表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『te:tra』  作者: 坂江快斗
36/100

第18話〈嵐禍ノ章〉「夜明けとともに彼女は目覚める」

藤咲学園文化祭 通称「藤咲祭」の前日。

時刻は午後23時を回った。


その時俺は体育館にいた。裁縫部室ではない。

体育館の入り口にいた俺を舞台上で照明の吊り上げをしている演劇部の大道具担当が大きな声で呼びつけてきた。「おーい、式瀬ー、手伝ってくれー」


何度目だ・・・と思いながらも俺は駆け出す。体育館の中には演劇部員と文化祭実行委員の生徒が合わせて20名ほどいた。

照明の吊り上げにはさほど時間は掛からなかった。一息ついていると今度は真反対から、つまり先ほどまでいた体育館の入り口付近から俺のご指名。「おーい、式瀬ー、こっちも手伝ってくれー」


何度目だ・・・と思いながらも俺は駆け出す。端から端への小移動。延々と続くシャトルランをやらされているようで気が滅入りだしてきた。体育館の入り口では装飾などの手伝いをした。人数は足りているように見えたが何人か休ませたいということで俺を呼んだらしい。俺は休ませてくれないのか・・・。

やがて入り口の装飾が終わり、一息つくと今度は携帯電話が鳴り出す。ディスプレイに表示された名前は円堂だった。とりあえず終話ボタンを連打しておいた。当然、そのまま鳴らないこともなく、すぐさま着信が入る。電源ごと切ろうかと思ったが他の連絡(栞菜とか鳴海とか)があるかもしれないのでそれはできない。仕方ない、出てやるか・・・。溜息ついでに通話ボタンを押した。


ツーツーツー…


俺は思わず携帯を床に叩きつけてしまいそうになったが、清掃したばかりの床が汚れる!という理由で却下された。俺の居場所は何処にあるのだろう…。


その後、3度目の着信で円堂と会話することに。その間、俺は演劇部の音響の手伝いもした。円堂からの要請は、夜食を買ってきてくれないか、とのことだった。


大事な用ではないらしかったので俺は今後しばらく円堂からの着信は無視することに決めた。メールも。

そしてまたすぐに俺を呼ぶ声が聞こえた・・・。


――3時間前――


「なあ、俺にもなんか手伝えることあるか?」


時刻は午後20時。その時俺はまだ裁縫部室にいることを許されていた。

修行のほうは、目立った進展もなく枝紡での裁縫は困難だったので結局、母さんに全任せすることに。枝紡はかなり悔しがっていた。そのせいで俺の部屋からCDも消えた。

そのような経緯もあり、相変わらず裁縫に関して全く持って戦力にならない俺は居心地の悪い中裁縫部に留まっていた。やることといえば、せいぜい屑の掃除か静かにしていることくらいだった。栞菜と鳴海の「話しかけんな」オーラは凄まじく、俺の裁縫部での立ち場を見失いそうになる。このときの枝紡からの慰めの言葉には嘲笑が混ざっていた。

ものすごい速さで作られていく衣装たち。栞菜が言うには「もういちいち呼び出して採寸している暇ないからとりあえず一気に作っちゃうわよ」との事なので俺はめっきりやることがない。文化祭前日だというのに暇だ・・・。今日はかなりの人数の生徒が学校に残り、徹夜で準備を行っている。俺も最終日くらいは、と思い今夜は泊り込みをすることにした。が、この体たらくだ。帰ろうかとも思ったが本来裁縫部ではない鳴海が徹夜覚悟、NO読書覚悟で手伝ってくれている。そんな姿を見た手前、俺は帰ることなんて出来なかった。


2人は俺が話しかけても何も言わず、ただ黙々と作業を進める。部室にはミシンの動作音が止まることなく鳴りつづける。

たまに聞こえるのは、失敗したときの舌打ちと口にするのも憚られる単語だった。

でも、俺は少しだけ安心もしている。栞菜にいつもの調子が戻ってきていたからだ。栞菜も栞菜なりにゆっくり一歩を踏み出しているのかもしれない、と思った。これからまた罵倒の日々が始まるかと思うと少し気が引けるけど・・・。


