〈episode12〉私が守る。アタシが守る。
レイティアの傀儡の中は、とても暖かかった。
夢の中にいるような、ふわふわした気持ちになる。
出会ったばかりの時の事を、思い出した。
あの時は、本当に無我夢中だったんだよな。
名前も知らない、言ってしまえばどーでもいいような奴だったのに。
気がつけば、助けてた。なんとなく、アタシが守んなきゃって思ってた。
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いつも公園にいる女の子。
周りの子から〈公園の化け物〉と呼ばれていたあの子の事をなぜだか放ってはおけなかった。かわいそうだから、とか、助けてあげたい、とかそういう気持ちではなく、一心に、子供ながらにあの子とお話がしたかった。
あの子は、私とは正反対でいて、私にはない〈強さ〉を持っている。
心の強さだ。その芯に私は惹かれていたのかもしれない。殴られるかもしれないと思いながら、それでもいいかなんて考えて話しかけると、殴られることなんてなくて声が聞けた。ほら、やっぱり優しい子なんだ。だから、私が守ろうって思った。
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アタシはこの傀儡で戦うことを恐れていないつもりだった。現に元の体はボロボロで一刻の猶予も無い。サンドロとの約束も破ってしまった。それでもアタシはレイティアの体で戦うと決めた。サンドロが言っていた〈エゴ〉とやらもアタシにはある。レイティアの傀儡に入った瞬間、様々な記憶が張り巡らされて、レイティアを感じると、ほんの少し、レイティアが戻ってきたと嬉しくなった。
だからこそ、この戦いで死ぬわけにはいかない。
アタシは、レイティアと生きていくんだ。その為なら、この世界を破壊したって構わない。レイティアが守ろうとした世界を守る為にも。
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イルヴァナを感じた。ような気がした。
彼女の匂い、温もり、強さが私に流れ込んでくる。
でも、この〈私〉は作られた〈私〉。
父、サンドロによって集められた破片を元に。ならば今のこの意識は、残留思念みたいなものか。今はそれでもいいか。イルヴァナを〈止める為〉には。
イルヴァナが考えていることは私にも聞こえる。
違うんだよ、イルヴァナ。
私、本当はね…
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奴の拳が顔面を抉る。
レイティアの体、しかも顔に傷をつけやがった。許せない、許せないっ!!!
奴にも味あわせてやる。失うことの、つらみや悲しみを。
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イルヴァナ、私はさ…。
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奴らの力が一段と増して強くなり、アタシの、いやレイティアの体を燃やしていく。
やめろやめろやめろやめろっ!!
これはアタシが守るべき体なんだ、守りたいものなんだ!!
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イルヴァナ、私、
イルヴァナにもう、全部を背負わせたくないんだ。
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全力を使おうとしたとき。
レイティアの、声が聞こえた。
どうしてなのか、わからなかった。
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楽になってほしい。
世界を恨まずに、運命を呪わずに、
本当は弱虫のイルヴァナでいて、ほしい。
あの頃の、私たちに、もどりたいよ。
もう、たたかわないで。
わたしがあなたをまもるから。
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レイティア、こんなところにいたのか。
うん。
あたし、まけちゃったよ。
うん。
なにも、まもれなかったんだ。
ううん。
これからどうなんのかな。
ずっとおはなし、してようよ。
それも、いいかもしれないな。
うん。
イルヴァナ
レイティア
『『あいしてる』』
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「イルヴァナ、君の死は決して無駄ではないよ。時は動きだし、世界は廻りだした。君が始まりを、そして僕が終わりを。この物語にピリオドを打つよ。ま、君は敵討ちなんていらないようだしね」
俺はイルヴァナの大剣をあの公園が見下ろせる丘の大地に突き刺した。
その刃に夕暮れが反射する。
「さて、次は、ウィズとウィード、か」




