【 迷い子猫と僕 】
まったく、どうしてこうなったのやら。
あれから、七塚先輩は珍しく昼休みになっても姿を現すことはなかった。
一体、何処で何をしているのか、今度は何を考えているのか、それは分からないが、恐らくは『とっておき』というやつだろう。七塚先輩が言う『とっておき』は僕にとってみれば何の期待感も湧かない訳で、むしろ不安でしょうがない。
そんな事を思いつつも昼食を終えた僕は校内をブラブラと歩いていると、視線の先には猫耳を連想させるような可愛いピンクのリボンを着けた女の子が「はぅ~」と困った様に呟きながら、辺りをキョロキョロとしていた。その姿はまるで親猫を探して迷っている子猫の様だ。
下級生だろうか?見た目は、ランドセルを着せてもまだ似合いそうな幼い感じで肌の白さが肩まで伸びる髪の淡い蒼さを際立たせている。
僕は気になり女の子に近づくと
「どうしたの?」
「にゃぅ!す、すみません!」
突然に背後から声をかけられビックリしたのか、条件反射なのか女の子は僕の方へ振り向き頭を下げ謝ってきた。別に声をかけただけなんだけれども……
「ごめん。それで、何をしていたの?」
「教室……」
「教室?」
「小鳥の教室はどこ?」
「……はぃ?」
「なんだか、迷ったみたいなのです」
「……」
「小鳥、方向音痴だからよくあるのですよ」
(そんな真顔で言うことですかね?と言うか、いくら方向音痴でも学校内くらいは……)
「……新入生?」
「違うもん。天宮小鳥、二年生だよ」
「へ?」
これは何かの聞き間違いだろうか
「先輩……ですか?」
「キミ、一年生?」
「はい。一年の桐崎涼です」
「なんだぁ、キミが噂の桐崎君?」
「は?」
「だって、七ちゃんのペットなんだよね?」
その言葉に一瞬、僕の思考は停止してしまう
「……それって七塚先輩のことですか?」
「やっぱりそうなんだぁ~」
「ち、違いますよ!なんでそうなっているんですか!?」
「違うの?」
「違います!」
えぇ~と、これはどういうことでしょうか
まぁ、間違ってもいないのですけれど何でそんなに残念そうな顔をするんですかね?
どうやら僕の知らないところで、おかしな噂が立っているみたいだ。いや、しかし白昼堂々とあんな事をしているが、普通はそんな関係だなんて思いもしないはずだけど……
まさか、七塚先輩か?
「それでどこなの?」
いや、だから……
「えぇ~と、二年の教室でしたらアッチですけど……」
そう言うと天宮先輩は僕の指差した方へと視線を向けると
「わかった。ありがとぉ!」
「……なんだったんだろ?」
天宮先輩は一言『またね♪』と言い残すと去っていく。
元気は良いみたいなんだけど、色々とズレている気がする。大体、一年も学校に通っていて自分の教室にすら辿り着けなくなるって……
(学園内で迷子になるなんて聞いた事ないよ……)
本当にこの学園の先輩達は変わり者ばかりなのだろうか?
まぁ、七塚先輩ほど変わった人は居ないだろうけど――