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BR∃AK∃R〜ブレイカー〜  作者: 笑夢
23/40

cord.22 戦争と同盟

「ったく弱小国家が何を粋がって……。」


そうぶつくさ呟いて会議室へ最後に現れたのはアルコン・ディクタティアであった。あれから1時間後、各国の王とその側近が集まった。アルコン・ディクタティアはあの鎧の人物、そして領土にした北の国、クロウカシスの権力者だった者、フィン・ロウタール・ヴィクトを1人連れていた。その様子にエレメンツとグラッドブレイカーは息を飲んだ。そんな中、セフィラが静かに立ち上がる。


「…この度はお集まり頂き感謝申し上げます。この度は、我がクリスタロスの開戦を宣言いたします。相手は独裁国家ディクタティア、お心当たりは御座いましょう?」


そう言ったセフィラから目をそらし、アルコン・ディクタティアは小さく舌打ちをする。


「貴国の非道な仕打ち、このまま見逃す訳にはいきません。他国の皆様にはお話しいたしましょう。先刻、そこにいらっしゃるディクタティア兵が我が国の結界を破り侵入。その後我が国民1人殺害。その場にいた私を含むエレメンツ4人に軽傷を負わせ逃亡。以上の出来事から、我がクリスタロスは貴国へ戦争の開始を宣言いたします。」


そんなセフィラの言葉に、鎧の男は小さく手を振ってみせる。


「所詮弱小国家…いつ攻められようが何も変わらん。勝手にやれば良い。そして後悔するのだな。」

「まぁまぁ国王様、お言葉が過ぎますよ。」


アルコン・ディクタティアと鎧の男は周りを気にする素振りを見せず会話をする。


「…クリスタロスの姫よ、この際だから僕からも言わせて頂こう。正直ここ最近のディクタティアの行動は目に余る。頭を悩ませていたのだ。そしてこの場に居る其方、その白銀の髪はクロウカシスのヴィクト家の者だとお見受け致します。捉えた者をよくもまぁこの場に連れてきたものだ。」


南の大陸、眠らぬ国チャカの若い王が冷たい目でアルコン・ディクタティアを睨む。するとアルコン・ディクタティアは大きなため息を付いて立ち上がる。


「…あぁ…こんな下らない話し合いに参加している暇などないのだよわしは。話なら此奴らに聞かせる。それで良いだろう。わしは今すぐ帰るわ。攻め入るも攻め入らないも自由にせ。全てを塵と化してやるわ。」


そう言って高笑いをする。鎧の男が国まで送ると声をかけるがアルコン・ディクタティアはその言葉を無視し、部屋から出て行った。


「……はぁ、参ったな。流石はアルコンだ。言葉も出ん。まぁいい、宣言は快諾されたのだ。話のある奴は続けろ。」


カインは呆れ気味にそう言った。すると政治の中心国、ウラノスの王が頭を掻きながら言う。


「わしも正直恐ろしくて仕方ないのですよ。我が国は世界の中心に位置する。帝都からもそう離れていないので防御柵をいつまでも外せません。貿易も自由に出来ないので悩んでいたのです。しかし我が国は政治の中心国、無闇に歴史に名を残す真似はこの国の名誉に関わるのですよ。……クリスタロスの軍へ、我が国の兵を千出す事は出来ますがな。」

「ならば僕の国からは2千出そう。軍事力第2の国と言えど、クリスタロスとディクタティアの戦争である以上、僕の国の兵をこれ以上は出せないけどな。」


そんな両国の発言にセフィラは深く頭を下げた。


「本当に……!ご迷惑お掛けします…!我が国はこれより2万の兵を進軍させます。そこで帝国の力を削ぎ落とし、私達エレメンツと、ここにいるジーク・カルロスが進行を開始します。そしてこれは侵略戦争ではありません。これより革命を起こします。誰もが安心して暮らせる世を作る為、私は全力を惜しまない。」


その真剣な目に、言葉に、王達は呆気に取られる。そんな時、ルーティが手を挙げた。


「…3国で同盟を組んだらどう?そうしたら住民らの不信感も解消されるから兵も待機兵以外出せるんじゃない?まぁそれは2カ国の同意が必要だけど…。」

「それは…私からお願いは出来ません…。」


俯くセフィラを両国の王は静かに見る。


「……ルーティ殿の言いたい事も分かりますがな…。確かに、ディクタティアは脅威ですが…ここで組んでウラノスの兵を死なせる訳にも…。」

「僕も同感だ。確かに絶好のチャンスかもしれない。が、それなりにこちらも深手を負う事になる。僕らが手を組もうが組まなかろうが進軍する事に変わりがないのに、それが分かっていて簡単に協力しようとは……言えないな。」


