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君の瞳に  作者: 志崎誠
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1章

次の日の朝、周の足取りは重かった。昨日のことを引きずっていたからだ。


朝食を食べ終え周は自分の部屋で制服を着た。周の学校の制服は、高校生にしては珍しく学ランだ。しかし、今は夏なのでカッターシャツだけを着る。


「あっくんー!(りょう)君もう着てるよ!」


遼君とは藤沢のことだ。周は毎朝藤沢と登校するのが日課になっており、待ち合わせの場所は学校から近い周の家になっていた。


周は藤沢を待たせるのは悪いので急いで制服を着終わり、1階に降りて下駄箱でローファーを履いた。ドアを開けようとすると二階から妹の(はな)が降りて来た。


「おはよう、華」


周は華に声をかえた。華はぼんやりとしたまま目を擦っていて、眠そうな声でもう行くの?と周に聞いた。


「うん、華も遅刻しちゃ駄目だよ」


華とは7つ離れている。歳が少し離れてるからか、周は華を可愛がっていた。華は分かってるよと少しムッとした顔をした後、いってらっしゃいと周に手を振った。


「いってきます」


同じように手を振り返した。周がドアを開けると家の門塀に藤沢が寄りかかっていた。


「おはよう。ごめん、待たせたよな」


「はよ。そんなに待ってないから大丈夫」


藤沢の手にはスマートフォンを持っていた。どうやら、それで時間潰しをしてたらしい。藤沢がスマートフォンをスクールバッグに入れながら「それよりさ…」と周に話しかけた。


「何?」


「大丈夫?行ける?」


藤沢は心配そうな顔をしていた。昨日の電話でもそうだったが、周のことを気にかけていてくれた。


「大丈夫だよ。それに、遼が昨日教えてくれたから余裕ができたよ」


もしも、今日佐藤のことを知ったら周は学校に行けなかっただろう。


「そっか。俺もグループメールで初めて知ったんだ」


「そうなんだ。とゆうか、なんで分かったんだろうな。ニュースでは誰がとかなにも言ってなかったのに」


実際、昨日のニュースでは私立高校の女子生徒がとしか言っていなかった。


「保護者メールが早めに来たヤツらが知らせてたよ。そしたら大騒ぎ」


周の学校では緊急連絡の際に保護者が学校指定のシステムにメアドを設定するとメールが受信される仕組みになっている。しかし、受信される時間は個人差らしく少し先に受信される場合もある。


「へぇー。そうゆうこと」


「とゆうか、お前もメールアプリ入れなよ。クラスのグループもあるしさ。便利だよ?」


「いやぁ…いいよ。まだスマートフォンにすら慣れてないし」


「そういやまだ2ヶ月だっけ?」


周は少し前までガラゲーだった。それでもことが足りてたので不便は感じなかったが、藤沢のスマートフォンへの勧誘が凄まじかったので誕生日に機種変更をしたのだ。しかし、ガラゲーとは違うアプリやらSNSやらには未だについて行けずにいる。


「まぁ、入れる時は言ってよ。教えるからさ」


「うん、頼むよ」


周と藤沢はそんな些細な会話をしながら学校に向かって行った。心なしか、周の足取りは少し軽くなった。

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