cord.8 襲撃
ジークとミトは再び訪れた闇夜を駆け抜ける。殺し屋の本部へ報告に向かっていた。
「…と、いう事です。結局ソキウス・ダヴァーは自爆。有力な情報は何も聞き出せていません。」
「成る程な。結果はここ、癒しの街アニマの半壊、か。」
書類に何かを書き留めるボスをジークミトは申し訳なさそうに見る。
「状況は?」
「街自体は半壊までやられましたが、住民はミトのバリアで何とか。」
それなら良い、と言いまた顔を伏せペンを動かす。
「…ところでだな、ジーク、ミト。」
急に真剣な目でボスに見つめられ、沈黙が訪れる。
「……お前らに最後の依頼だ。お前達に帝都ディクタティアの王アルコン・ディクタティアの抹殺を依頼する。」
その言葉を受け、ジークとミトは驚きを隠せずにいた。
「…どういう事ですか…?」
ミトが緊張の面持ちでそう静かに聞くと、ボスはそのままの意味だ、とだけ言った。埒があかない事を理解し、ジークとミトは本部を後にした。
「最後って…殺し屋をやめろってか…?ディクタティア王の抹殺だって…?」
「ボスの勘は当たる。このまま野放しに出来ないんだろうね。…ただ…俺達だけでは…。」
月明かりが差す静かな夜の街を2人は歩く。今殺し屋を辞めさせられたところで困る事は何1つない。ないが、何も辞めさせる必要があるのかと疑問を抱く。しかし殺し屋に勤めて長い人はある任務を最後に姿を見せなくなっていたのも事実。そういう決まりでもあるんのだろうと憶測で結論付ける。
「…でも…絶好の機会だ。これであいつらを…!」
幼い頃から夢見ていた復讐が実現するのだ。ジークにとって都合は良かった。
「それに、実際ディクタティアは危険だからね。セイトの事件で王の不在を良い事に北のクロウカシスまで支配下に置いてる。行動が早いよ。次に狙われるのはセラの居る水の都かな…あそこも王がやられたからね…。すぐに前王のセラの祖父が王になったは良いけどもう歳だ。次はセラだと言われてるけど前王のように行かなければすぐに…。」
「あぁ、そういえば水の都のセフィラ・トーンとは幼馴染だったな、ミトは。あの人はエレメンツでもある、いつでも都に居れるわけじゃないしな…。成る程な…あいつらは血染めの事件から何も変わらないな。」
夜空の月を見上げ、唇を噛み締めるジーク。ミトはそんなジークの肩を優しく叩く。
「ま、今考えて答えの出る事なんて少ないよ。今は休もう。」
そういってジークの前を歩いた。が、すぐに立ち止まり辺りを見渡す。その行動を見ていたジークはミトに駆け寄る。
「…どうした…?」
「…風が変わった。………何か…来る!」
物凄い速度で殺気が近づいてきている事に気付き、ジークとミトは構える。次の瞬間、火の玉がジーク目掛けて飛んでくる。それを剣で切り裂く。
「武器を置け。」
聞き覚えのない低い声が聞こえたかと思うと、ミトが小さく呻き声を上げる。そのミトの首には大きな鎌が突きつけられている。
「ミト!!!お前!何のつもりだ!!」
ジークが叫んだ瞬間ミトの突風魔法が鎌を弾き、その人物と間合いを取る。火の玉が飛び交うのを交わし、人物を確認する。
「なっ…!?お前達は…!!」
そこには地のエレメンツであるレイル・ロンドと、火のエレメンツであるリオン・アルディックが立っていた。