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『te:tra』  作者: 坂江快斗
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〈episode6〉傀儡師が生まれた日 後編

「人形を作り、それに魂を移植すればよいのでは?」


ルシアの残した言葉をヒントに提案したのはマーデイズだった。

そうすることにより、朽ちていく体を放棄し新たな体に宿ることが出来る。言うなれば限りなく不死に近い状態を得ることが出来るというものだった。

マーデイズの提案にしばし考え込む面々。しかしだな、と口を動かしたのは調査班班長のトレバート。「魂の移植はどうする?人形の原料は?」


「それは今から考えましょう。私はただ現段階における最善に近い解決案を述べただけです」


4人は二手に分かれ、マーデイズ提案の解決策の研究に身を投じることになった。

人形の制作をマーデイズとクエイが、魂の移植をトレバートとサンドロが担当することに。

どちらも未開の研究。ましてや魂の入れ物を作るというのだ。何度も実験は失敗する。その度に、作り上げた人形は脆く崩壊し〈朽体病〉患者の魂は消滅を繰り返した。原因を突き止めなければいけなかった。


トレバートとサンドロは魂の拠り所が必要なのではと考える。

その頃マーデイズとクエイが作っていたのは森から集めてきた木材を組み立てて人体に似せて作った人形だった。形も歪で仮に魂が移植できてもこの体が自由自在に動くとは思えない出来だった。


何が一番「魂を惹き付けるのか」


どうすれば肉体と同じものを制作できるのか。


彼らは、とある実験に踏み込むことに。

人形自体に「意思」を埋め込む事。

所謂、心を備え付けるという物だった。いや、心のまがい物というべきか。

方法は人形に魔力を注いで自立できるように調整を行うというもの。トレバートは患者の魂を抜き取り、すぐさま人形へと移すと、人形が発光しだし、姿が変わり始め、ついには患者の元の姿へと変貌した。実験自体は成功だった。が、患者はその翌日に死亡した。またしても人形が崩壊してしまう。定着の理論はもうすぐ完成だったが、頼みの人形が壊れてしまっては定着しても意味がない。それでは〈朽体病〉と何ら変わりがないから。

考えてみれば簡単な話だ。膨大な魔力を閉じ込めておける容量と強度が必要だということは。


マーデイズとクエイは材料から見直し、出来る限り人体と同じ素材を集めるとともに、コーティング剤として鋼鉄を用意した。単純な考えだったがこの世界にある材料で考えた結果が鋼鉄だった。ただの組み立てられた木材ではなく、構造も人体を模した。皮膚には鋼鉄を用いてコーティングに成功する。デザインにも拘り、試作品はルシアに似せて作り上げた。


「これが最後の実験としよう」


サンドロが言った。5人で〈朽体病〉の調査を始めてから2年が経過。

その間にルシアが死に、人形を作ることになった。その為に沢山の犠牲者が出た。

次の実験が成功なら、この世界は救われる。

失敗なら、全てが終わる。

このルシアの人形に全てが掛かっていると言う訳だ。


「最後に、もう一つ大切なことを付け加えたい」

トレバートはそう言うと、朽体病患者に囁く。「この人形に対し、・・・・と言え」


3人は何と言ったのか聞こえていなかった。患者の体は一歩踏み出すごとに体の欠片がバリバリと崩れ落ち、一刻の猶予も無いようだ。

4人が見守る中、患者は寝たままの人形に傍により、おでこ同士をくっつける。

すると、くっつけた部分が光り出し、同時に患者の体も輝きを放つ。人形は本当に意思を持っているように光を帯びていく。

風さえも巻き起こっていた。患者は先ほどトレバートに囁かれた言葉をついに発言する。


『愛してる』


その瞬間。

爆風が4人を吹き飛ばし、研究所は半壊。土煙が舞う中で4人は立ち上がりお互いの無事を確認し合う。4人とも悟った。今回も失敗だった。つまりは・・・

最悪の事態を考えたとき、視界を覆っていた土煙が晴れていく。するとそこには紛れもなく〈人〉が立っていた。

患者の元の体は衝撃で木端微塵であったため、そこに立っている者が何なのか理解するのに時間は要さなかった。


「こ、これが…わたしの・・・あたらしい、からだ・・・」


新しい手足を何度も見ながら動きを確認する患者。鋼鉄でコーティングしたにも関わらず肌の色は人体のそれと変わりない。


「せ、成功ってことか・・・?」

クエイが見渡しながら呟く。

「いや、しばらく経過を見なければ」

と、トレバートが神妙な面持ちで答えた。


*****


それから5年。

〈朽体病〉の患者が減ることは無かったが、犠牲者は格段に減少した。

例のルシア型の人形に転生した患者は生き続け、後遺症は見られなかった。それを確認して4人は人形作りを本格的に始めた。

途中、クエイが何気なく言った「人形というよりも傀儡に近いですね」という言葉から4人は『傀儡師』と名乗るようになり、魔導師にとっての唯一の病を克服させてみせた。

彼らの元には傀儡師を目指す若者が訪ねてきて、精製スピードも格段に上がる。

傀儡師を目指す若者たちは大半が〈朽体病〉で家族や、友を、恋人を失った者たちであった。トレバートは彼らに向けてこう言い放つ。



「愛する者を失った若者たちよ。君らは傀儡に愛の言葉を捧げられるかい?」



*****


その後、魔導師の世界には兵器としての傀儡が溢れることになることを

彼らは知らなかった。

知る由なんてなかった。


彼らは、命を守る為に傀儡を生み出したのだから。

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