「よしっ、出来た!!」「わ、わたしも、できたですっ!」


2人は顔を見合わせたあと、両手でハイタッチした。ようやく緊張感から解放された・・・、そう思った矢先にまた沈黙&ミシンの動作音・・・。


あと、何着ですか・・・?と聞いてみたら、歯切れよく「4」とだけ返事が来た。一応、存在していることは認めてもらっているらしい。枝紡の爆笑に俺も釣られて爆笑しそうになるが意味不明な言動になるので我慢する。


再び、居づらさを感じたときに俺へ救いの手、いや声が聞こえてくる。

演劇部が舞台の仕込みを手伝ってくれる人間を探していたのだ。

地上から聞こえる声に俺はすぐさま反応。相手もそれに答えてくれて早く着てクレーという意味合いで手招きしてきた。俺は目下作業中の2人に「ちょっと行ってくるな!」とだけ伝えて部室を出て行くことに。


全く呼び止められなかったぜ・・・。


――そして、現在――


やること、多すぎんだろおおおおおっ!!!!!


俺の叫びは、演劇部の女子生徒の「式瀬君、そこ、邪魔」の一言で一蹴されました。

あの、俺、一応、病み上がりなんですけど・・・。



*****


時刻は午前0時を回った。いよいよ文化祭当日を迎えたわけである。

依然として活気にあふれる校内。深夜の学校とは思えないほどの熱気だった。

「藤咲祭」は藤咲市民はおろか、他県からの来訪者も多いので毎年準備に余念がない。今年は突貫工事もいいとこだった。だが、たった数日前まで文化祭実行どころか、学園内の雰囲気も真っ暗だったのだ。ここまで生徒たちの表情が明るくなったのもある意味文化祭のおかげなのだろう。

ふと、枝紡がここにいたらどんな風だっただろうかと考えた。けど、すぐさま枝紡に止められた。『式瀬くん、そーゆーのダメー』


一人、頭をかきながらすまん、といっていた俺を見て通り過ぎる生徒がいた。


俺が演劇部員たちと一休みしていると、見知った姿が近づいてくるのが見えた。

吉秀結美だった。普段は軍団(?)を引き連れているが、今回は一人で来たようだ。


「式瀬君、鳴海さんはどこにいるか分かる?」


俺は部室だ、と答えた。すると、いないのよ、と返答が来た。


「栞菜は居ただろ?」

「それが、矢薙沢さんもいないの。休憩だと思うけど、至急鳴海さんに渡しておきたいものがあって」


吉秀は4,5枚のプリントがクリップで留められた書類を持っていた。


「なんだそれ?」

「明日、じゃなくて、今日の文化祭の風紀委員会マニュアル。これだけの規模になると何時如何なる問題が起きるか分からないからね。鳴海さん、裁縫部で忙しいみたいだったから会議にも参加していなくて。忘れていたみたいだけどお咎めなしにするわ。で、このマニュアルに目を通しておいてほしいというわけ」


なるほど、と俺は呟いた。電話すればいいんじゃないか?と聞くと電源が切れていたらしい。鳴海ではなく吉秀の携帯がだ。


「んー、まあ俺は暇だし、」

ここで一瞬、演劇部の視線が鋭くなった。訂正しよう・・・。


「・・・まあ、俺は時間があるほうだから探しておくよ。俺に頼むって事は吉秀も忙しいんだろ?」


ええ、と彼女は頷いた。「すまないけど、頼むわね」


マニュアルを渡すと足早に帰っていく彼女。

文化祭で万が一、事故や事件が起きてしまったら・・・。

彼女はその重圧を一心に背負っているのだろうなと、その背中には感じた。



俺は部長である久志先輩に事情を話し、体育館を後にする。あとでゲネやるから見に来るか?と聞かれたが、本番を楽しみにしています、と言っておいた。ゲネとは、本番を想定したリハーサルのことらしい。


