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29.贈り物


 マーケットから直行してアルディの部屋へ向かう。……居るかな?


 コンコンと控え目にノックする。


「アルディ。私だよー」


「……ん?アマネか……」

 とドアを開けて迎え入れてくれた。


 アルディに勧められてアルディの横へ座る。……相変わらず殺風景な部屋だなぁ。


 ……これっていつでも引越し出来る様になのかな……と何だかモヤモヤする。……前に感じた儚さはこれだな……。


「アマネ?どうした?」

 と考え込んでしまった私を心配そうに見てくる。


「あっ!ごめんごめん……そうだ、これをアルディに渡したくて来たんだよー。私の気持ちね!」

 と先程マーケットで買った品の包ををアルディへ差し出す。


「……貰っていいのか?」


「もちろん!」

 とニコッとすると、アルディはゆっくり受け取ってくれた。


「ありがとう。……開けてもいいか?」


「うん、ぜひ開けてみてー」


「ああ」

 と丁寧に包を剥がして、中の箱を開けた。


 そこには繊細に細工された筒状の物が入っていた。


「これは?」

 とアルディはまじまじとそれを見る。


「えっとね、これは髪留めなんだよー。ほらアルディの超長い三つ編みっていつも麻紐とかでくくってるだけでしょ?……だからその部分を綺麗に留める為の髪留めなんだけど……どうかな??」

 とちょっぴり不安だ。


「……俺には勿体無いぐらい綺麗だな……ありがとう。気に入った、これから使わせてもらう」

 とアルディは長い三つ編みの先にその髪留めをつけた。


「良かったー……。うん、似合ってるよアルディー」

 と微笑む。


「そうか……」

 と照れくさそうにアルディも微笑んだ。


「えへへー。マーケットでね丁度見つけたんだー。アルディに日頃のお礼がしたくてねー」


「そうか……ありがとうアマネ」


「えへへー」


「……良ければここでお茶にしないか?……おやつはすぐに用意する」


「良いよー」

 と茶器をウエストポーチから出していると、アルディは移動陣でどこかへ行ってしまった。……用意するって言ってたからどこかの街へ買いに行ったのだろう。ありがとねー。


 数分してアルディは何か箱を抱えて帰って来た。何だろうなー今日のおやつー。


 まあ、とりあえずお疲れさんとアルディへ紅茶を淹れる。


「これを……」

 とアルディは箱をテーブルへ置いた。開けて良いようだ。……開けると綺麗な苺のホールケーキだった。


「おお!美味しそうー」

 とキラキラとケーキを見つめる。


 そしたらアルディが丁寧に切り分けてくれた。


「ほら、さっそく食べてみろ。王都の有名店だそうだ」

 と何か本を持っている。


「はーい、いただきまーす」

 とモグモグ食べる。……美味しくてほっぺが落ちそう!


「ふむ、美味しいな。紅茶にもよく合う」

 とアルディもムシャムシャ食べている。


「そういえばアルディの横にあるその本なーに?」


「……ん?これか…グロワールのスイーツ名店ガイドブックだ」

 と見せてくれた。


 ふむふむ。よく見ると、今まで食べてきたスイーツの数々が載っている。


「いつもこれ見て買ってきてくれてたの?」


「ああ……スイーツには疎いんでな」

 と照れくさそうだ。


「んふふ……ありがとね!アルディ!」


「気にするな」

 とそっぽを向く。いつもの照れ隠しだな。




 その後おしゃべりしつつ、二人でホールケーキ丸々平らげてしまった。美味しかったのだ仕方ない。……まあ、夕食は無理だな。……アルディも無理な様だ。


 食後ものんびりお茶をしておしゃべりしてると随分夜になってしまった。


「んじゃあ、そろそろ部屋に戻るねー」

 とアルディに手を振ってアルディの部屋を後にする。


 ドア越しに、おやすみ、と聞こえた。



 それからアルディが一人、……俺のせいでこの世界へ来てしまって、こんな生活になっているのに……ありがとうか……アマネ……俺はっ……………………。と呟いたのを私は知らなかった。

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