【 突然の電話 】
新章突入 七塚先輩の謎が語られる
空っぽの部屋はとても寂しく、誰も迎えてくれる事はない。
今までの僕なら当たり前、これが当たり前だったんだ。
翌朝、僕は珍しく寝坊してしまい部屋の時計が標す時刻は八時を回ろうとしていた。
時間を確認した僕はベッドから飛び起き急いで仕度をしていると携帯電話の着信が鳴り出す。
プルルルル
(なんだよ…… こんな時に)
そう思いながらも携帯電話のディスプレイを確認した僕の目に映った名前は『九条先輩』
こんな朝早くに電話を掛けてくるなんとどうしたのかと思ったが、その前に電話番号を教えた等という覚えがない。そんな事を思いつつも僕は電話に出ると
「はい、もしもし」
「あっ! 涼君?」
寝起きの僕は少しだるそうな声で
「……なんですか?」
「なに? いま起きたの?」
「うっ……」
否定することの出来ない九条先輩の台詞に僕は返す言葉が浮かんでこない
すると、電話越しの九条先輩は呆れた様に溜息吐きながら言う
「はぁ、涼君は七塚が居ないと何も出来ないのね」
「そ、そんなことないですよ!」
「まったく」
「そんなことをわざわざ言う為に電話してきたんですか?」
僕は不機嫌に言い返すと、九条先輩は何か思い出した様に
「あぁ、そうだったわ。七塚、学校に来てたわよ?」
「……えっ?」
九条先輩は何ともあっさりと言った。僕も唐突に言われて頭の整理がつかない。
嬉しい筈なのに次の言葉が中々浮かんでこないでいた。
「どうしたの?」
「えっ? いや、なんでもないです。七塚先輩、学校に来ていたんですか?」
僕はもう一度確認する様に聞き返すと九条先輩は口篭らせながら
「まぁ、学校に来ていたと言ってもね……」
「なんですか?」
「あぁ~ えぇ~っとね。あれよ」
「だからなんですか?」
九条先輩は、何故か言いずらそうにしていた
「転校するらしいわよ」
「……えっ? いま、なんて?」
「だから、転校するかもよってこと」
まさかの答えだった
「……なんで?」
「わ、わからないわよ! ただ、担任と七塚の会話で『転校』って言う言葉が聴こえただけだし、本当かどうかもわからないんだから」
「そうですか…… でも、どうして僕に?」
「べ、べつに涼君の為に言ったわけじゃないんだからね!」
「は、はぁ……」
「それじゃぁね、遅刻するんじゃないわよ?」
そう言い残し九条先輩は電話を切る
どこから考えていいのか、頭の整理がつかず返す言葉すら出てこなかった
(でも、七塚先輩はなにも……)
もし、本当に『転校』だとしたらどうして七塚先輩は僕に何も言ってくれなかったのだろう?
そして、いま七塚先輩は何を考えているのだろうか?
「とりあえず、学校に行ってみよう。そして、七塚先輩に聞こう」