顔のない女 編 「1」
人には、それぞれの悩みコンプレックスがある
求めても手に入らないものを求めるように
鏡を見る度に、その願望は増していくのかもしれない
現代病なのかもしれない
憧れは、毒にもなるし薬にもなるのだけど…
人が持つ 嫉妬のような願望は、死を誘う麻薬みたいなものかもしれない
満たされない願望は、人の人生を崩壊さてしまうのかもしれない
光と影が交差する世界に漂うものは、魂なのか想いか思念…怨念なのだろうか
憧れから生まれる感情は、どんな物語を造り導いていくのか誰も分からない
結末が光なのか闇なのかも…。
俺と茜は、マンションのドアの前に立ちながら
辺りを見回してみると閑静な住宅が広がっていた。
都会の独特な空気が漂う世界
空は、まるで6月だけど真夏みたいに太陽が輝き暑さを感じていた。
孝平と如月は、後から合流する予定で、俺と茜は、三鷹ゆいが住むマンションのドアの前で、茜は、スマートフォン片手に如月と話をしていた。
「了解!そっちもお願いね!今から三鷹さんに話を聞いてみるわ」
そう言うと茜は、呼び出し音を鳴らすと
「陽くん、交渉なら私が得意だから私に任せて、とりあえず、取材メモ宜しく!」
「はっ…はい!茜さん!」
茜と俺は、しばらく三鷹が出てくるのを待っていた。
「やっぱり、夕美ちゃんが居ないから警戒してるのかしら…」
茜は、玄関のドアノブを回すと少し開く
「あれま…鍵かかってない?!」
「茜さん、勝手に入ったらダメですよ!」
「分かってるって…陽くん…私、大人よ!そんな子供みたいな事しないわよ」
そう言うと玄関のドアを開けて入っていく
「言ってる事とやってる事違いますよ…茜さん」
「もしかしたら、何かの事情で出れないかもしれないじゃない?一応安全確認してくるから待ってて」
「それもそうですね。分かりました。」
俺は、茜が玄関の奥に入っていくのを見送り玄関が閉まると
玄関の扉の横に上木鉢に一本の枯れた薔薇が刺さっていた。
何か不自然なものを見るように、それを見ながらポケットからデジカメを取りだし
枯れた薔薇を撮り
何気なく閑静な住宅が並ぶ
ごく普通の景色を撮るとしばらく茜が出てくるのを待つ
約10分ぐらいの時間が過ぎていた。
「遅いな…もしかしたら三鷹さんと話が盛り上がって俺の存在を忘れているかもしれないな…」
そう呟くと…激しくマンションの階段を駆け上がる音が聞こえてくる
すると30代のスーツ姿の男性が、こちらに向かってくる
ポケットから白いゴム手袋を取り出していた。
俺は、無言のまま…その男性を見ていたら
三鷹さんの部屋の呼び出し鈴を押すと俺を見ると頭の先から足の先まで睨むように見てから
「あんた誰?」
「俺ですか?俺は…」
「私の助手よ!槇くん!」
茜は、玄関を開けて
そう言うと、俺を見る男性は軽く微笑み茜を見た。
「茜先輩の助手なんて運が悪い青年だ…」
「失礼な…それは、どうゆう意味かしら?」
「あの茜さん…この人は?」
「ベテラン怪奇殺人科の警察の人よ」
「茜さんの冗談とヘンテコ突っ込み懐かしいものですね。」
「あらあら、お誉めの言葉だと受け止めておくわ…でっ、お仲間いつ来るの?」
「三時間ぐらいしたらですかね…」
「ふ~ん、訳あり物件ってやつかしら」
「まぁ、権力と金がある奴の支配する世界ですからね。」
「こんな所で、長話ししていたら人目につくから二人とも中へ入って!陽くんには、かなりキツい体験になるかもしれないけど…」
「一体何が…」
「とりあえず、中に入ってから話しをしましょう」
「はい…」