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11.魔術


 今日も今日とて、私とアルディは草原にいる。私がグロワールへ来て一ヶ月が経とうとしていた。


 そう、もう一ヶ月もここで様々なデボレ種を剣で狩っている。一体何体狩ったのだろう……狩り尽くすんじゃないかな?




「よし!素材採取っと!フィーネ・ツェアレーゲン!」

 と調子よくどんどん倒した魔物を素材にしていく。


 狩りの腕は一ヶ月で随分上がったと思う。もうデボレ種なら一撃だし、複数体でも簡単に相手を出来るようななってる。転んだり、怪我もほぼしない。


 私のその様子をみてアルディは……そろそろ次へいってもいいか……と言った。


「次って……もしかしてー??」

 と期待を込めて聞き返す。もうこの単純作業には飽きてきていたから。


「魔術だ」


「魔術!よ、ようやく!魔術っ!!」

 とさぞ私の顔は輝いているだろう。


 ようやくと言うのは、アルディに草原のデボレ種達に危なげなく快勝出来るようになったら魔術を教えてやる、と言われていたからである。


 魔術にも基礎体力は要るし、詠唱して術を放つ前に魔物にやられる様ではいけないから、まずは剣で魔物への対応力を付けさせられたのだ。


「約束したからな」

 と珍しく微笑む。


「うん、うん!さあさあ!ご指南お願いします先生!!」

 と笑顔でアルディを急かす。


「では、基本からだ……」

 と先ずは、座学をさせられた。魔力とは、魔術とは何か?から始まり、各魔術の系統の説明など多岐にわたった。


 正直、すぐに実践させてもらえると思っていたので、ガッカリしながらも真剣にアルディの授業を聞いた。……どうやら魔術は基礎的な知識が無いと危険な様だから。


「……と、これぐらいか……理解出来たら実践するか?」


「はいっ!理解出来ました!大丈夫です!実践したいです!」

 と勢いよく答える。元々私には数々のファンタジー作品で覚えた知識があるからアルディの魔術の説明もスルスルと理解出来た。……それに自分で言うのも何だが、頭も悪くないし。


「では、初歩的な詠唱から入るぞ。先ずは風で葉っぱを切れるようになれ。……やってみせるぞ。……シュヴァハ・ウインド」

 とアルディは手に持っていた葉っぱを宙へ舞わせ、魔術の風で両断した。


「おおっ!」

 とパチパチと拍手をする。


「……やってみろ」

 と側の木から一枚葉っぱをちぎって渡してきた。


「……はいっ」

 と真剣に葉っぱと向き合う。


 そして葉っぱから手を離し宙を舞わせ、シュヴァハ・ウインドと詠唱したが……弱い風が吹いただけで葉っぱは切れない。虚しく葉っぱが飛んでいく。


 その様子に、マジか……と肩を落とす。


「……想像が足りない。風の刃で葉っぱが二つに切れるイメージをしろ」

 と指南してくれる。


「イメージ……イメージ……分かった。もう一回やってみる」

 と葉っぱを手にし集中した。


 シュヴァハ・ウインドと……今度は宙に舞う葉っぱが千切りになった。……イメージと違う。


「……千切りじゃない。真っ二つにだ。魔力を一点に集中しろ。ほらもう一度」

 と葉っぱを差し出してくる。


 その葉っぱを受け取り宙へ舞わせ集中し、再びシュヴァハ・ウインドと詠唱する。すると、今度は見事に葉っぱが真っ二つになった。


「……これ……出来たよ、ね?」

 とアルディを見る。


「ああ。上出来だ」

 と軽く微笑む。


「やった!!」

 とガッツポーズをして跳ねる。


「喜ぶのはまだ早いぞ。これを詠唱無しで出来るくらいになれ」


「は?……詠唱無しで??」

 と目を見開く。いきなりそれはないだろう。……よくある物語の中でも難しい部類だぞ。


「これは初歩中の初歩だ。これぐらい無詠唱で出来てこそだ」

 とサラリ。


「……アルディさん……聞いておきますが、普通の冒険者は無詠唱で術を使うのでしょうか?」

 と胡乱な目で訊ねる。


「……いや、大概は詠唱ありだな……」


「ほらね!やっぱりね!何で無詠唱とか難しいのさせようとするのさ!」

 と問い詰める。一体どういう了見だ。


「……俺が無詠唱だからだ」

 ……つまり自分に合わせろと?


