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『te:tra』  作者: 坂江快斗
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〈episode39〉忍び寄る終わり


 話し終えた後、子供達と俺との間には重たい空気が流れた。


無理もない。

〈大戦〉がこの世界に残した爪痕は今もあちこちに残り、いかに凄惨だったかを物語る。この子達は〈大戦〉が起きる前に病で死亡し、〈大戦〉が終結した後に傀儡として生まれ変わった。何も知らなかった彼らにとって俺が話した真実は、まだ受け入れ難いものかもしれない。


だが、遅かれ早かれいずれは話そうと思っていたことだ。

100年経ってようやく、親友との約束を果たせたような気がした。

マーデイズもいつかは、この日が来ることを予感していたんだろう。

俺は窓から差し込む偽りの月を見て、己の使命を全うした親友の姿を思い浮かべた。


「・・・俺から話せることは以上だ。今日はもう休め」


真実と記憶の整理をしているのか、子供達はそれぞれを見つめあったり俺の事を見つめたり、落ち着かない様子だった。俺が立ち上がろうとしたとき、口を開いたのは、ラナだった。


「・・・お父様、お話してくれて・・・ありがとうございますね・・・」


苦しそうに言葉をひとつひとつ置きながら話すラナ。俺はもう1度ベッドの座り直し、ラナの頭を撫でる。


「いや、礼はいらんよ。ラナ・・・、お前はお母さんに守られているから。だから何も怖くないんだ。今日は、眠れそうか?」


ラナはゆっくり頷く。

ラナの手を握っていたルナと眼が合い、ルナの頭も撫でてやると彼女も嬉しそうに笑った。


「お父様もお辛い過去だったのですね・・・」


唯一の男の子であるドナが片膝をついて詫びるように言ったが、俺もすぐに彼と同じ眼線に腰を下ろし、まっすぐにその瞳を見つめた。


「皆、過去を背負って生きてきた。全てを失ったままなら俺は生きてなどいられなかった。けど、俺にはお前たちがいる。この100年を共に歩んでくれたお前達が。お前達はセレンが残してくれた希望なんだ」


