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BR∃AK∃R〜ブレイカー〜  作者: 笑夢
39/40

cord.38 始めの一歩!

「じゃ、世話になったな、セフィラ!」


 こうしてエレメンツとグラッドブレイカーは解散。エレメンツに与えられた処罰は、良くも悪くも1ヶ月の王都ウラノスでの監視生活。恐怖を抱く民への配慮であった。ルーティとカインは世の立て直しを任された。


「これは仕方のない事なんだよ、世の国民全てを納得させる事なんて不可能…だけど、元ディクタティア国民の不安は尽きないんだよ。」

「それでも…!この選択は……!貴方達はこれを彼に告げて、それで良いと言うのですか!?」

「わしらも…助けられておる身でありながら…身勝手な話ですが……こればかりは…。」


 残るジークへの処罰は難航していた。ジーク本人はその間はエレメンツと同じように、ウラノスで監視をされ続けていた。が、他のエレメンツに会う事は許されてはおらず、会議が開かれている建物の一部屋で毎日を過ごしていた。各国の王とグラッドブレイカーの会議が尚も続けられていた。ジークはそれに対して文句の一つも吐かず、寧ろ自分は罪を背負うべきだ、とも言っていた。


「…俺も奴には助けられている。が…俺達は革命を起こそうとしているんだ。なんの犠牲もなくそんな大層な事は出来ないだろうな。俺達がそれを許そうが、民はそれを許さない。」

「…ディクタティア国民も平等に扱うのなら、ジークに恐怖した国民の気持ちを無下にするわけにもいかないんだよ。セフィラ・トーン、これは貴方の選択した未来なんだよ。あたしだってジークに罪を背負わせるなんて、そんな事はしたくないんだから…。」


 重い空気が包まれる中、ジークへの処罰がここで決まった。国民どころかエレメンツにも知らされず、セフィラも口外することを禁止された。その結果にセフィラは1人静かに涙を流した。



「…すまないな、ジーク。」


 ジークの元へ訪れたカインとルーティ。2人の表情は決して明るいものではなかった。そんな2人を見て、ジークは静かに頷いた。


「俺の為に手間掛けさせてしまったな。悪い。さぁ言ってくれ。それを俺は笑って受け止める。それであいつらの処罰が少しでも軽くなるなら、な。」


 ジークが笑顔を見せる。そんなジークに、2人は胸を締め付けられる思いになった。ルーティは深く深呼吸をして切り出した。


「…ジーク・カルロス、今ここでグラッドブレイカーの任を解く。そしてこれから貴方にはギルドに入ってもらう。あの……古代大魔法使いウェスト・ロン・エリヴィンの子孫…ゼクター・ロン・エリヴィンの仕切る、英雄の涙 (ヴィールトゥレーネ)というギルドにね。」

「そこでゼクター・ロン・エリヴィンの監視の下、自分の成すべき事をやれ。仲間への連絡は許されない。以上だ、何か言う事は?」


 ジークは静かに自嘲気味に笑うとルーティとカインへ視線を移す。


「…グラッドブレイカーとして、2人とも世話になった。大罪人として……どうか争いの無い世を……頼んだぜ?グラッドブレイカーさん。」


 ニッと笑ったジークに、2人もつられて笑う。


「ふっ減らない口だな、お前は。さぁ、バッヂを寄越せ。」


 小さく笑みを浮かべたカインが静かに手を出す。それに頷くと、ジークは首元のバッヂを丁寧に外した。小さく光るバッヂがカインの手に置かれる。そしてルーティが前に出た。


「…グラッドブレイカーとして…今までありがとう。そして友として……あまり責任を1人で負わない事。民は貴方を大罪人として見るかもしれない、けれど…救われた民もいる。貴方の事を理解してくれている人も居るから。」


 ただでさえ恐れられていたジークを野放しにしない為に、グラッドブレイカーに入れたのが始まりだった。が、そんな人間が国を滅ぼす事に大きく関わったとなると恐怖を抱く国民も少なくはなく、各地で波乱が起きてもおかしくはなかったのだ。それ程まで今の世界は不安定だった。それを抑える為の選択…それが、ジークが全ての責任を負い大罪人としてグラッドブレイカーを辞め、支持も実力も兼ね備えた人物の監視下に置かれる事、そうするしかなかったのだ。


「…俺は今まで復讐に囚われていた。復讐を果たして漸く気が付いたんだ、俺が今までしてきた事を。この力が、多くの人の命を踏み台にして手に入れた物だという事を。だから俺は…葬いの旅をしたい。そして今度は…表舞台で国民の為になる事を、胸を張ってしたいと思ってるよ。だから俺の事が公表された時は…笑って受け入れてくれよ。」


 数日後、ジークはウラノスの北にある大きなギルドへ静かに、誰にも知られずに運ばれていった。


 大きく堂々と聳え立つ英雄の涙 (ヴィールトゥレーネ)のギルドの前に立ち、ジークは心躍らせた。殺し屋に入った事は後悔していなかったが、今までの行いが良いものでない事は分かっていた。殺し屋とは裏の世界だったから。逆に、ギルドとは表の世界にあるものなのだ。人を殺すような依頼はまずなかった。この表の世界で、多くの民の助けを聞き、胸を張ってそれをこなせるのだ。ジークはギルドの扉に手を掛けた。キィ、という高い音が鳴り、その扉が開かれる。目の前には長身でタレ目、そして肩にかかる明るい赤茶色の髪の男がニッと笑って立っていた。その男の後ろは酒場のようで、皆が飲み食いし、賑わっている。


「来たな、ジーク・カルロス。俺ぁゼクター。英雄の涙 (ヴィールトゥレーネ)のマスターやってんだ。ま、監視っつっても俺ぁお前を縛り付けるつもりなんてねぇ。俺ぁ面倒臭ぇ事が嫌いなんだ。やりたい事ぁお前に任すさ。けど俺に手間掛けさせやがったらそん時ゃ知らねぇぞ?そんだけだ、分かんねぇ事ぁ他に聞け、俺には聞くな、いいな!!んじゃあな。」


 ゼクターの軽い台詞が一方的に発せられたと思ったらゼクターはジークに背を向け、ギルドの奥へと歩いていく。ギルドは変わらず賑わいを見せている。と、突然ゼクターが立ち止まり先程とは一変、真剣な表情で静かにジークに歩み寄った。


「ここには色んなもん抱えた奴らが集まってる。親を喰った奴が居れば元々ディクタティア兵だった奴も、不老不死だって奴も居る。人間と魔物の血が混ざった奴も居る。悪魔に憑かれた事がある奴も、お前のような罪を背負った奴も……な。勿論全てがそうという訳じゃねぇが、ここはそんな奴らの居場所なんだ。だから…お前はお前らしく行け。」


 ゼクターからの言葉にジークは小さな笑みを浮かべた。


「おいてめぇらぁ!!新人だぁ!!よろしくやってくれよぉ?」


 その掛け声と共に、皆の歓声がギルド中を包み込んだ。その様子に、ジークは満面の笑みを浮かべ、ギルドへと…ジークにとって新しい世界へと、足を踏み入れた。


 ー待ってろよみんな…!俺は絶対にまたみんなの前に行くからな…!ー


 閉じた瞼に浮かぶのは、かつて共に戦った仲間達の姿だった。

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