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BR∃AK∃R〜ブレイカー〜  作者: 笑夢
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cord.24 奇襲とその後

「大変!!進軍を開始してる!!方角的に狙いは…!!ここウラノスかその西、クリスタロス!!カイン!今すぐ3国に連絡を!!」

「了解!なんだってこんな…!2日目の夜に!!」


 カインはすぐにテレパスで3国に連絡をまわす。


「3国の王達!よく聞け!今ディクタティアから大きな魔力反応が西に向かって動いて来ている!!ウラノスとクリスタロスは戦闘をいつでも開始出来るよう戦闘配置につけ!チャカは当初の軍を2つに分け至急ウラノスとクリスタロスへ!!!」



「なん……だと…!?このタイミングか!?」


 カインからの連絡に屋敷にいた5人は慌てふためく。すぐに軍の指揮官とエレメンツ、ジークを会議室に集める。緊張した面持ちでセフィラが立ち上がる。


「皆さん、お、落ち着いて聞いて下さい!たった今ディクタティアの進軍が始まりました!当初の予定通りとはいきませんが、只今より戦闘を開始します!まず、敵が何処へ攻め入るかまだ分かっていません!な、ので、優先すべきは…!我が国の要、この都を、必ず守る事!その戦闘配置について下さい!次に、ウラノスへ敵が襲撃に行った場合は、すぐに援軍に向かいます!その用意も忘れずに!あとあと…!す、少しでも皆が、無事で帰って来れるよう…!私達も、尽力を尽くすので…!!」


 額に汗を滲ませ手をブルブルと震わせる。その様子を見ていられなくなったミトが立ち上がろうとするのをジークが抑える。そして手を挙げて立ち上がる。


「今の指示通りだ!またすぐにグラッド・ブレイカーからの連絡が入る。臨機応変に動くように!またエレメンツと俺が各軍に就く。よろしく頼む。」


 ジークの言葉に指揮官達は気合の入った声を上げる。セフィラはジークに深く頭を下げた。


「流石だよジーク、完全復活だな。」


 会議室を出て早足で軍基地へ向かう。ミトの言葉に、完治したジークはウインクをしてみせる。そんな時、また頭の中にカインの声が響く。


「皆聞け!ウラノスのすぐ北東の海岸でディクタティア軍は止まった!!中には先日の鎧の男も居るかもしれない!注意するように!チャカとクリスタロスはすぐにウラノスへ援軍を!チャカのウラノス陣営はウラノス軍と合流後戦闘配置に、チャカのクリスタロス陣営はクリスタロス軍と合流後すぐにウラノスへ!俺とルーティはその場の犠牲者の治癒に専念する!以上!!」


 早口のその声には焦りが伺えた。


「…時間が惜しい…俺が全軍移動させよう。各軍にみんなは就いてくれ。」


 ジークがそう言うとエレメンツの4人は大きく頷いた。

 ジークが出陣する軍を全てウラノスに運び終わった頃、中央大陸の北東では戦闘が始まっていた。


「やっと来たか屑!!今ここはこんな状況だ!奴ら本気でここを落としに来てるぞ!」


 負傷者の手当てをしているカインがジークを見るなり冷たい言葉を言い放つ。


「んなの見れば分かる!どっちが優勢だ!」

「…今は同盟軍の方が微妙に劣勢だろうな……!チャカの軍が到達すれば状況はまだ変わる余地はある。すぐそこまで来ている事は確かなんだがな。」


 ジークは了解、と短く返すとその場を後にし、戦場へ向かった。


「ジーク!良いところに!こっちの軍は水冷軍、火炎軍の被害が大きい!あの鎧の男は居ない!敵の量が尋常じゃないんだ!!」

「だろうな…!見れば分かる…!戦える奴は付いて来い!!!」


 ジークが先陣を切って駆け抜けて行く。その後ろをミトとその軍が付いて行く。ジークは大剣を召喚するとみるみるディクタティア兵を倒して行く。


「暗黒魔法…!!閃光魔法…!!」


 大剣へ様々な波動を纏わせ駆け抜ける。大剣をディクタティア兵の腹に鎧の上から突き刺すと、今度は槍を召喚して尚も止まる事なく突き進む。


「雷電魔法!!はぁぁ!!地重魔法!」


 ディクタティア兵を切り捨てながら、ジークは密かに心を躍らせた。


 ーあぁ、ようやく果たせるのかー


 口元が僅かに上がる。長年憎み続けた相手を薙ぎ払う。ジークの身体に快感が駆け巡った。


「ひゅ〜やるなぁジーク!俺らも負けてらんねぇぞ!俺とレイルに続け!!」


 ジークの戦う姿を見て、皆の士気が上がるのをセフィラは感じていた。争いが嫌いなセフィラだけは、ディクタティア兵を殺す事が出来ていなかった。水冷魔法を使い、眠らせていたのだ。


「…ごめんなさい…!貴方方に罪はないのに…!」


 ディクタティア兵を次々に薙ぎ払うジークを見てギュッと目を瞑る。尚もジークは突き進む。暗闇の中には燃え上がる炎と閃光魔法の光、松明の火、そして掛け声が響き渡る。そんな時、チャカの旗が揺らめくのが微かに見えた。


「ようやくチャカも合流出来たか!これで…形成逆転、かな!突風魔法!!」


 ミトは片手に銃、片手に短剣を持ちジークを後方から援護しつつ、横から攻めてくるディクタティア兵に攻撃をする。


 ー絶対に…許さない!ー


「うおぉぉ!!!!」



 辺りは薄暗くなっている。炎の燃える音だけが辺りを包んでいた。


「他に我が軍の負傷者は居ませんか!?」


 戦闘が終わりかけた頃からセフィラはずっと後方へ戻り、同盟軍の治療に当たっていた。朝日が昇る中皆が重いため息をついていた。


「……戦況は今回攻めてきたディクタティア軍はほぼ全滅。同盟軍は三分の一の損害かな…。」


 朝日を眺めるジークの横へ、ミトがゆっくりと歩み寄る。朝日に照らされ、浴びた返り血がより赤く染まる。


「…お疲れ様、ジーク。」


 そんなミトを見てジークは静かに目を閉じた。


「………俺……。」


 泣きそうな顔をして口を開くジーク。


「…楽しかったんだ………。あいつらを…殺す事が…。殺し屋に居た頃でも…感じた事が無かったのに……。」


 そして俯くジークの肩に、ミトは優しく手を置いた。


「…無理しなくても良いんだ、ジーク。」

「…悪い…少し、1人にさせてくれ。」


 ミトは静かに笑うとジークの前を去った。


「…最低……だよな。」


 その声は鼻先を流れる風に静かに攫われて行く。大きく伸びをし、深く深呼吸をする。


「…戻るか。」


 自嘲気味に笑うと先ほどミトが歩いて行った方を見る。落ち着けと自分に言い聞かせ、踏み出す。敵の奇襲からここまでの被害で済んだ事、寧ろ良かったと言うべきである事は理解しているつもりだった。

 ジークが戻った頃、セフィラとウラノス、チャカの王は全軍を前に指示を出していた。


「ではこのままディクタティアへ攻め入る、それで良いのですな。」

「私に異論はありません。皆も少しでも何かあれば言ってください。」

「僕らがもう少し早く着けたら…すまないね。これからの進軍は僕らが先頭に立とう。」


 そして声を揃え天を見上げる。


『さぁ!いざ出陣!!』

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