そのあと、ドナの事を力強く抱きしめるとドナも俺の背中に手を回してくる。

男の抱擁が終わると、セナとマナとレナも「わたしもっ!」と近寄ってくる。

それぞれと抱擁を交わして、久しぶりに”家族”としての時間を過ごしたように思えた。


――やはり、エナを早急に探しに行かねばならん・・・。


アーフェンも子供達の事情を知っているにも拘らず、エナを拉致した。

彼女が何の目的で動いているのかは分からないが、

あちら側にいることは確かだろう。


しかし、問題がある。


俺が彼女に敵うのかどうかだ。


突然姿を眩ませるほど何か大きな企みがあり、俺の子供が必要になった。

俺はそう考える。この説が正しければ、俺がエナを探しに行き、

彼女と遭遇することになれば戦うことは必至だ。


だが、彼女は現世代の中で最強を誇る魔導師。

〈大戦〉でも、その能力は遺憾なく発揮され、多くの国と民を救った。


あちら側には〈器〉が存在し、戦力は未知数だ。


加えて、こちら側ではエミリアという男が不審な動きを見せている。


現存戦力を考えると、動きづらいのは確かだ。今、アーフェンやリロウスが見つけたという器と戦うのは正直、得策ではないように思う。


ラナの体も心配だ。いずれ訪れるその時までにエナには会わせてやりたい。


次から次へと起きる問題、変化する世界情勢。

迷っている時間はないのだが、迷ってしまうほど俺の勘や決断力は鈍っている。

迷えば迷うだけ状況は悪い方に流れていくと分かっていて、動き出せない。


まず、何から、片付けるべきなのか・・・。


「どうしましたか、お父様?」


逡巡しているとセナが逆に俺の頭を撫でていた。覗き込むように俺の眼を見る。


「なんでもないよ」


今はそう答えるしかできなかった。

偽りの月に雲がかかり始めていた。


その時、扉をノックする音が2回聞こえた。

扉は俺の応答を聞く前に開いた。


「エッフェンバルト、少しいいか?」


オリオンの表情は、暗がりでも分かるほど険しい表情だった。



*****



「〈ウェスト〉が調査隊を・・・?」


子供部屋を出た後、物見の役割を果たす城壁に移動し、

オリオンは壁にもたれかかった。腕を組み、入手した情報を明かした。


「ああ。各国に派遣しているらしい。〈ウェスト〉だけではない。〈ノウス〉も私がクーに注文した武器の生産とは別に動きがあるらしく、〈サウス〉は外壁の強化を始めた。〈イースト〉の情報だけまだ入ってこないのが気がかりではあるが・・・」


まるで、各国が戦いの準備をしているようだとオリオンは言った。

俺は彼女にエミリアという男の存在を報告する。彼女の表情はさらに険しくなる。


「そんな男が?」

「ああ。俺も〈ウェスト〉でセネと話し、裏で暗躍しているかもしれんと踏んだ」


懸念していた〈クリア・セントラル〉への強襲は無いようだが、各国への根回しを彼が行っているとすれば厄介な問題だ。


「今、どこにいるのか知っているのか?」

「分からん。最後に奴を見たのは〈イースト〉だったが、それ以降は・・・。調査隊を派遣しているということは〈ウェスト〉にいたことは間違いない。続いて、〈ノウス〉、〈サウス〉と各国に進入しているなら、今は〈イースト〉・・・?」


だが確実な情報がない以上、安易に動くことはできない。

相手が単独で動いているのなら尚更、撹乱されるような事があってはならない。


「しかし、一体何の目的で・・・。元々は〈イースト〉の傭兵だったと言ったな?なら、かなり長い時間を掛けて計画を遂行していたことになる」

「目的は単純に、各国の情勢を乱し争いを起こしたいんだろう。〈イースト〉に個人的な恨みがあるなら〈イースト〉だけを狙えばいい」

「仮にそんな大層な目的があったとして、ここまで1人でできると思うか?」


俺は首を横に振る。

城壁にもたれかかるオリオンの隣まで歩むと、城下の街・リンフィルを見渡しながら言った。


「出来る訳がない。下手をすれば進入した国のどれかで即刻、殺されている。だが、各国が”何か”に向けての準備をし始めたというなら奴はまだ生きていて、今もどこかにいるはず・・・」


オリオンと話しながら頭の中に散らばっていた欠片がひとつずつ繋がっていく。

なぜ、エミリアが殺されることなく暗躍することができたのか・・・


セネとの会話を思い出し、俺はひとつの答えに行き着く。

危険な思想を持つ者には絶対に知られてはいけない情報を奴は・・・。

その情報を知るものは俺たちだけだ。


またひとつ欠片が繋がる。

エミリアの行動は、1人でなら不可能だ。

ここまで俺たちに勘付かれないよう、用意周到に物事を運んでいる辺りかなり長い年月をかけた計画だと推測する。


エミリアの行動を可能にすることは簡単だ。

協力者もしくは、彼に指示を送る”黒幕”がいればいい・・・。

黒幕はエミリアを隠れ蓑にして、注意を引く。

頭の中で次々と、最悪のシナリオが組み上がっていく。



もし、エミリアに情報を教えている者が”黒幕”なら、

1人だけ条件に合う男が存在する。

その男は、俺やオリオン、さらには傀儡師たちが生まれる前からこの世界に存在する。世界中の情報が集まる〈クリア・セントラル〉は彼にとってまさにうってつけの場所だろう。あらゆる情報を元に、世界の壊し方を思いついた彼はまず〈クリア・セントラル〉から壊すことに決めた――。


