22.私が付いてる
魔術の光が消えるとそこは長閑な草原だった。遠くに街が見える。結構大きいなぁ。それに何か綺麗そうだぞ?
「……あれがシャンレイクだ」
「へー……でも何で、移動陣で街に直接移動しなかったの?」
と薄々は察しているが聞いてみた。
「……この世界では移動術は珍しいからな……今回はまだ街にも慣れていない。だからしばらく人目を避ける」
との事らしい。やっぱり珍しいのかぁ。
「んじゃあ、後はあの街まで歩いて行けばいいんだね?」
「そうなるな……すまんな」
と覇気がない。……やっぱりショックだったんだなぁ。
「いや、歩くのは別に大丈夫だよ。草原駆けずり回って慣れてるし」
と元気さをアピールしてみる。
「そうか、では行くか」
とゆっくり歩いてくれる。どうやら私の歩幅に合わせてくれている様だ。……そろそろ槍でも降るか?
それから一時間ぐらいたわいもない会話をしながらシャンレイクに向けて歩いた。アルディの覇気はまだ戻らない……。
一応魔物が出たらアルディが即座に魔術で倒してくれた。私の出番は無かった。
「着いたな……」
「そうだねぇー」
と街を見る。
シャンレイクはその名の通り、湖に面した長閑な街だ。優しい風が吹く。そして白亜の街並が美しい。
「とりあえずギルドへ行くか」
とその足取りは迷いが無い。どうやらこの街は知っているらしい。
「うん」
と付いて行く。やっぱり歩幅を合わせてくれている。
しばらく歩くとこの街で比較的大きな建物に着いた。うん、看板に冒険者ギルドって書いてあるね。間違い無い。
一緒にギルドの建物へ入った。そこもフォートのギルドと同じく、ファンタジーのギルドといった体をしてた。作りもほぼ同じらしい。一階に食堂が見える。
アルディがカウンターへ向かっていくので付いて行く。何やら書類を提出する様だ。
「移籍に来た。これを頼む」
「ほいよ。……ってお前さんSSクラスかい!こりゃ大歓迎だよ!……って言うかよく見たら有名人じゃないか……!」
とカウンター内の男性……多分この街のギルドマスターは言う。
「……あまり、詮索はするな。ここも出ていくことになる」
と圧を放つ。……お?ちょっとは覇気が戻ったか?
「あいよ。なら詮索はしねぇよ。これからよろしくたのむわ」
とアルディと握手した。
「ああ、こいつもな」
とアルディは私を指す。
「おお、可愛らしいお嬢さんだ。よろしくね」
と握手を求められたので、握手した。
「よ、よろしくお願いします」
「では、部屋を二つ賃貸で借りるぞ」
と金貨を数枚カウンターへ置く。
「まいど」
とギルドマスターは鍵を二つ差し出した。
アルディはそれを受け取りすぐに上へ向かう様だ。なので黙って付いて行く。
二階へ着いたら、横だな……と鍵の番号をみてアルディは一個を私に寄越してきた。
私の部屋が一番奥だ。その手前がアルディの部屋。うん。以前より近いね。ちょっと嬉しい。
が、しばらくしてもアルディは自分の自室へ入らない。……どーしたのだ?と見ているとこちらへ近づいてきて、既に鍵を開けていた私の部屋にスッと入った。……何なんだ。
まあいっかと、私もアルディのいる自室へ入ってドアを閉める。
「……アルディ?どーしたのさ?大丈夫?具合悪い?」
とソファーにドサッと座るアルディの顔を覗き込む。
「いや……別に……」
と言うが覇気があんまり……。
とりあえず私の部屋なのでもてなすために、ウエストポーチから茶器セットを出してお茶を煎れる。
「はい、お茶」
とお茶をテーブルに置き、アルディの横に座る。
「お前は……俺が……怖くないのか?」
と俯きながら聞いてきた。なーにを言ってるんだこいつ……はぁ。
「怖いわけないじゃん……アルディはアルディだし……そりゃ普通の人の様に怒られるのは怖いよ?……でもさぁアルディが言ってるのはそれと違うでしょ?」
とアルディを覗き込む。
「……アマネ……」
とアルディは私を見つめてくる。こりゃだいぶ弱ってるわー。
「アルディ……私はね、これからもずっとずっと、アルディの味方でいるよ。何があってもね」
と力強くアルディを見つめる。……私ぐらいは信じろ!このネガティブボッチ!!
「……ありがとう……信じても良いんだな……?」
と遠慮がちだ。らしくもない。
「そうともさ!!天音ちゃんを信じなさい!!」
と胸を張る。
「ふふっ……ありがとう……アマネ……」
と柔らかく微笑む。いやー眼福だわー。ちょっとは調子戻ってきたかな?
「……アルディ……これでさぁ……隠し事は無しになった?」
「…………」
と黙って目を逸らす。にゃろう……まだ色々隠してやがるな……。
「はぁ……まあ誰しも秘密の一つ二つはあるか……しゃーないねぇー」
とお茶を啜る。
「……い、いの、か?」
と驚いてる様だ。
「良くないけど。……良いよ。……天音ちゃんは心が広いのです」
と、またエッへんと胸を張る。
「本当に……ありがとう……」
と泣きそうだ。これは……そーだな……。うん、そうしよう。
とアルディを胸のあたりで抱きしめた。
「泣きたいだけ、泣いちゃえよ。付いてるからさ。たまには私に甘えてよー」
と背中をポンポンと擦る。
すると、しばらくして……。
「………………っ……アマネ……アマネ……」
と静かに泣きだした。うんうん。好きなだけ泣けばいいさ。
それからしばらくアルディが落ち着くまで撫で続けた。髪柔っかいわー。気持ちいい。
「っ……す、すまなかったな……」
とゆっくり私から離れた。泣いたけどその分スッキリとした、表情と雰囲気だ。
「うん、スッキリ出来たみたいだねー良かった」
と微笑む。頼ってもらえたので嬉しい。
「ああ、ありがとう。もう大丈夫だ」
といつものアルディに戻る。ふふっ。良かった。
「うん!そうみたいだね。いつものアルディだ。やっぱりアルディはこうでなくちゃ!……でもこれからは……いつでも頼ってくれて良いからね?」
と念を押す。
「そうか?……ああ、頼らせてもらう。ありがとう」
「うん、そうしておくれ。アルディらしくないと調子狂うからさ」
「ああ……それでは……おやすみ」
と私のおでこにキスして出てった。……は?
は?は?は?……おでこ……キス!?
いや待て、おでこは友情や親愛の筈……うん、大丈夫。大丈……ぶじゃないわ!!
何してくれてんのさ!アイツ!!
んああぁああぁあああ……恥ずかしい。恥ずかしいっ!と床でゴロゴロする。
……しばらくゴロゴロしてようやく落ち着いた。本当に何してくれてんだアイツ。弱ってたと思ったらそーでも無かったのか??
まあいい……いや……良くないけどと思いつつ、鍵を閉めて。お風呂に入る事にする。
部屋の作りも大きさも前のほぼ同じだったので使い勝手は良さそうだ。
そから、お風呂でもずっとアルディの事を考える羽目になってしまった。
それは寝る前もだ。本当に何なのさー!明日、問い詰め……は、無理だわ。
もう寝よう。忘れて寝よう。そうしよう。それが良い。
だが、その日は中々寝れませんでした。




