cord.7 終わりなき友情-ローダンセ
残された3人。かつて共に過ごした仲間。目の前の肉の塊に目をやる。
「…何故。」
「…これは…あんまり…だね…。」
変わり果てたセイトの姿。残留魔力だけが、この塊がセイトであった証拠だった。
「…何故…!何故セイトは殺された…?何故…何故!!!」
「ちょっカイン!?どうしたの!?」
カインの中には熱いドロドロとした物が込み上げていた。
「…ジーク………カルロス…!!絶対に許さない…!!」
カインは涙を流し、憎悪に満ちた声でそう言った。
「う…あ…!うわぁぁぁぁぁああ!!!!!!」
静かな洞窟中には、カインの泣き叫ぶ声が響き渡った。
そしてこの世界には平穏が訪れた。しかし王の不在により騒ぎが鎮静化するのはしばらく時間がかかった。世界の脅威、セイト・グレス・ローダンセを殺したジーク・カルロスは英雄と呼ばれる中、殺し屋である為恐れられもした。しかしセイトを倒した事も事実である。その為グラッド・ブレイカーにならないかという声が上がったのだ。カインとルーティは勿論抗議をした。が、事実には抗えなかった。グラッド・ブレイカーであるカインとルーティが出来なかった事をやってのけたのだ。そんな人物を野放しにするのも恐ろしく、新しい国王たちの間でジークを次のグラッド・ブレイカーを決める式典が行われるまで、仮のグラッド・ブレイカーに任命したのだ。
そしてジークは何事もなかった様にカインとルーティの前に姿を現した。
「…これからよろしく頼むよ、ルーティ、カイン。」
「貴様っ…!!!」
カインはーそんなジークの胸ぐらを掴み叫ぶ。
「てめぇどのツラ下げて来やがった!!あいつを殺しておいて!!よくもノコノコと顔出しやがったな!!!!」
ルーティとジークは固まった。ルーティにとってこれ程感情露わにするカインは初めて見たからだ。
「よくもまぁここに来れたな!!!殺し屋風情が!!!なぁ!!どうしてあいつを!!どうして…!!」
そのままジークの前に崩れ落ちるカイン。そんなカインにジークは静かに言う。
「……悪い。俺はお前達の考えを何も知らなかった。殺し屋の依頼でセイトを殺せと言われた。だから殺した。それだけなんだ。」
「じゃああんたは…悪気はないって言いたいの?」
ルーティが静かにそう聞く。ジークはルーティを見ると頷いた。
「だからと言って、俺が間違ったとも思っていない。でも、お前達と関係を深めるつもりはないから安心してくれ。」
そうハッキリ言うと、カインは立ち上がりジークを殴り飛ばした。
「…たりめぇだ…!ここは俺らの場所だ!てめぇみてぇな奴が入って良い場所じゃねぇ!!関係を深めるなんざこっちから願い下げだ!今すぐ失せろ!!!」
頬を抑えるジークは1つため息をついて立ち上がる。そして分かったよ、と一言言うと姿を消した。
「…カイン、落ち着いて。確かにあいつ、ジークがやった事は許し難い。でも…あたしらだったらセイトをちゃんと殺せてたかな…。仕事である以上ジークだって仕方のない事。許せとは言わないけど…復讐なんて馬鹿な事はやめて。セイトの為にも。」
そのルーティの言葉に落ち着きを取り戻したカインは悪かったと小さく呟く。
そして2人はセイトが何故あぁも豹変してしまったのか調査する事にしたのだ。セイトが変わり始めてから関わった者を当たって回ったが、行く先々でジークとミトが待ち構えていた。その為セイトの情報を聞き出す事は叶わなかった。そんなジークに、1度抑えられていたカインの怒りも段々と溢れ出していく。そして、カインはかつての友の為、仲間の為復讐を決意した。