「そうか・・・」


全ての欠片がひとつになり、フューリの嘲笑が脳裏に浮かんだ。



俺は城の一番高い所にある幽閉塔を見上げる。

オリオンもつられて、同じところを見ているようだ。



「なあ・・・。俺が〈ウェスト〉に向かい、オリオンが〈ノウス〉へ向かった後、

 城にいたのは、ウィズとウィードとフューリだったんだよな・・・?」


オリオンは俺が何を言いたいのか薄々分かっているらしい。

彼女の眼が鋭く塔を睨んでいた。


「そうだ。我々が帰ってくる前に彼女達をあちら側に向かわせた。だから、今あの場所に幽閉している」

「あの時俺が〈ウェスト〉に向かったのは、〈イースト〉での事件がキッカケだった。何かが裏にあると思い、君に〈ノウス〉へ向かうよう頼んだよな」

「覚えている。帰国した後、巨大な波動を感じてウィンディと共にあちら側に向かった」

「フューリは・・・、ウィザードの時代に連れて来られたんだよな?」

「そうらしい。ウィンディが言っていた。小さな子供でウィザードはフューリの事を嫌っていたと―――・・・」


ようやく全てを察したのか、言葉を途中で切ったオリオン。

彼女の鼓動の音が聞こえてきそうなほど、今日の夜は静かだった。



「・・・あいつは最初からウィザードを殺すつもりだったのか・・・」



俺たちが知らない歴史をあいつは知っている。

アーフェンがいなくなったのも、イルヴァナが死んだのも、ウィズとウィードをウィザードとして復活させ、あちら側の力に葬らせたのも、全てがフューリの思惑通りに進んでしまった結果なら、彼の計画はすでに最終段階に入っていると考えられる。


〈クリア・セントラル〉の戦力が半減し、その情報をエミリアを通じて流出させ、抑止力がなくなったと判断した危険因子は何を思うか。


ただでさえ、争いあうことを俺たちに抑圧されてきた世界だ。

噴火する直前のマグマのように、爆発寸前かもしれない。


エミリアによって流れた情報が起爆剤になったら・・・。



「俺たちは、もっと早くに気づくべきだった・・・」



――フューリは、この世界でもう1度〈大戦〉を起こそうとしている。



「オリオンっ!今すぐ、あの塔ごとフューリを―――」


瞬間、オリオンが弓矢を構える前にフューリが居るはずの塔が爆発した。


落ちてくる城壁を払いながら、塔を見上げる。土煙と爆煙で何も見えない。

まさか、逃げたのか・・・!?


逃がしてはいけない、と本能が呼びかけてくる。俺は足場を蹴り、塔まで一気に飛び上がった。下ではオリオンが弓矢を構えていつでも発射できるように待っている。


半壊した塔に着地して、名を叫んだ。


「フューリッ!!!」


相当な爆発だったのか、足場がボロボロと崩れていく。あまりここには長居できない。

徐々に晴れていく煙の中に、2つの影を見つけると、弱った声が聞こえた。


「・・・ふぅ・・・。穏やかじゃない・・・ねぇ・・・」


声の方向に近づくとフューリが左肩を押さえて壁にもたれかかっている。

床には大量に血が流れ、彼が流した血の海に突っ伏すように何者かが倒れている。死んでいるとすぐに分かった。


「おや。これはこれは、将軍。助けに来てくれたのかい?」


――何を言っているんだ、この男は。俺は思い切り殴りたい衝動に駆られる。

が、彼が押さえている左肩を見て、絶句した。


その先が、ない・・・。


左腕が引きちぎられたように無くなっていた。


「そんな風に見ないで頂きたいな。いくら奇襲を受けたとはいえ、こんな姿を晒すつもりはなかったけれど。幽閉されていて、オリオンから手錠も填められていてね。危なかったよ。でも、これくらいの傷はすぐに治るさ」