俺は校内を散策する。いつも昼間に通っているから思わないことだが、暗さで視界が狭くなると校内は広く感じた。ただでさえ広い校内だ。暗さと、生徒の行き来とでどこを探すべきか全く見当もつかない。

そうだ、と俺は思い出したように携帯を取り出す。


電源が切れていた・・・。


試しにダメもとで起動してみる。一瞬だけ起動したときに画面に表示された「着信898件」は、見間違いだろう。うん、深夜だしな・・・。


さて、携帯もダメとなると思いつくところを当たってみるしかない。

とりあえず裁縫部室に行ってみた。が、吉秀が言っていたとおりもぬけの殻だった。

衣装は残り一着を残している状態らしい。ラックには19着掛かっていた。

仮眠かと思い、直結している家庭準備室を覗いてみたがいなかった。


俺は部室をでて思い切って栞菜の名前を呼んで見る事に。何人かの生徒が振り向いただけで栞菜からの返事はない。・・・まあ当然か・・・。

続いて、鳴海の名前を呼ぶことに。


「なぁーるぅーみぃー」


また何人かの生徒が訝しげに見てくるだけだった。いったいどこに消えたんだ・・・。


ちなみに枝紡はぐっすり眠っている。


*****


俺が到着したのは屋台ゾーン。

各学年の料理自慢たちが腕を振るうこのゾーンは別名〈鉄人ゾーン〉とも言われている。なぜ鉄人なのかは定かじゃない。

もうすでに仕込が始まっていて、どこの店からもいい匂いが漂う。そういえば何も食べていない・・・。お腹の音がなった。


「腹、へったぁ・・・。なるみぃ、かんなぁ、出てこーぃ」

返事はない。俺が屍になりそうだった。


「まーるーーーー」俺は意図したつもりもなく鳴海の下の名前を呼んでいた。そしたら奇跡が起きた。


「せ、先輩!!その名前は大声にしないでほしいですっ!!」


居た。すぐ隣に居た。どんなステルス機能持ってんだ、と聞きたくなったが空腹で言葉にならない。


「おお、鳴海、腹減ったな」気がつけばそんなことを言っていた。

「先輩、何も食べてないです?」

「何も食べてないです・・・」


真似したわけじゃないが、鳴海はぷくっと頬を膨らませた。「わ、わたしの口癖までっ!」


なんとか意識を戻し、今まで何処にいたのか訪ねると栞菜といっしょに近くのファミレスに行っていたらしい。俺にも連絡したが何度かけても通話中だったのであきらめたという。円堂、ほんとぶっ飛ばす。


「ってか、まず俺、鳴海の番号知らねえしな・・・」

「そう・・・でしたね。わたしも知らなかったので連絡は栞菜さんがしてくれたです」


いい機会だったし、俺は連絡先の交換を提案してみる。鳴海はかなり速攻で頷いていた。メールアドレスは電源が入らないことには確認できないのでとりあえず俺の番号だけ伝えておいた。

意外と鳴海は携帯の操作が達者で、当たり前だが鳴海も今時の女子高生なのだなと思った。

俺の腹は鳴り続ける。さすがに空腹すぎて気持ち悪くなってきたので〈鉄人ロード〉から離れることに。


少し歩いていると、逆に全く人気のないところに出てしまった。

後ろのほうでは生徒たちが躍起になって走り回ったり、声を掛け合って準備している。


「く、暗いですね。なんだか、デー…じゃなくて肝試しみたいです」

「・・・確かに。出そうだな。何か」


そういいつつも歩みは止まらない。どんどん人の気配から遠ざかる。暗いとはいえ同じ学園内だと思えないほど静かになった。いや、まあ、これが時間帯としては正常なのだが。


ッ!!

