表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君の瞳に  作者: 志崎誠
2/19

1章

佐藤の自殺を知ったのは朝のニュースだった。


その時周は朝食を食べていた。ぼんやりとした意識のまま、トーストをかじっているとニュースは放送された。


「今日午前6時前、私立高校に通う女子生徒が学校の裏庭で倒れていたのが見つかり病院で運ばれました」


朝から物騒なニュースだな、と周は他人事のようにニュースを見ていた。テレビに映っている女性のアナウンサーが淡々と説明をしている。


「警察は屋上のドアが壊されていたことから飛び降り自殺した可能性が高いとみています。なお、女子生徒は意識不明の重体とのことです」


その時だった。机の上に置いてあるスマートフォンがメッセージの受信の音を鳴らした。スマートフォンを見ると相手はいつも一緒にいる友達の藤沢からだった。なんだろうと思いながら周はメッセージを開いた。


《今テレビで自殺のニュースやってるんだけど見てる?》


《見てるよ》


送られた内容に首を傾げつつ、周は返信した。そしてものの数分でまた返信が来た。


《自殺したの、佐藤らしい》


たった1行の文章だが周のぼんやりとした意識が一気に覚まさせた。そして周は藤沢に急いで電話した。2コール目で藤沢は出た。


「もしも」


「それ本当?」


藤沢の言葉を遮るように周はいった。


「本当だよ、クラスのグループメールでも大騒ぎになってる」


藤沢は少しの沈黙の後、そういった。周は何が何だか分からなかった。


「なんで…」


「分からない。でも、意識不明だけど生きてるらしい」


それを聞いて先ほどのニュースを思い出した。そうだ、まだ生きてる。しかし周の心は落ち着かなかった。どうして佐藤さんが、昨日は何もなかったのに。その時周はハッと昨日のことが頭に浮かんだ。


『ううん、大丈夫だよ』


あの言葉はやはり嘘だったのだ。あの時自分がもっと気づいていたら、強引でも何があったか聞いていたら、周は昨日の自分の行動に後悔していた。


「大丈夫じゃ…ないよな」


藤沢は尋ねるように言った。周が佐藤に好意を持っていたのを知っていたからだ。そしてそれは藤沢しか知らない。ある意味、2人だけの秘密のようなものだった。


「……」


周は何も言えず黙っていた。


「今日休みだってさ。だから少しでも気持ちを落ち着かせた方がいいよ」


まるで慰めるかのような口調だった。藤沢は優しい性格であり、こんな時も優しかった。


「うん、そうする」


じゃあといい周は電話を切った。


「あっくん!今日学校お休みだって!」

母親の声が聞こえたのはその後だった。




その日、周はベットで寝ていた。今日のことが夢であってほしいと願うかのように。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