分の席に腰を掛けた。席順は出席番号順だ。周の苗字は篠原なので、藤沢とは席が離れている。

 席に向かう直前、藤沢は周に途中で気分が悪くなったら無理をせず担任を呼び保健室に行けと、小声でひっそりと周に言った。周はわかった。ありがとうと返事をした。


 藤沢とは幼稚園からの腐れ縁というものであり藤沢は昔から周のことを気にかけてくれた。普段は物静かだが心優しい性格であり、周が葉山に恋愛感情を抱いていることを打ち明けたら、誰よりも応援してくれた。


 藤沢の優しさを噛みしめていると周より少し遠くにある空席を見つけた。佐藤の席だ。


 佐藤が見つかったという裏庭や、飛び降りしたという屋上は立ち入り禁止のテープが貼られていた。


 周は佐藤が今どうなっているのか気になった。ニュースでは重体と言っていた。いったい、どのくらいの重体なのだろうか。屋上から地上の距離はかなりある。想像はしたくないが、かなりの大怪我をしているだろう。


 周はニュースで意識不明と言っていたことも思い出した。ということはどこかの病院に入院し、寝ているのだろう。 


 佐藤は自分がもう死んだと思っているのだろうか。周はふとそんなことを考えていた。目が覚めて、自分がまだ生きていることがわかったら、どんな気持ちになるのだろうか。また自殺をして、今度こそ死んでしまうのだろうか。


 「・・・っ・・・」


 周は胸が苦しくなり、両手で制服のズボンをぐっと強く握った。佐藤は何故、自殺をしたのだろうか。そして今彼女の身に何が起こっているのだろうか。周の疑問はそれだった。きっと全生徒が思っているのだろう。彼女のことが好きなのに、彼女のことを何も知らない自分の落ち度のなさに周は情けなくなった。


 その時、壇上から校長が現れた。生徒たちがたちまち静かになった。


 今はこの集会に集中しよう、何かわかるかもしれない。周がそう思ったと同時に全校集会は始まりの鐘が鳴ったのだった。


 


あけましておめでとうございます。お久しぶりです、志崎誠です。更新が遅くなってしまいすみませんでした。そして、ブックマーク2件ありがとうございます。励みになります。

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