部屋中には嫌な空気が流れ出す。空気の重さにそれぞれが小さくため息をつく。セフィラは拳をグッと握りしめた。


「…私は革命を起こすと言いました。誰もが安心して暮らせる世を作る…それは、争いのない世を作る事。

この世を変えるという事です。私はディクタティアを解放した後、貴方方に戦争の禁止、兵の廃止を求めます。ディクタティアがなくなった後、いずれ啀み合うのは残りの3国になります。最初に目を付けられるのは傷を負った我が国でしょう。なので…私は…いいえ、我が国はいずれ戦争の禁止、兵の廃止、武器の所有の禁止を宣言します。」


そのセフィラの迫力に皆は驚きを露わにした。


「…驚いた。僕とあまり変わらない歳の姫がそこまで考えているのか。」


そんなチャカの王の言葉にディクタティアの鎧の男は声を上げて笑った。


「ハハ…!いや失礼。クリスタロスの姫の言っている事は間違ってはいないと言おう。だけど、それは脅迫まがいだ。僕らの国を滅ぼした後、そのままの勢いでチャカやウラノスを攻めないとは言えないんじゃないかな?」


その言葉にまた、部屋の空気が悪くなるのを感じる。ただ1人、ジークを覗いて。ジークは静かに鎧の男を見つめた。それに気が付いた鎧の男は先程と同じように小さく手を振った。ルーティの魔法でその言葉や気持ちが嘘か誠か調べる事は出来た。がセフィラはルーティにそれを頼もうとはしなかった。そしてまた、深く頭を下げた。


「…失礼しました。確かにその者の言う通りですね。忘れて下さい。」

「いや…はい、分かりました。確かに、鎧の者の言う通りではありますがな、良いでしょう。そこまで先を見据えているのであれば…確実に今ディクタティアを抑えねばなりませんな。」


ウラノスの王は笑顔でそう言うと、立ち上がりセフィラの元へ歩み寄る。そして握手を交わした。


「いやでも、ジーク・カルロス、貴方はグラッドブレイカーだ。その制約を破るつもりなのかい?」


その様子を見ていたチャカの王が静かに言う。ジークは小さく頭を下げて口を開く。まだ完全に癒えていない身体はそれだけでもギリギリと痛む。


「自分はグラッドブレイカーである以前に殺し屋だ。その殺し屋からの依頼なんだ。許されないというのなら、今すぐこのバッジを返そう。」


首元につけている小さなバッジを親指でトントンと叩いて言った。


「…ほう…お主はその意思を変えるつもりはないんですな。」


そんなウラノスの王の言葉にジークは大きく頷いた。


「……はぁ…分かった。僕も同盟を組もう。しかし出せる兵は1万5千だ。それでもいいかい?」

「……!あ…ありがとう…ございます…!!」

「ちょっと待った。悪いセフィラ。そこの鎧の男、お前は何故まだここに残る。」


ジークが真剣な表情でそうハッキリと告げた。


「…やぁジーク。その質問にはこう答えておこう。話を聞けと言われたからだよ。」

「じゃあ質問を変えよう。名は何だ。正体を明かせ。明かせないのであればすぐに去れ。ここから先はお前達に居られると厄介なんだ。」

「…名…かぁ…そうだね…。」


その瞬間、ミトがジークの名を叫んだ。すると鎧の男は両手を上げて首を振った。


「分かった。分かったよ。出て行くから落ち着いて、ミト・シェイム君。ここで出て行こうが行くまいが、僕らの勝利は目に見えているからね。」


そう言うと隣に俯いて座っていたフィンの後ろに回るとマントを靡かせる。瞬間突風が部屋中を駆け抜けた。その風に皆は目を瞑る。目を開いた時、そこには2人の姿はなかった。


「……気は済んだかジーク。ならば話を進めるぞ。3国の同盟を結ぶ、それで皆はいいんだな。」


不満気なジークを他所に、会議は進む。そして3国の握手が交わされる。


「ではここに、同盟のサインを。」


ルーティの指示の後、国王3人とエレメンツ、そしてグラッドブレイカーの3人がサインを済ます。


「…では、隊の準備をさせましょう。進軍は3日後の早朝、貴方方の軍は我がクリスタロスの軍へ合流後、ディクタティアへ……。そこで無理はしないで下さい。ディクタティアがどれ程の兵を隠しているか分からない以上、危険だと判断したらすぐに撤退を。絶対に、勝ちましょう。」



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