いつもと同じに飄々と言っているが、表情から痛みに必死に耐えているのがわかる。


しかし、これも奴の罠かもしれない。フューリを容易に信用してはいけないのだ。

どちらにしても、フューリは危険に変わりない。

俺は背中に背負った大斧を抜こうとした。


「将軍、トドメを刺すなら彼だろう?」


狼狽えた様子で俺を見る。いつも沈着冷静な男も、腕が吹き飛べば冷や汗をかくのか。そんなことを考えながら大斧を完全に抜いた。


「そいつはもう死んでおる。なあ、フューリ聞きたいことがあるんだが」

「・・・なにかな?エッフェンバルト・・・」


大斧を持つ手に力が入る。

何をしでかすか分からないから、一瞬たりとも油断はできない。


「お前の目的とは、なんだ?」

「目的?何のことかな?」

「とぼけるな。もう全てが繋がった」


両手で大斧を持ち上げ、いつでも振り下ろせる構えをとる。

フューリは臆せず、俺を睨んでいた。


「悪いけれど、本当に何のことか分からないよ。僕は〈主様〉の為に存在する器なんだ。それ以上でも以下でもない。君達魔導師との間に思考の違いがあることはわかっているつもりさ。僕は器。君達は魔導師。存在の定義が違うんだ。僕の存在そのものが何か癇に障るというのなら、大目に見てほしいのだけれど」


