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14.衝撃と無頓着


 ふう……と先程無詠唱の術で倒したカタルハウンドの素材を麻袋へ詰める。


 ん?今日ですか?……グロワールに来てから一ヶ月と三週間が経とうとしています。つまり無詠唱を訓練し始めてから三週間。


 無詠唱の訓練はあれから特に変わった事はしてません。地道にここ……草原の魔物相手に奮闘しているだけです。


 剣は制限されたままですが、無詠唱でなんとかいけてます。


 無詠唱で精霊を従えるのにも……多分慣れてきたと思いたい。たまに言う事聞いてくれないけど……。


 今は一応初級と中級を少しなら無詠唱で発動出来るようにはなりました。たまにノーコンでぶっぱなしてしまいますが、概ね良好です。結果オーライってやつ。


 ……ノーコンなのは私のデフォらしい。……くっ。


 そしてですねぇ、衝撃だったことがあるんですよぉ……。


 詠唱の呪文の事ですよぉ……。


 なんと!呪文はオリジナルでもある法則に沿っていれば良いらしいんですよね……。


 その法則とはなんと……日本で言うところの、外国語の単語なら基本的に何でも良いらしいのだ……。なんということでしょう。


 日本語は私が無意識でこの世界の言葉に変換しちゃうから駄目だったのですが。


 なので、覚えやすい様にある程度は自分で作ることにしました。そこで活躍したのが偶然にもこの世界へ来た時に学生鞄に入れていた、数カ国の言葉がまとめてある分厚いネーミング辞典なんですよねぇ。オタク趣味が功を奏したとは。


 その辞典をアルディに見せたら、最初はなんだこれ……という反応をされましたが、その後アルディが解析の術を使って読むと……超凄い魔導書という判断が下された。解析で読めるとか本当何なのあのハイスペック……。


 そしてアルディに頼み込まれて、術を掛ける事を許可すると……複製が創り出されました……本当ハイスペック……。


 それで、お礼にとアルディは辞典に紛失と盗難防止の術と防汚と不朽の術を掛けてくれた。助かるわー。で、沢山の金貨も渡されそうになったが、それは断った。……なんでもそれぐらいの価値はあるらしい。……ちょっと惜しいことをしたかもしれない。


 それからアルディは自分用の複製したネーミング辞典に夢中である。目がキラキラしている……あれは誰だ!?


 今も、私がその辺の魔物相手に精霊を従わせて無詠唱を頑張っているというのに……アルディは夢中で辞典を呼んでブツブツ言っている。……アルディって魔術オタクだったんだね……。大丈夫、引いてない。うん、ちょっとだけ。


 あと、辞典は悪用される可能性もあるから人前では出さないようにと、門外不出を言い渡された。本当に結構凄いものらしい。……日本では普通に売ってるのに……。


 



 それから無詠唱で魔物を狩り続け、夕方になった。そろそろ帰らねば。


 ……アルディはまだ辞典に夢中だ。おーい、帰ってこーい。


 仕方ないのでまた、揺する。


「アルディ……アルディってば!アルディ!」


 何回か揺するとようやくアルディはこちらへ戻ってきた様だ。ふう。


「ん?……どうした」


「どうした、じゃないよ!もう夕方なんですけど!ほらっ!」

 と沈みかけている太陽を指差す。


「……すまん……帰るか?」

 とバツが悪そうだ。


「うん、お腹減ったー」

 と鳴りそうなお腹を押さえる。


「……たまにはあのレストランに行くか?」

 と言う。……多少は悪いと思っている様だ。


「うん!行くっ!」

 と現金な私はコロッと許してしまった。しゃーないあの店美味しいんだもん。


「では、店の近くの路地へ移動するか」

 と陣を出す。私もそれに入る。


 そして光に包まれ路地へと移動した。


 

 それからレストランに入って、メニューを選ぶ。……今日はピザにしよう。大きいヤツ。


 アルディはまた、ドリアの様だ。よほどお気に入りだな?……それとも食に無頓着なのか……。


 だって、ここへあれからここへ八回ほど来たが、ずっとドリアだからだ。


「……俺がどうかしたか?」

 と凝視し過ぎたのか問われた。


「いやぁ……いつもドリアだなって思って……」

 と頬を掻く。


「そういえばそうだな……それがどうかしたか?」

 と不思議そうだ。


「んー……だって食堂で食べるのもいつもほぼ一緒のメニューじゃん?」

 ……お弁当は私に合わせてくれているのか様々なメニューだが。


「……そういえばそうだな」

 とちょっと考え始めた。


「アルディってさ色々無頓着だよねー。服もいつも一緒だし、髪も簡単に麻紐で留めてるだけでしょ?」


「……よく見てるな」

 と少し照れた様だ。


「……よく見なくても、いつも一緒なんだから気付くって……」

 とやれやれとポーズをとる。


「ふむ。そうか」


「何でそんなに無頓着なのさー。せっかくのイケメンに生まれてきてる癖に」

 と呆れ顔で見る。平凡顔の僻みも入っている。


「さあな……」

 とそっぽを向く。イケメン部分に照れたか?


「いつからそうなのさー」

 と追求を止めない。今日は話してくれる気がしたのだ。


「……いつから……ふむ?…………。随分昔からだな」

 と少し遠い目をした。何を思ったのだろう。


「……昔っからって……あんたまだ二十三でしょ!?枯れてるわー……」


「…………」

 とアルディは、黙ってちょっと心外そうにしている。


「てかさ、私ぐらいの……十六の時ってどーしてたの?」


「……十六……………………。ああ、冒険者をしていた」

 ……なんだこの間は……。


「んじゃあ今と変わんない感じ?」

 と配膳されたピザを頬張りつつ訊ねる。


「いや、かなり青かった……な」

 と懐かしそうな顔をする。


「ほぇー……アルディにそんな頃が……」

 とまたピザを頬張る。美味い。


「俺の話はもういいだろう?……アマネはここへ来るまでは何をしていたんだ?」

 と今度はこちらが追及される番らしい。アルディはもう自分の事は話す気は無さそうである。……謎が増えただけだぞ。


「ほぇ?私……ただの学生だったけど?」


「学生か……珍しいな。何を専攻していたんだ?」

 と興味を持たれたらしい。


「専攻って言われても……普通科だったし……満遍なくかな?義務教育の延長線上の学校だよー」


「満遍なくか……。義務教育?そんなものがあるのか……」


「うん、私が暮らしてた国はしばらく戦争も無くてね、まあとりあえずは平和な国だったよー。もちろん世界に魔物なんていないよー」

 とまたピザを頬張る。


「……そんな平和な所から来たのか……」

 とアルディは考え込んでしまった。あー……また自責の念に囚われてるなこりゃ。


「でもさぁ、私……ここでの生活案外好きだよ?アルディもいてくれるし、戦うのにも慣れたし」


「……そうか……ありがとう」

 と大きく息を吐き出した。安心させれたかな?


「うん。とにかくアルディもさっさとドリアたべたらー?冷めちゃうよ?」


「そうだな」

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