cord.5 再来
それから各国の対応策を練り、会議は丸2日に及んだ。皆が必死に案を出す中、ディクタティア王アルコン・ディクタティアだけが1人黙り込んでいたと思うと、興味ないと言い会議の最中部屋を出て行ったのだ。しかし各王達は御構い無しに話を進めた。と、話がまとまりかけた頃、突然大きな音を立てて扉が開く。
「大変です!!セイト・グレス・ローダンセが!!!街を!!」
「あいつが…!?」
皆が一斉に立ち上がり、焦りと驚きを露わにする。セイトを殺したくないカインとルーティは、上手くセイトを殺させない結論に持っていこうとしていた。矢先にこれだ。
知らせに駆けつけた兵士は息を整えようと肩で大きく深呼吸をしている。と、その口の端から静かに血が零れ出す。
「いけない!すぐに治癒魔法を!!」
ルーティが駆け寄ったと同時に、その兵士の穴という穴からは血が噴き出した。大きな叫び声をあげ、ルーティの目の前に力なく倒れ、動かなくなった。
「ククッ…モウ死ンダカ、軟弱ナ人間ヨ。」
その声はルーティの目の前の死体から聞こえた。すると死体は黒い塵になる。それと同時に突然ゆっくりと扉が開かれた。
「ヤァ皆々様方。」
「……セイトォ…!!」
目の前には苦難を共にした仲間、セイトが立っている。カインは唇を噛んで声を絞り出した。そんなカインを見ると不敵な笑みを浮かべる。
「アァ、貴様ノ事ハ良ク知ッテイル。イツモ此奴ノ後ロニ隠レテイタ軟弱者。」
「違う!!!」
部屋中にカインの大声が響き渡る。カイン本人も自分の声の大きさに驚いているようだった。
「クク…違ウゥ?貴様ハ何ガアッテモ此奴ニハ勝テナイ。貴様ガ良ク分カッテイヨウ。」
セイトの言っている事はあながち間違っていなかった。カインをこのグラッド・ブレイカーに誘ったのは他でもない、セイトだったのだ。カインにとって自分の居場所を与えてくれた相手を殺す事はしたくなかった。
「ク…ハハハハ!!!我ニヒレ伏せ!!死ネェ!」
突然の殺気にその場に居た全員が怯む。そして笑顔で手を前に出すと、そこの空を割く。数秒の間が開き、カインの後ろに居た王が1人、小さな悲鳴をあげて倒れた。
「なっ…!!セイト!?あんた本気なの!?」
そんなルーティの制止も聞かず、セイトは続ける。何度も、何度も。その度部屋が血に染まる。残りがカインとルーティになった頃、セイトはようやく手を止めた。そして目を閉じる。それと同時に殺気も消えた。いつものセイトの魔力を感じる。
「カイン、ルーティ。悪いな…もう…一緒には行けねぇワ…。」
そう言ったカインはグラッド・ブレイカーの証のバッチを床に投げ捨てた。そして一瞬にして目の前から姿を消したのだ。
「…セイト………。」
ルーティは血で汚れたバッチを拾い上げそう呟いた。側に歩み寄ったカインを見る。
「ルーティ、手伝ってくれ。」
再び現れたセイト・グレス・ローダンセは会議に集まった5ヶ国の内4ヶ国の王とその側近達を殺し、グラッド・ブレイカーを捨てた。そんなセイトに、カインとルーティも覚悟を決めたのだった。
「…カイン、本当に、いいんだね。」
「あぁ。俺達は悪を破壊する者、グラッド・ブレイカーだ。あいつがグラッド・ブレイカーを捨てた以上、あいつは俺達の仲間ではない。排除すべき悪だ。だから…絶対に俺がとどめを刺す。いや、刺さなければいけないんだ…!」
カインはルーティから受け取ったセイトのバッチを握り締めてそうハッキリと告げた。