ぺちゃくちゃとよく喋る・・・。

やはり、こいつは何かを企んでいる。今もこうして俺を揺さぶろうと・・・。


その時、フューリの足が動き、倒れている男が仰向けになった。


「・・・はぁ?」

「彼がいきなり襲ってきたんだ。酷い話さ。僕が彼に何をしたというんだろうね」


死んでいる男の顔は、エミリアだった。


「どういう・・・ことだ・・・」

「知らないっていっているだろ?エッフェンバルト」


冷たく言った後、フューリの眼を見た。

充分に殺意が込められた眼だと、そう判断した。


「どの道、お前は―――」

「まあ、その判断が正しいと言えるかどうかは、もうすぐ分かるよ」


――エフ。


にやりと笑った。

俺のかつての愛称を呼んで。


振り下ろした大斧はフューリを真っ二つにした延長線で床を割り、塔が崩壊するまで猶予はない。

俺は斧を抜き取って、床を蹴り、脱出した。

間もなくフューリとエミリアの死体と共に、塔は崩れ落ちていった。



オリオンの元に着地すると何があったのか詳しく説明したが、やり遂げた感覚はない。諸悪の根源を排除しても尚、残る違和感。

フューリが最後に言った言葉を反芻する。


――『まあ、その判断が正しいと言えるかどうかは、もうすぐ分かるよ』


何か・・・。何かが、変だ・・・。


物音に気づいたのか、セナとマナとドナがやってきた。

他の子供たちはラナに付いてくれているらしい。


「何があったのですか、お父様」


セナが心配そうに俺を見上げる。


「少しな。もう終わった」


部屋に戻れ。そう言おうとした時、城外から俺を呼ぶ声が聞こえた。声がするほうに全員が注目する。


叫んでいたのは、クオーネだった。


「エフーー!!!どこにいるのだーっ!!!」


クオーネは足を引きずり、意識のない騎士を背負っていた。

疲労が限界に達したのか、クオーネは倒れた。


「クオーネ!」


俺やオリオンはかなりの高さから飛び降りる。子供達も続いてきた。

難なく着地して、クオーネを抱きかかえる。

意識のない騎士は死んでいた。


「クオーネ、どうした?なにがあった?」

「た、たすけて・・・」


弱っていく声。彼女の体から血が流れていることに気づいた。


「誰がやった!?」

「〈イースト〉の・・・兵士・・・だ・・・」

「〈イースト〉の・・・?」


強い風が吹くと同時にとてつもないほどの寒気を感じる。

さっきまで光り輝いていた偽りの月にはどんよりとした厚い雲がかかっていた。

次第に雲は夜空全体を覆った。


「〈イースト〉に向かった調査隊が・・・全員殺されたって情報が・・・。聞きつけた私はすぐに向かった。そしたら、途中で・・・」


――待ち伏せしていた〈イースト〉兵に奇襲にあった。

呼吸を乱しながらクオーネは言って、がくりと意識を失った。

空からは雨が落ちてくる。俺たちは城内へと移動した。



「〈イースト〉が攻撃を仕掛けるなんて」


オリオンはクオーネに治療を施す。かなり深手を負っている。


「事態が動き始めているな。元凶は葬ったが、まず〈イースト〉を止めなければ」

「私が行こう。お前はここに残ってくれ」

「だが・・・」


いいかけて気づく。今、動けるのは俺とオリオンだけしかいない。

〈主様〉が眠るこの城を抜け殻にすることはもってのほかだ。

加えて、オリオンはラナのことを想ったのだろう。

ラナの最期が近いことも知っているから、なるべく父親には傍に居てほしいと考えたのかもしれない。


「・・・分かった。ここには残る。となると〈イースト〉以外の3国も危うい。

〈ノウス〉のハーディは〈イースト〉から攻撃を受けたとなれば黙ってないだろう」

「他の国にも私が――」


「お父様、行かせてくださいっ!」


オリオンの言葉を遮るようにセナが叫んだ。

「俺も行きます!」「マナにも任せてっ!」


子供達の決意に俺は首を振る。


「ダメだ」

「この前は行かせてくれたじゃないですか!」


セナが懇願する。体の前で強く杖を握っている。


「以前と状況が違うだろ!危険なんだ!それに、前回はお前達3人揃っての行動だった。単独で各国に向かうなど許さん」


外の雨が強くなり、雷鳴が轟く。

マナが雷鳴に驚き、しゃがみこんだ。


「お前達は何もしなくていい。今、お前達にできることはラナの傍に居てやることだけだ」

「お父様・・・」


ドナの声から力が抜けて、俯いた。子供達が静かになるとオリオンの方に向き直る。クオーネの治療が終わったようだ。


「どうにか、〈イースト〉を押さえてくる。クオーネが目覚め次第、〈ウェスト〉に戻るよう伝えてくれ」

「もう、行くのか・・・?」

「当たり前だ。一刻の猶予もない。私達の行動と正しい選択が、未来を決める」


そういい残すと、オリオンは治療室を出て行った。


子供達は無念そうに下を向き、時折聞こえてくる雷鳴に体をびくっと震わせる。


雷雨が止んだら、フューリの死体を回収しに行こう。

そう思ったとき、俺が感じている”違和感”は、さらに膨らんでいる気がした。

あの死体、見間違うわけがない。あれは、エミリアだった。


だが、エミリアはなぜ、同士であるはずのフューリを襲ったりしたのか・・・。


・・・・・俺はまだ、何かを忘れていないか・・・・・?


*****


























「・・・全く、手荒なことをするなぁ。将軍は・・・」






俺は瓦礫を押しのけ、真っ二つになっている左腕のない方の体を持ち上げる。

額と額をあわせて、その体を自分の体内に戻した。

ゴキゴキと首を鳴らして、体が元通りになったことを確かめると、

雨を降らしている曇天を見上げた。



「僕は言ってあげたのに。死体にトドメを刺した方がいいよってね」



なぜなら俺は死体役の体に入っていたから。

まあ、勘のいい〈大戦〉の生き残り組だ。

そろそろ突き止められると思っていたけど、流石だね。すぐに殺しに来た。


自分の左腕を切り離して、ユーマの死体に似せて作ったのは我ながらいい判断だったと言える。

こんなことにも騙されるから、魔導師は低俗な生き物だ。


――頭の中は戦うことしか考えていない。


どうやら思いの外、早く事が進んでいるようだし。

少しの間、隠れさせてもらうよ。



「ユーマ、もうすぐ芽が出る。花が咲いてしまう前に、彼らをこちら側へ」


俺の言葉は、激しい雨と雷に掻き消された。

激しい雨が、血を洗い流してくれた。


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