6.ステップアップ
草原に着いてからは、そここそ悪戦苦闘しながらもデボレボアを数体狩ることが出来た。
だが、まだ戦闘に慣れず、すっ転んだり、吹っ飛ばされたりして今日も泥まみれだ。
「ふー。……これだけ狩っても、金貨にはまだまだか……」
と少し凹む。
「……初心者にしては、まあ、良くやれている」
と少し考えながら言ってくれた。励ましのつもりだろうか?
「……本当?」
「ああ、デボレボアに殺られる初心者もいるからな……そもそも一般人は魔物に近づかない。すぐに殺られるからな」
とサラリと言おった。なんてこったい。
「……デボレボアって結構やばいんじゃないの!!」
と憤慨する。酷い、死んでいたらどーしてくれる。呪うぞ。
「だから、良くやれている……と言っている」
とこちらの怒りを意にも止めない……くっそ。
「……そーですか……」
とため息が漏れた。
と騒いでいると、狼の様な遠吠えが聞こえた。
「デボレウルフか……近いな……丁度いい、狩ってみろ。ステップアップだ」
とこちらを見つけ狙いを定めたのか、猛スピードでやって来る狼の様な魔物……デボレウルフを指差した。
「二日目にして、ステップアップとか酷すぎ!」
と言いつつも、逃れる事は出来ないので剣を構える。アルディは見守る為に後ろへ下がってしまった。アルディを襲えよデボレウルフ。
そしてアルディには目もくれずデボレウルフはこちらへ突っ込んでくる。……ちくしょう、弱い方を狙ってきたな。
私を食い殺そうと突っ込んできたデボレウルフの牙を剣で食い止め、弾き切りつける。
「浅いか……」
そのまま攻撃の手は休めない。そして最後の一閃がデボレウルフを切り裂いた。
デボレウルフは最後の咆哮を上げ、絶命した。
「や、やった!」
と剣から血を払いつつ、ため息をつく。やれた……やれたのだ。
「それなりに良くやった」
とアルディがこちらへ来た。
「わーい。良かったー」
と言いつつ、デボレウルフへと手をかざし、フィーネ・ツェアレーゲンと詠唱して素材にする。
「意外と筋は良いのかもな」
とアルディは意外な事を言ってくれた。……マジか。
「……ほ、本当!?」
と素材を麻袋へ詰める手が止まる。
「ああ、昨日のへっぴり腰からすぐにここまでやれる様になるとは、思わなかった」
「あ、あれは!いきなり戦わされたからでしょ!?」
「そう言えばそうだったな。……あれは……悪かった……すまん」
と殊勝な態度だ。珍しい。
「わ、分かりゃいいのよ」
とアルディの態度にたじろいでしまった。
「ともかく、これでお前は一般人ではなくなった。ビシバシ行くぞ」
と切り替えおった……。うへぇ。
それからまた、しばらくデボレボアとデボレウルフを狩った。
ちょっとは慣れてきたかな?なんて。
「そろそろ昼食にするか」
と麻袋へ素材を詰めている私に声を掛けてきた。
「うん!……もうお腹ぺこぺこー」
「よし、この辺でいいか」
とアルディは近くの岩へ腰を下ろした。
私もその近くの手頃な岩へ腰を下ろす。
「ほら、これだ」
と包を差し出してきた。お弁当だろう。
「ありがと」
とそれを受け取る。
包を開けると、中にはサンドウィッチが入っていた。具もだいたい普通な様に見える。
「美味しそう!いただきまーす」
とサンドウィッチを食べ始める。素朴な味で美味しい。アルディも食べ始めた様だ。
しばらくしてごちそうさま、と手を合わせる。アルディも食べ終わった様だ。
喉か乾いたなぁ……と思っているとアルディがどこからか飲み物の入ったコップを出して、差し出してくれた。意外と優しい。
「ありがと」
と優しさが嬉しくて、はにかんでしまった。
「ああ……これからはお前用の水筒もいるな……明日は必需品の買出しに行くか」
とありがたい申し出だ。
「う、うん……でも私……お金……」
と言葉に詰まる。まだ今まで狩った分では全然足りないだろう。
「気にするな。金なら余っている。……気にするなら出世払いしてくれれば良い」
と更にありがたい申し出だ。
「うん!頑張って出世するっ!」
アルディはそれに黙って微笑んでくれた。くーっ。イケメン。美形に耐性が無いからドキドキしてまう。
それからそのまま草原にて、デボレボアとデボレウルフを狩り続けた。
少しずつ順調に慣れてきて手際も良くはなってきた……と思う。だって、数撃で倒せるようになってきたんだよ?……たまに一撃でも倒せるし……。
RPGで言えば結構レベルアップしていると思う。思いたい。
そうして夕方が来た。
「そろそろ帰るか」
「うん!これ詰めたらねー」
と詰めている途中のデボレウルフの素材をを急いで詰める。
そして、アルディの魔術でギルドへと帰り、食堂で夕食をとった。