エピローグ R∃START
ジークはそれから自分が殺めた人々のお墓をひたすら巡った。その間、ジーク・カルロスだとバレないよう細心の注意を払った。ジークはハッキリと覚えていた。殺めた一人一人の顔も名前も。葬いの旅が終わったのは2年経った頃だった。そこでジークの行方や処罰の詳細についてが、漸く世界中に公表されたのだった。ウラノスの南端、風そよぐ街アネモスで子供達に魔法を教える仕事をしていたミトはそれを知り、涙を流してジークの無事を心から喜んだ。そして風に思いを乗せるのだった。炎の街ヴァルガの代表に選ばれていたリオンはジークの消息を知り、興奮を抑えられず武闘会に乱入し見事優勝。そこでジークへ数々の思いを乱暴に叫んだ。大樹の側の小さな村アルバで研究に没頭していたレイルは、次期土のエレメンツとして指導をしていたアエリア・ナージェと共に笑みを浮かべた。クリスタロスの王女として日々大忙しのセフィラはその知らせを聞き、崩れ落ちて泣いた。責任を感じていたセフィラにとって、とても嬉しい知らせだった。カインとルーティはそんなセフィラの様子を見て、安堵の表情を浮かべた。
元ディクタティア帝国は夢の国ソフェルと呼ばれ、多くの民が権力に縛られる事なく幸せに暮らしていた。ジークらの起こした革命は世に事件として語られたが、この国では記念すべき1日として祝日にもされた。そしてソフェル国民の希望でジークの像も建てられていた。しかしまだ安定したとは言い難かった。ソフェル国民の中にはやはりジークを良い目で見ない者も大勢居た。その為ソフェル国内での内輪揉めも少なくなかった。加えてソフェルの平和が約束されたわけでなければ、クロウカシスの経済は厳しく、この状況で兵の廃止をしてしまうと、それまで兵士として働いていた者の生活が危ぶまれていた。それに尽力を尽くしていたのが各国の王の他に、ルーティとカインだった。各地へ赴き状況を聞きそれを踏まえた上で次の策を提案する。もっとも、それも全てが上手くいくわけではなかったが。しかし皆は諦めてなどいなかった。勿論、ジーク本人も。
「…はは、大分待たせたな…。ったく…泣きすぎだ。」
風に運ばれて来た相棒…ミトの声がジークの元へと届いた。この行為すら禁止されていた為、ミトの声を聞いたのも2年ぶりだった。皆ジークが生きて居る、という事だけは魔力から分かってはいたが。風に運ばれて来たその声はそのまま静かに遥か遠くへと運ばれて行った。ギルドの二階のベランダから見渡せる世界はとても美しかった。その光景に笑みを溢すと酒場へと向かう。ジークがいつものようにギルドの酒場でメンバーと騒いでいた時、ゼクターの気怠そうな声が響いた。
「おーっしお前らー!新人だぁ!癖の強い奴だが…まぁ…よろしくやってくれよぉー!」
そんな台詞に皆が不思議そうな顔をし、目を見合わせる。ゼクターの隣に静かに現れた黒い影。扉から差し込まれる光とは対照的に、全てが黒かった。その人物はジークを捉えると顎を小さく上げ口の端で静かに笑った。ジークはその人物を見ると立ち上がり、目を見開いた。
「…カイン・リート、よろしく。」
「…良イノデス、カ?」
「何、彼奴ラヲ殺ス事ナド我ラノ真ノ力ガ目覚メレバ容易イ。ソウダロウ?我ガ主人ヨ。」
「勘違いすんなよ?俺ぁ奴らを殺してぇんじゃねぇ。奴らを使って楽にこの世界を壊してぇだけだ。その為にお前らを使う。分かるか?俺ぁてめぇらに力を貸すんじゃねぇ。てめぇらが、俺に力を貸すんだ。面倒臭ぇ話は……無しだぜ…?」
闇夜に浮かぶ月が微かに歪んだ。
長らくお付き合い下さりありがとうございました!BR∃AK∃Rのお話はこれで終わりです♪学生時代(中学生)の頃に趣味で描いていたもののリメイクなので、矛盾点や理解し難い部分があると思います、申し訳ないです…。ここまで描いてみて、もっともっと番外編も描きたいなぁという想いに駆られてます笑笑
この話の続編はあまり考えていませんでしたが、これを機に描いてみてもいいかも…とも笑笑
兎にも角にも、読んで下さった全ての方々に心からの感謝を申し上げます。新作の方もよろしくお願いします!