8.腕輪
しばらく歩むと、一軒のオシャレな店にアルディは入っていく。私も入るとそこは、小洒落たレストランだった。
「わー……オシャレ……意外だわ……」
とアルディを見る。
「…………。ほら、メニューだ」
とメニューを渡してくれた。
メニューを見つめると、やっぱりこの世界の文字が読めた。
メニューは私の知らない料理が多かったが、なんと知っているメニューも結構あった。それに、知らないメニューも説明をよく見てみると多分知っている料理の様だった。不思議である。
「あっ!オムライスがある……これにしようっと!」
「決まった様だな」
とアルディは店員さんを呼んで、私の分も注文してくれた。
「……それにしても……お前は……やっぱりこちらの世界の文字が読めるんだな」
とこちらを見つめてくるアルディ。
「ん?……読めたらダメなの?」
……読めるとマズイのか?
「いや、教える手間が省けて良い。だが不思議でな。大概の異世界人は文字や言語に苦労するのだがな……」
と……マジかよ。
「へ?言語も?」
「そうだ。通じた時は驚いた」
「へー……」
そんなの気付かなかった。
「何故分かるんだ?」
「知らない……だってアルディが話してるのとか、私の国の言語で聞こえるよ?……文字は……何か知らないけど読めるし」
「ふむ…………」
と考え込んでしまった。
「…………」
私も黙り込んでしまう。
しばらく沈黙が続いた。
「……歪が何らかの作用をしたのかもな……それともお前に備わっていた魔力の作用か……?」
「ふーん……?」
とさっぱりだ。
「とにかく通じているなら良い」
「だよねー」
とか言ってたら、店員さんが料理とお水を運んできた。私の前に美味しそうなデミグラスソースの掛かったオムライスが置かれる。アルディはどうやらドリアの様だ。
「いただきまーす」
と食べ始める。オムライスはとてもフワフワで美味しかった。スプーンを持った手が進む進む。
しばらくすると、ぺろりとオムライスをたいらげてしまった。アルディも食べ終えていた様だ。
「ごちそうさまでした。美味しかったー」
「気に入ったか?」
「うん!すっごく!」
と笑顔になる。
「そうか……また来るか?」
「うん!うん!」
と首をブンブン振って頷く。
「分かった、また来よう」
と笑顔を見せてくれた。
「約束だからねー」
「ああ」
それからアルディがお会計をしてくれて、レストランを後にして、ギルドへ戻る。
自室の前でアルディと別れようとしたら、アルディは自室へ入ってきた。
「ん?」
とアルディを見る。
「……これを……」
とアルディは箱を私へ差し出す。
「……貰っていいの?」
「ああ……」
と頷く。
箱をアルディから受け取り、開ける。
中にはとても繊細な細工のされた綺麗な腕輪が入っていて、私の目と同じ色のアメジストの様な宝石が嵌められていた。
「……すっごく綺麗だねー」
と魅入る。
「……お前の為にあつらえた……」
と照れくさそうだ。
「あつらえた?」
と首を傾げる。
「ああ……今日、別行動したのはこれの為だ」
と下を向く。
「なるほどー」
と呑気な私。
「怒らないのか?これの為にお前から離れたのに……」
とチラリとこちらを見る。
「何で?……ああなっちゃったのは……アルディの言いつけを聞かずに、迂闊に付いてっちゃった私の責任だし……」
と今度はこちらが俯く番だ。
「……そうか。……それもそうだな。……お前はまったく……」
とお説教モードに入っちゃったっぽい……。気を逸らさないと!
「ところでアルディ。これ何の意味があるの?」
と腕輪を見せる。
「……ん?……意味か……お守りだ。必ず身に付けていろ」
と照れくさそうだ。
「お守り?」
「そうだ。守護の魔術を掛けた。活用しろ」
「つまり、アルディお手製の魔道具?」
「そうなるな」
「ありがとう。アルディ!」
とついつい笑顔になってしまう。
「ああ、ちなみに守護の魔術とは……とにかく外敵から守ってくれる魔術だ。お前の魔力を糧に常時発動していて、ある程度の攻撃や魔法なら防いでくれる。意識すれば接近した敵を吹き飛ばすぐらいは発動出来るだろう」
「……何か凄い。……私の魔力を糧?……発動?」
と首を傾げる。何が何だか。
「大概の魔術が掛かった魔道具……マジックアイテムは魔力の供給がいる。そのウエストポーチも同様だ。……発動はただ意識すればいい、敵を吹き飛ばしたいと」
と説明してくれた。
「へー……。便利だけど代償もあったんだ……これ……。うん、意識すれば良いんだね。分かったよ!」
とウエストポーチを見つめ、アルディを見つめた。
「……だから、マジックアイテムの使えない者も多い」
「そうなんだ……意外……」
「だから貴重品扱いなんだ」
「ふむふむ」
「とにかく、これからはそれを付けていろ」
と私の手の中にある腕輪を指差す。
「了解ー」
と腕輪を左腕に嵌めた。アルディがニヤリと笑った気がする。
「アマネ……腕輪……外せるか?」
と変な事を聞いてくる。何だ?
「外せ……ないっ!」
そう、外そうとしたが外れない……呪いのアイテムかこれ!?ニヤリと笑ったのはこれだな!
「ふむ。成功の様だな」
と満足気だ。……お前なぁ……。
「……何これ呪い?」
「いや、逆だ。守護だ。常時守護する為に外れなくなっている。お前の事だ……うっかり付け忘れられたら困るからな」
と溜め息をつく。
「……そんなにうっかりしてないやい」
とアルディを睨む。
「どうだろうな……まあ、外れないならそれで良い。おやすみ」
と満足気に部屋から出ていった。
「……おやすみ……」
とアルディが出た後、鍵を掛ける。
「ふーー……疲れた……」
とベッドに倒れ込む。が、今日買った物を思い出した。
「ちょっと広げてみるか……」
とウエストポーチから今日買った物を広げていく。……部屋が埋まった。……しまおう。
「はぁー……可愛い……」
と荷物をしまいながら、うっとりとワンピースを眺める。
「早く着たいけど……その前にお風呂だね」
と匂いをクンクンと嗅いだ。
それからお風呂に入って、部屋着のワンピースへと着替えた。可愛くて顔がにやける。ぐへへ。
ちなみにギルドへの帰り道で、アルディから渡されていた金貨の残りを返そうとしたら……持っておけ、また必要な物が出たらいるだろ?……と言われたので、ありがたく頂戴した。ありがとねアルディ……。
「……今日も色々あったなぁ……。いやぁ……あれはヤバかった。……本当アルディに感謝だよ……それにこれも……」
とベッドに寝っ転がり回想しながら、左腕に嵌まった腕輪を見つめる。腕輪はキラキラと輝いている。
そうしているうちにいつの間にか眠ってしまった。