「…………」

 と黙って白い目で見続けてやる。


「……言っておくが、無詠唱の方が俺と同じ感覚で教えやすいからだ。魔術は感覚がモノをいう」

 とちょっと居心地悪そうだ。


「他のメリットは?」

 と追い詰めてやる。滅多に無い機会だからちょっと面白かったりする。


「詠唱するよりも発動が早い。……一部の魔物にも術の発動が気付かれにくい。これからランクアップし、強敵に当たる場合は必須だ」

 と一応メリットはあるらしい。


「……ふーむ。強敵に当たる場合は必須か……」

 とメリットとデメリットを考える。


「それと、対人戦になった場合も術に対策されにくい利点もある」

 と恐ろしいことを言う。


「た、対人戦!?……そ、そんな事もあるの?」

 と声が震えてしまう。


「冒険者を狙った盗賊とかがいるからな」

 とサラリ。マジかよ……。


「うへぇ……」


「とにかくメリットが多い。無詠唱やるな?」

 と決まってるだろう?と言わんばかりに言ってきた。


「はぁ……はーい。無詠唱やりますよー。やりゃ良いんでしょー。先生ー。」

 と抵抗は諦めた。多分どうやっても無詠唱に誘導されるだろう。ならもうすんなり受け入れた方がましである。アルディはたまに頑固だ。


「分かったなら良い。ほらこれで訓練しろ」

 と大量の葉っぱを差し出してきた。……これぐらいやらないとダメだという事か?


「はいはい!やりますよっ!」

 と勢いよく葉っぱの山を受け取った。


「……で、コツは?先生……?」


「心の中で詠唱し、魔力を集中させ、さっきより明確にイメージする事だ。後は……センスだ」

 と指南と共に、元も子も無い事を言われた。センスだと?……自信が無いぞ!





 案の定、何度無詠唱でやってもそよ風が葉っぱを飛ばすか、強すぎる風が葉っぱを千切りにするだけだった。発動はするが、コントロールが出来てないのである。先程の座学によると、コントロール出来ないと強力な魔術を使うのには危険なのだ。制御不能になる。……まいった。


「先は長そうだな……まあ、発動出来るだけましか……」

 と必死な私を見て呟く。


 私といえば、ぐぬぬっ!と葉っぱと悪戦苦闘中である。


 私の葉っぱとの格闘は夕方まで続いたが、全然思う様にいかないのである。次第にイライラが募り、更に魔力が乱れる。悪循環だ。


「何でぇ……何でなのっ!」

 と泣いてしまいたい。


「……アマネ……落ち着け、とりあえず今日はここまでだ。帰るぞ」

 と、いい移動陣を出現させた。


「えっ……ちょ、待って!……ああ、もうっ!」

 と仕方が無いけど渋々陣に入る。


 そして自室に戻ってきた。今の私は凄く不満沿うな顔をしている事だろう。それだけ不満である。


「……不満そうだが、根を詰め過ぎるのは良くない。それに今日はもう遅い、夕食をとって休むぞ」

 と食堂へ行くように促される。仕方ないので渋々それに従う。



 

 それから夕食を食べて自室の前へ来た時だった。


「アマネ……自室では絶対に、魔術の練習はするなよ。惨事が起きる可能性がある」

 と自室で練習しようかなーと思っていた私の心を読んだかの様に言い。釘を指してきた。


「っ……し、しませんよ。しません、誓います!」

 とバツが悪そうにビシッとして見せた。


「なら、良いがな。……おやすみ」

 とアルディは自分の部屋へ戻る。意外と近い部屋らしい。


「おやすみなさーい」

 と自分も自室へ戻る。


 


 それから、魔術の事が頭から離れなかったが、何とか振り切って眠った。


 明日こそ上手くいきたいっ。

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