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顔がない女「8」


閉鎖された病院の中でさ迷うように歩く

二人は、奇妙な胸騒ぎを感じずにいられなかった。

病院の窓と扉の向こうは、コンクリートの壁だった…

屋上で見る光景は、この場所は現実なのか幻か分からなくなっていた。

まだ、夢を見ているような感覚に異様な光景を眺めていた…

病院の建物以外は、黒い世界が広がっていて

星の輝きのない空には、月だけが輝いていた…


「助手君…俺は、夢を見ているのだろうか…」


槇は、そういうと両手で頬を叩きながら異様な光景を見ていた。


「槇さん、あれは?」


屋上の手すりの下に花束らしきものがあった。


「………」


槇は、無言のまま歩き始める

俺は、その花束を見ると枯れた薔薇が置かれていた。


「助手君、この場所に居ても何も情報も進展もしないだろうから三階の院長室に行ってみないか?」


「あっ…はい!」


俺は、槇の背中を見ながら歩き始める

槇は、何かを疑問を感じる表情をしていた。


「助手君、この病院の事を茜先輩に聞いたかい?」


「いいえ…何かあるんですか?この病院?」


「顔がない女…」


「顔がない女?槇さんどうしました?」


「顔がない女は、茜先輩の後輩で…俺の元婚約者だった人かもしれない」


「えっ?!」


「もう昔の事だから…それに忘れたい過去だったかもしれない…」


槇は、そう言うと昔の話をしてくれた。

茜と槇が、初めて会い二人で事件の捜査をした事件と悲しい出来事を…


人は、悲しみと別れを繰り返しながら生きる

誰もが、知らない悲劇の始まるのきっかけ

歩み続ける事で知っていくのかもしれない

生きていく為の仕組みを…歩みか方を…

言葉は、いつしか色褪せて力を無くして心に伝わる前に消えていく想い


全ては、あの事件から始まったのかもしれない…


俺は、婚約者の瑞季(みずき)とすれ違いの生活をしていた。

些細な事から喧嘩もしたのかもしれない

自分自身の心は疲れていたのかもしれない…

日々の疲れから瑞季との生活は、だんだんと冷めたものになったのかもしれない

会話もありがちな挨拶にも似た単調なものばかりだった。

いつしか、遠ざかるように家にも帰らず

瑞季と逢う事も避けていた。

仕事を専念の日々の中で見えるものは、欲望と絶望と罪

昔憧れた世界は、とても雑で複雑なもので…とても普通の世界だと思えない出来事ばかりだった。


瑞季は、俺と茜が居る事に疑問をぶつけるようになった。

瑞季には仕事だからと…そう説得していた。

それは、全てを狂わす事になると思わなかった。

瑞季は、だんだんと狂うように俺に問いかける質問に答える事ができずに居た。

瑞季と俺は、無言の時を過ごす事が多くなっていた。


俺と茜は、同期の新人の警察官で、若手の新人の殺人課の刑事になったばかりで…

とある殺人事件の犯人を捕まえる事に専念をしていた…。

全てを捨てて全てを失うような日々

俺は、上司の指示に忠実に従う生活だった

そんな生活をしていた時に瑞季とすれ違う

瑞季からすれば、笑顔のないままの会話ばかりの日々に言葉にできない想いを抱えていたのかもしれない

俺と茜が他愛ない会話をして笑い合いながら

車の窓越しに見える瑞季は、こちらを睨み付ける姿を見てから

すぐに、その場所に戻り瑞季の姿を探すけど瑞季の姿はなかった。

俺は、茜に婚約者の瑞季の事を話し

茜の提案で、一度だけ3人で食事をした。

俺は、瑞季の不安な気持ちや誤解を抱かないようにする為だったが…

それが、瑞季の中にある心の闇を表の世界へ解き放つ事になったのかもしれない


瑞季は、だんだんと精神を病んでくる

そして…茜を憎しみの対象にするようになったのかもしれない


やがて歪んでいく世界は、俺には耐えられなくなったのかもしれない

瑞季の元から去る事で、瑞季の人生を自由にしてあげる為に

新しい未来を見つけて幸せになってもらいたかったけど…


でも…全ては裏目になった…

瑞季は、自殺をした…

彼女は、おそらく小さな幸せを欲しかったのかもしれない

ただ一つの愛だけを他の愛よりも


一つの愛だけを求めていた…。




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