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BR∃AK∃R〜ブレイカー〜  作者: 笑夢
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cord.20 謎の男

「おや…こりゃ凄い魔力が動いたね。これは…方角的にはここに向かってるよ、カイン。」

「…いや…クリスタロスだろう。言うなれば、都コリエンテだな。今あそこにはエレメンツとジークが集まってるしな。戦争でも…仕掛ける気か?」

「まさか、いくらディクタティアでも開戦宣言すらしてないんだから…。」


 星の見える街ステルラの建物の一室では、ルーティが術式を広げていた。ルーティの隣に立ち、カインは術式を眺める。


「じゃ、コリエンテをもう少し調べてみるよ。」

「あぁ、任せる。」


 ルーティの展開する術式は世界でトップ。幼い頃から自分で術式を考え、新たな魔法を発見してきた。その魔法を扱う力も備え持つルーティはまさに魔法に愛される子であった。

 手を横に払い、術式をコリエンテ付近に絞り込む。


「なっ…!?おいおいルーティこりゃ冗談じゃねぇ…!」


 明らかになった殺気にカインは鳥肌が立つのを感じた。ルーティもまた、術式から目を離し天井を仰ぐ。とてつもない殺気を感じた。しかし予想通りその殺気はステルラを通り越した。そしてステルラの西、西の大陸にあるコリエンテの方角へ行く。


「…やっぱり…コリエンテの上空で止まったよ。何をする気なの……?」

「どうする、向かうか?何かあってからでは俺達の立場がないが…。」


 カインはそう言いながらも壁に寄りかかり腕を組む。

 戦争を始める時、今までは各国で開戦宣言が行われていた。立場上どの国にも肩入れが出来ない為、グラッドブレイカーはその度に集められていた。その開戦宣言が無い以上無闇に動く事も出来なかった。

 ルーティはまた術式をいじる。


「……カイン、これはどういう事か…分かる?」


 術式を指差してルーティは真剣な表情で言う。術式に浮かび上がった5つの赤い丸。


「まさか奴ら…やりあってるのか…!?」


 術式に駆け寄ってカインは言う。


「おいルーティ行くぞ!!術式を制御しろ!」


 ルーティは了解、と短く答えると術式を整理する。そして2人はコリエンテへ向けて急いで移動を始めた。と、すぐに殺気が自分達へ向かっている事に気が付く。すぐに2人は空中で止まる。遥か先から凄い速さで近づいてくる1つの影。


「…あいつか…!!」


 カインとルーティはその場で身構える。するとその殺気の人物はそのまま2人の間を飛び去る。


「なっ…!?貴様…!」


 振り返ったカインとルーティ。その人物はピタッと止まるとゆっくりと振り返る。そして優雅にお辞儀をして見せた。


「おっと失礼。危うく通り過ぎるところだったよ。改めて、やぁやぁこれはグラッドブレイカーの2人まで。今日は珍しい人達によく会うなぁ。あ、僕が会いに行ったんだっけ。まぁいいや。でも正直少し残念なんだよ。ディクタティアの華麗なる勝利が目標だったのに、これじゃあディクタティアの圧勝で終わりそうなんだ。君らは僕を楽しませてくれるの?」


 ぶわっと強力な魔力が溢れ出る。その魔力に2人は一瞬怯んだ。


「帝国は…こんな奴を隠してやがったのか…!」

「…はは、冗談だよ。ここで君ら2人を相手にするのは僕が不利だしなぁ。やるならクリスタロスを我が領土にしてから、かなぁ。それまではお預けだよ。じゃあねグラッドブレイカーの……あ、そうだ、君らに1つ聞きたいことがある。」


 そう言うとその人物からスッと魔力の放出が止む。そして鎧を着たその手を兜の下、顎の部分へ持って行き、考えるような素振りをする。


「…君らの目にジークはどう映る?」

「…あんた…ジークと何か関係あるの…?」

「関係、ねぇ…それは僕の質問に答えたら答えよう。」


 両手を広げて首を傾げる。その人を小馬鹿にしたような態度にカインは舌打ちをする。


「…仲間だよ、今はね。」


 そんなルーティの言葉に、カインは明らさまに嫌そうな顔をした。すると鎧の人物はそっか、と短く答える。そして兜の前を右の親指でクイと上げた。


「貴様…!目が…!いや…!その顔の刺青…!!!」


 その鎧の人物は両目に痛々しい傷跡を残し、そして顔の右側に炎のような刺青をしていた。


「強いて言うなら、ジークの兄、かなぁ。」


 そしてガシャ、と音を立てて兜を戻すと風を巻き上げ2人の前から去っていった。忘れる筈もなかった。あの刺青は、ジークの顔の左側にしてあるものと同じだった。


「っ…くそ!!行くぞルーティ!!」

「分かってる!状況整理は向かいながらするよ!」



 辿り着いたコリエンテの上空の結界には大きな穴が空いている。騒動の後で街の入り口に居るはずの兵士は居ない。元よりグラッドブレイカーである2人は顔パスではあるのだが。2人は無人の門を潜り抜けた。


「あいつは何者なの…?これは報告すべき?」

「…どう…だろうな…。言ってメリットがあるとも言えない…いや、その逆もまた然り、だがな。」


 先程の鎧の人物を思い出して2人は言う。報告義務はないが、世界の脅威になり得るあの人物をこのまま放っておく事も出来なかった。


「これは…あいつらと話して決めるか。」


 カインはそう小さく言うと街を見渡す。いつもは活気のある都は静まり返り、人の姿が見えない。


「…街自体には被害はないようだね…。」


 セフィラの屋敷へ向かいながらルーティはそんな言葉を口にした。そして屋敷の前の広場に入る。


「…血の匂いだな。」


 微かに匂う血の匂いに、カインはそう小さく言った。ルーティもそれには気が付いたようで、小さく頷いた。屋敷の入り口に目をやると、そこにはセフィラが立っていた。


「来ると、思っていました。どうぞお上がりください。エレメンツが集まっています。」


 屋敷の扉を開けて静かに言うセフィラに、2人は続いた。

 そして通された部屋。中には大きな机が中央に置かれている。席にはミト、リオン、レイルが腰をかけていた。

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