21.哀愁
しばらくしてお茶を飲み終わり、またアルディは息をつく。大丈夫か?
「……アマネ……荷物をまとめてくれ……」
「へ?」
何がどうした?
「この街を出る」
「へ?」
また、それしか出てこない。
「……街の者に畏怖されて……怖がられてしまった。話もじきに街中へ広まる……もうここへはいられないだろう。だから引越しだな」
「何それ……アルディは街を救ったんだよ?」
と何か胃が沸沸してきた。業腹である。
「人は恐怖する者とは共存できない。他の街でもそうだった」
とどことなく寂しそうだ。
「……でも……でもっ」
と涙が溢れてきた。止まらない。
「アマネ……ありがとう。泣いてくれて」
と涙を優しく拭ってくれる。
「アルディは優し過ぎるよーー」
とピーピー泣く。
「……そうでも無いんだけどな……」
と私を撫でる。
私はアルディの生き方が悲しくなってしばらく泣き続けた。……きっと泣きたいのはアルディの方なのに。ごめんね。
「うっ……ひっく……ひっく……」
「少し落ち着いて来たか?」
「う、うん。ごめんね」
とゴシゴシと涙を拭う。
「こら……強く擦ると赤くなる」
とゴシゴシ擦る私を静止する。本当に優しいなぁ。
「あ、ありがと……で、いつ立つの?」
「……今日中には立ちたい。すまんな。引越しにいる手続きは俺がやっておくから、アマネは自分の荷物をまとめる事だけやってくれ」
「う、うん……ありがと……手続きとかあるんだ」
「ああ、ギルドのな……では三時間後にここへ来る……」
と部屋を後にした。
それからはとりあえず引越しの用意だなんて面倒臭いので、荷物をどんどん魔道具のウエストポーチへ放り込んでいった。
どうせ、全部持っていくのだ整理したところで一緒である。
それは一時間も掛からなかった。
それから二時間……悶々として過ごした。アルディは街を救った英雄だろう?!と……。
それを畏怖するなんて……。怖がるなんて……。ましてや……バケモノだなんて……酷すぎる。……こんな街……んんっ……これ以上はやめとこ。
と色々考え込んでいたらアルディが部屋に入ってきた。合計三時間経ったらしい。
「用意は出来てる様だな」
と部屋を見回す。
「うん。アルディも、もうOKなの?」
と確認しておく。長い間この街にいたのはアルディだから。
「ああ、別に挨拶する奴もいない」
と寂しいことを言う……。
「そっか……じゃあ二人とも準備OKだね。次の街ってとんなとこ?」
「今度はもう少し内地にするか……お前が出歩けるぐらいの……」
「え?良いの??大丈夫?」
と不安になる。
「大丈夫だ。街を選べは問題無い」
「そっか……じゃあどんな街?」
とホッとした。
「シャンレイクと言う、長閑な湖の街だ」
「へー……良さそう」
「では、行くか……このフォートもしばらくお別れだ」
と移動陣を出現させる。
「そうだね……」
と、部屋をぐるっと見回して陣に入った。二ヶ月ちょっといたんだなぁ……この部屋に……と感慨深い。
それから優しい光に包まれて私達はフォートを静かに後にした。