#1 JKは波乱万丈
入学前の夜は何かと落ち着かないものです。
窓から光が差し込んでくる。いい朝……。
――って場合じゃない!!
「うわぉう!!遅刻だぁああああああああ!!」
「あんた、いつまで寝てたのよッ!!」
「お姉ちゃんこそ今日くらい起こしてくれたっていいじゃんッ!!」
よりによって今日、寝坊してしまった。どうしてよりによってかって?
「今日は入学式なのにぃいいいいッ!!」
そう。今日は高校の入学式。
時計を見る。7時30分。電車発車時刻は7時40分。両親は仕事で出張中。姉、これから大学へ行く。――ってことは……
「行ってきまーすッ!!」
「朝ごはんは?」
「いらない!!」
そう言い残して家を出た。もちろんもう着替えた。早業でしょ?
愛車に(飛び)乗って出発。もちろん自転車。青春の象徴「立ちこぎ」。風が気持ちいい。(うそ。凄まじい風でオールバック状態。おぇええ、口に虫が入ったかも……)駅が見えてきた。
「はい残念。今行っちゃったわ」
ニコニコ駅長野朗(ジジイでも可)め。
こういう時の私の頭の回転は自慢ではないけど、とても速い。自転車の向きを変えて出発した。
「おい姉ちゃん、この制服だと桜蘭高だよな、ここからだと15キロ以上あるぞぉ」
「だって、こんな田舎じゃあ次は2時間後でしょ!!」
またもやそう言い残して駅を後にした。うえー、疲れるー。
桜蘭高校。
普通なら新入生達が自分のクラス表を見るためにわんさか押しよせているはずだが……
「――いない。遅刻だ」
13H。教室に向かう。
ガラガラ……
みんなの視線。先生もこっちを見てるし……。
「おはようございますッ!遅刻ですよッ!!席につきなさいッ!!」
まあ、なんてアクセントの激しい先生なのかしら。そして、かなりお怒りのようだわ。――最悪。初対面からさよなら状態。通知表覚悟しとこ。
席なんてすぐに見つかった。自分の席だけがぽつんと空いている、みんなの痛い視線を感じながら席に着く。やだぁ、そんなにわ・た・しを見つめないでぇ(んふっ)。←キモッ!!
「10分後には廊下に並んでいてください。入場しますから」
先生が出て行った後、教室は急ににぎやかになった。緊張がややとけた感じ。もしかしたらその逆でテンションが異常に高いのかも。
早速誰かが話しかけてきた。ショートヘアーで結構可愛い。ややつり目気味。色素が薄いのか、色白で髪はやや茶色。
「ねぇ、どこ中出身?」
「桜木中だけど。ねぇ、その前にまずは名前からでしょぉ。あたしは二ノ宮凛」
冗談っぽく言ったら、相手は「ああ、そうだね」と小言を言ってから
「私は吉野あずさ。新田中出身。よろしくね」
「こちらこそよろしく」
「ねぇ、あとでメアド交換しようよ」
「いいよ」
入学式はあっけなく終わった。名前呼ばれて、校長の話で来賓の話で……
「――退屈」
校長はハゲてなかった。
「さっきの続きなんだけど……」
あずさはひたすらしゃべり続ける。途中でもう一人連れてきた。
「凛、この子もよろしく」
そういって連れてこられた子はやや緊張しているようだ。二つのおだんごヘアーでやさしそうな顔立ちをしている。
「赤原ルカです」
「ルカって呼んでやってね」
「ルカ、敬語使わなくていいよぉ」
「うん、ありがと。よろしくね」
「ルカと私は新田中で一緒。ルカって時々変なこと言うんだよ」
「えー、どんな感じ?」
「あずちゃん、やめてよぉ。はずかしいぃ」
ルカは顔を赤くした。
「いいって、いいって。で、どんなこというの?」
「なんかねー、『宇宙人がいる』とか言ったり、周りには誰もいないのに一人で話をしてたりとか……あ、独り言ではない感じ。クスリでもやってるのかと思った」
「へぇー」
こりゃまた面白い子がいるもんだ。見た目は普通なのになぁ。
「ま、たまーにそんな事があるくらいだから普段は普通だし、仲良くしてやってよ」
「うん、よろしくルカ」
「ありがとう、改めてよろしく凛ちゃん」
クラスでの自己紹介や教科書の配布が終わって、いよいよ帰れるようになった。今日の午後は何しようかな。と考えながらスクバに荷物をつめこむ。
「じゃ、またメールするから」
ルカとあずさに言葉をかけて教室を出た。もう廊下でみんなは今日出会ったばかりの人たちと仲良くなっている。中学校でも見ているみたい。
HAR●TAのローファーをはきながらもっと浅履きの形にすればよかったと考えていた。今度、携帯用の靴べらでも買っとこう。
学校を出てすぐに学校の敷地内にある、茶道部のための茶屋なのであろうか、しぶい古風な建物が目についた。まあ、今日からはこの桜蘭の生徒なんだし、見に行ってもいいだろう。行ってみた。
周りは木々に囲まれているので隠れ家のようにも感じる。桜の花びらが散り美しい景色だ。木の枝をかきわけて……話し声が聞こえる。しかも聞き覚えが。
「あ、ルカ!!ここで何してるの?」
「凛ちゃん、どうしてここに?」
「え、なんか面白そうだなと思って。ルカこそどうして?」
「え……えっと、ほら、ここって落ち着くでしょ?この建物、今使われてないから……」
そういえば、校舎の裏に新しい茶屋があったっけ。
「誰と話してたの?」
「え!!?」
ルカの顔が赤くなる。かわいい。
「空…耳じゃないかな……」
「うーん、そうなのかなぁ?」
ま、いっか。さっきあずさが言ってたことだし。
「やだぁ、何これぇ!!カワイイ〜!!」
ルカの手の上に黄色のポンポンに小さな目がちょこんとついたような顔に、同じ大きさのポンポンの体と同じく黄色の細長い手足がついたような、手のひらサイズのぬいぐるみが座っていた。もう片方の手には同じような青色のぬいぐるみ。それには頭に5つのとげみたいなものがついていた。
「ああ、これね。この黄色いのが『No.1017』、青いのが『No.0809』」
「うっそぉ、名前までついてるの?しかも、かわいそうな名前……」
「ねえ、せかっくだし一緒に帰ろうよ」
「うん。あたし、今日は自転車で来たから駅まで送っていくよ」
「ううん、私は歩きで来たから大丈夫。歩いて帰ろう」
「いいよ」
ルカは意外によくしゃべった。中学校の話や今回の高校の先生達の話題、何でも話す子だった。今回の担任の石丸典子ではバカ笑いの連続だった。
「そしてね、その時に凛ちゃんが教室に入ってきてみんなびっくりしてたんだから」
堤防ぞいであたしは自転車をおして、ルカと2人で並んで歩いていた。
「あれはすぐにわかったよ。みんなの視線がめっちゃ痛かったぁ。しかも典子がめっちゃアクセントのつけた声でわめいててさぁ、『わめキング』?」
「あははははは」
「中学校でもそんな感じの人がいてさぁ、生徒会担当。あれの顔はテレビみたいだった。英語担当も似た感じ」
「あはははははは。私の中学校の先生は……」
ルカが笑って言おうとしたその時――
「……ッ!!何、あれッ?!!」とあたしの声。
かかか…かわッ、川から何かが出てきた!!
人間とか、犬とかじゃない!!別モノッ!!宇宙人だぁああああッ!!!
わけのわからないものだったかもしれませんが読んでくださってありがとうございました。これからも続いていくつもりなのでまた読んでください。