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黄
その頃、賭場の裏にある屋敷では女が男を叱責していた。
「ダメじゃないの、あんな若造、1人に負けて帰ってくるなんて」
「すいません。思いのほか強い奴だったんで」
「でアイツは今、何処にいるの?」
「どうやら武館にいるみたいです」
「李の所か。ちょっと厄介だね」
「今日は遅いんで明日行って身柄を渡して貰います」
「わかったわ。私も行って話を付けよう」女はそう言うと部屋の奥に入って行った。
「どうした」部屋にキセルをふかしながら男が入って来た。
「黄さん。賭場荒しの若造を捕まえ損なったんで姉貴に怒られてました」
「フン。失態だな」黄が言った。
「明日、姉貴と武館に行ってきます」
「武館?李英風の所か?」
「はい」
「厄介な奴の所に逃げ込んだなソイツ」
「はい。すいません」
「李は我々にとって目の上のたんこぶだ。お前達が行ってダメなら俺が行く。わかった。もう寝ろ。」
「はい。失礼します」
黄はキセルをふかしながら「李か。いずれ対決しなければならんな」と呟いた。