風が吹き、空き缶が転がる。その音に鳴海は驚き、俺の左腕に抱きついた。


「あっえっと、ごごごごめんなさいですっ!!」

「いや、いいよ、大丈夫。気にすんな」


俺のほうがびっくりしたに違いない。動揺しているのが自分でも分かった。


「そそそういえば、栞菜は?」

「せっかくだし、息抜きに校内回るって言ってたです」


あと一着ですので、と彼女は付け加えた。


その後、俺と鳴海は本の話をしたり、学校での話をしたりしながら2人きりで歩いた。さっきまでシカトを貫き通されていたので会話が出来ることは嬉しかった。

俺は吉秀から渡されていたマニュアルのことを思い出し、説明とともに鳴海に渡した。彼女はありがとうございますと言い、礼儀正しくお辞儀をした。


「そういえば、何で鳴海は風紀委員会に?」

ふとした疑問。偏見じゃないが、鳴海みたいなタイプが風紀委員会にいるのが不思議だった。


「成り行きもあるですけど、一番の理由はかっこいいと思ったからです」

「かっこいい?」


俺は足を止めた。一歩進んだところで鳴海も足を止めて振り返った。


「はいです。吉秀さんもかっこいいですが、前会長の米倉先輩もかっこよかったです。女の子が学園の風紀を正す姿が凛々しく見えたです。それでわたしもあんな風になれたらなぁと思って、手を挙げたです。成り行きというのは他に風紀委員になりたい生徒がいなかったからということです」


鳴海の話を聞きながら俺は確信したことがあった。

鳴海は自分の夢や、憧れ、好きなものの事を話すとき、ものすごく輝いて見えるのだ。キラキラしている。他の誰にもない純粋さが出ているのだろう、と思った。


「なんか、鳴海らしい理由だな」言った後に、俺は笑った。

「な、なんで笑うです!?」少し、ムッとして鳴海が言った。

すぐに鳴海も笑顔になった。


俺たちはまた歩き出した。校舎の裏手側にある武道場にたどり着いたとき、時計を見ると午前2時を回っていた。少し、冷えてきていた。


「そろそろ戻るか。寒いし、栞菜も待たせてるかもだし」

「そうですね、戻ってラストスパートです」


そう言って、校舎に向かって歩き出す。すると背後から物音。がさがさと人の気配。言うまでもなく鳴海は俺にしがみついている。内心、俺も誰かにしがみつきたい。


一瞬の緊張感。静寂を切り裂いたのは、


「にゃ~~~」


猫の間抜けな鳴き声だった。なんだ、猫か、と安心した。


が、次の瞬間!!

着地の音と共に俺と鳴海の目の前に「ひょっとこ」が現れた。


「どじょう、すくうぜ~~~~~!!!!!」


意味不明な言葉を最後に、俺と鳴海の意識が途絶えた。と、思う。



*****


――裁縫部部室、午前2時30分――


栞菜は爆笑している。もう「いつもの栞菜だぁ」と、安心しない。しないったらしない。腹を抱えて笑っているその頭には「ひょっとこ」のお面。

地域伝統研究会からもらったらしい。なんでもあるな、この学園。


「いやあ、もうあんたたち、仲良さそーにデートしてたから驚かそうと思ってさ!」

一言言うとまた笑い出した。鳴海は顔を真っ赤にしながら悔いている。


「あっ、ちなみに猫も動物生態研究会から借りてきたの。名前はマックス」

心底どーでも言い情報だった。


「あんたたちの驚いた顔っ!今度カメ会に瞬時に撮影できる小型カメラを発注しておこうかな!」

カメ会とは、カメラ愛好会の略である。ちなみに盗撮まがいのことをして全員謹慎中である。腕は確からしい。


「2人とも気絶しちゃうから運ぶの大変だったんだからね!」

「ひとつ聞くが、俺を運んだのは・・・?」

恐らく鳴海は栞菜が運んだのだろう。


「円堂くんよ」


ほんと、あいつ・・・っ。

あの野郎めええええええっ!!!!


