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BR∃AK∃R〜ブレイカー〜  作者: 笑夢
17/40

cord.16 立ち塞がる壁

「みんな!!!ジークが目を覚ました!!すぐ来てくれ!!」


 一週間、3人はセフィラの好意から屋敷でジークが目を覚ますのを待っていた。セフィラは毎日のようにジークの部屋へ顔を出し、治癒魔法をかけた。中々目を覚まさないジークに皆やきもきさせられていた。

 ジークが目を覚ましたのを確認すると、ミトは部屋を飛び出して屋敷の中にいるセフィラ、レイル、リオンを呼ぶ。3人が駆け付ける。するとジークは身体を起こし入り口を見ていた。


「ジーク・カルロスさん…!良かった…!あの後治癒魔法をかけたのですが…中々目を覚まさなくて一時はどうなる事かと…!」

「本当に…何と言ったら良いか…!すまなかった…!」


 ジークの周りに集まると2人は口を開く。その後ろから頭の後ろで手を組んでいるリオンが呟く。


「ケッ…!一週間もぐうたら寝てんじゃねぇよ…。」

「リオン!!そんな事を言うものではないぞ…!」

「まぁまぁみんな落ち着いて、今目を覚ましたばっかりなんだからさ。」


 レイルとリオンの言い合いをミトが冷静に止める。その様子を見ていたジークが口を開いた。


「みんな、迷惑かけたな。悪かった。それと……ありがとう。」


 そのジークの表情はとても穏やかだった。すかさずレイルが何かを言おうとするが、リオンが言わせてやれよ、と宥める。


「んで?ジーク・カルロスよ、俺は1つ聞きてぇ。その悪魔ってのは今どうなってんだよ?」


 リオンが一歩前に出ていつもの口調でそう聞く。部屋に一瞬沈黙が訪れる。


「…とりあえずさ、そのジーク・カルロスっての…やめてもらっていいか?みんな、ジークでいい。そんでもって…悪魔はいる、俺の中にな。けど今は大人しくしてるぜ?時々気持ち悪い感覚が身体の中に広がる。それは寝てる時も感じてたんだ。ま、でも大丈夫じゃね?後は俺がどうにかしなきゃいけねぇんだろ?そん時はまぁ…どうにかなるさ。」


 ははっと軽く笑うジークに、その場にいた全員が呆気にとられる。


「…ったく…こういう奴なんだよ、ジーク・カルロスって男はさ。」


 部屋に笑い声が響く。


「ところでジーク・カルロスさん…いえ、ジーク、お身体は?見る限り万全ではなさそうですね?魔力が安定しきっていないのは、悪魔の魔力が干渉しているせいでしょう。」


 部屋はまた静かになり、皆の表情もまた真剣な表情に変わる。


「…流石は高等治癒魔導師様ですね。言う通りだよ、実はこうしているのでやっとだ。かっこ悪いだろ?だけど俺は急がなくちゃいけない…ここで止まってはいけねぇんだ…!」


 布団をぎゅっとと握り締めてジークは言う。


「…気持ちは分かりました。けれど許可出来ません。このままだと不安定な魔力のせいで身体を壊しかねない。そして体調を崩し、精神が不安定になった所に悪魔が追い討ちをかけてくるでしょう。そうなった時、貴方は確実に自分の力で悪魔を抑えられると思いますか?」


 セフィラの厳しい言葉に皆は黙り込む。自分が今ギリギリの状態である事はジーク本人が1番分かっていた。だからといって、これ以上自分の為に時間を使いたくはなかった。


「…でも…!俺が…!仕事を任されてるんだ…!俺が、俺がディクタティアを滅ぼさないといけねぇんだよ…!ケジメつける為にも…!!!」


 その時、ミトの拳がジークの頬へ直撃。周りの3人は目を丸くした。


「自惚れるなよジーク…!俺達は相棒だろ…!何でも1人で抱え込むな!!」


 ジークは驚いた表情でミトを見つめる。ミトの瞳は涙が滲む。


「いっつもそうだ!!いつも!ジークは全て自分で背負いこんで!1人で泣いてる…!誰がそんな事頼んだんだ…!それで何が相棒だよ…!!」


 その言葉を聞いたジークは静かに俯く。布団を掴む手から力が抜ける事はない。


「少し…考えさせてくれ…。悪い…。」

「…みんな、お話があります。ここではジークの迷惑になりますから、出ましょう?」


 気を利かせてセフィラが3人に呼びかける。3人は促されて部屋を出て行く。

 1人になった部屋で天井を仰ぐ。そして大きなため息をついて、目を閉じた。


(…背負い込むな…か…。)

「そんなつもりはないんだけどな。」


 自嘲地味に呟く。ミトはジークが殺し屋に入って1年経った頃殺し屋へ入った。事故で両親を亡くし、当てもなく途方に暮れて放浪し、そして本部の前で倒れていたのだ。それをジークが発見しボスに知らせ、殺し屋で雇う事になったのだ。


「…そうだ…あの時もこんな青空だったんだ…。」


 ジークは1人、窓の先の空を見つめミトとの出会いを思い出していた。

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