夜空の中に円堂のドヤ顔がきらりと光って見えたがリロウスに頼んで記憶から消し飛ばしてもらうことにする。


「いいじゃない!助けてくれたんだし!親友だからさ!って言ってたわよ」

言い終わりで栞菜がぷぷっと吹き出した。もうすっかり元気じゃねえか・・・。


「ほらっ!ラスト一着!!大物になるわよ!さっさと作って仮眠するよ!」


ひとしきり俺と鳴海を笑った後、栞菜はミシンが置かれた机に向かう。どうやら最後は魔王が着る衣装のようだ。設定画を見ただけで俺なら半世紀以上掛かりそうだなと思った。


「よし、最後、がんばるですっ!栞菜先輩!」

「ええ!やるわよ、まるちゃん!!」


おおーっ!と2人だけの世界で拳を掲げる。

俺という存在は円堂とともに星屑になったみたいだ。なんともやるせない。

ここは2人に任せて、俺はまた体育館へ向かうことに。


舞台セットの仕込みも大詰め。こちらはこちらで気合入れるぞ、おおーっ!と拳を掲げた。俺は居場所を見つけた気がして、目頭が熱くなった。


子一時間、作業をして舞台は無事完成した。演劇部員たちは気絶したように倒れ眠っていた。久志先輩だけが部員たちの眠る姿を見て、静かに一息ついたのを俺だけが知っている。


部室に帰ると、俺もその立場になった。2人とも机に突っ伏して眠っていた。ラックには掛からないサイズの魔王衣装は壁に掛けられ、2人の努力が垣間見えた。全20着、完成したのだった。俺は何もしてないが・・・。


安堵した様子で寝息を立てる2人。窓が開いていた。そこから入ってくる風は先ほどよりも冷たくて俺は音を立てないように窓を閉めた。そして、準備室からブランケットを2枚持ってきて2人の背中にかけてやった。起こすのは申し訳ないと思い、そうすることにした。このブランケットは枝紡が以前、「絶対役に立つときが来るから常備してたほうがいいよ!」といって置いていた物だ。


なんだかんだで、枝紡も力になれたんじゃないかな。


俺は大あくびをしたあと、ひとり準備室で仮眠を取ることに。

俺が目を閉じて数秒、夢の入り口まで後一歩のところで起こされる。


「おい、寝るな、式瀬。夜はまだこれからじゃないか!!生徒会の仕事が残っているんだ。あと、夜食も買ってきてくれないか」


大声を出すわけにもいかず、俺は円堂のわき腹を小突きながら小さな声で、ぶっ飛ばすと連呼した。



*****



――夜明け――


「んーー。よくねたぁ!朝陽が眩しいっ。おはよう、まるちゃんっ!」

「ん・・・。おはようございます栞菜先輩・・・。ふわぁぁ」

「まだ眠そうだね!なんなら寝てていいよ!あたし、これからお風呂入って演劇部に向かうから」

「じゃ、じゃあ、お言葉に甘えてあと少しだけ寝るです・・・。すみません・・・」

「いいよ、いいよ!」


気にしないで、そういえばリク、どこいったんだろ・・・。

おぼろげに聞こえる栞菜先輩の声。次第に遠くなっていく。

わたしの意識が段々眠りに落ちていく。



そこには『誰か』がいた。

わたしはその後ろ姿を見ていた。

風が強く吹いている。

その時、じっと佇む『誰か』が振り向いた。

その顔は、眼鏡を外した、わたし自身だった。



*****


――同刻、某所 上空――



「とーうちゃーっく!!!!」

「眩しい、あれが、本物」

「くんくん・・・、においも変だねー!これがにんげんの住む場所かー!」

「ウィズ、早速、任務を」

「わあああ!あれ!!なにあれ!!!ねえ、ウィードっ!あれ見に行こうよっ!!」

「・・・。任務、優先」

「わかってるよーっ!でもその前にせっかく来たんだからみていこうよ!!ねっ!」

「・・・・・・」

「おねがぁい・・・」

「・・・少しだけ、なら」

「わあいっ!やったー!!!おいら、いちばんのり~~!!」


「・・・母上、必ず、帰ります」



to next story is...

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