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【 変わる日常 】

 何だか最近、僕の生活スタイルが変わりつつある。

 ひょんな事から七塚先輩と一緒に寝るということになってしまったわけなのだが、まったくどこまでも身勝手な人だ。僕の意見など全然聞こうともしないし、挙句の果てには首輪まで着けられてしまった。

 正気じゃないよ、本当に。

 当の七塚先輩だが、相変わらず寝起きが悪いようで僕に抱きついたまま夢の中。

 それ以前に、この寝る時に抱きついてくると言う癖はどうにかならないのだろうか。


(僕は、七塚先輩の抱き枕ですか?)


 まったく、おかげで僕は毎度毎度なかなか寝付けないわけで落ち着いているのは七塚先輩だけだ。

 本当に困ったものだ。


「七塚先輩、朝です。起きてください」

「うぅ~ん…… まだ……」

「まだって、遅刻しますよ?」

「……まだまだ、あるんだからね……」

 目を瞑ったまま言う七塚先輩の顔は、どこか楽しそうであった

「……寝言? それにしても、どんな夢ですか?」


(と言うか、まだあるって…… なに? 凄い気になるのですが)


「んぅ? あ、桐崎君おはよう。早いのね」

「え、えぇ…… おはようございます」


 言えない。

 七塚先輩に抱きつかれていたから眠れませんでした。などとは言えもしない。

 最も、言ったところで何も改善されるわけもないだろうけれど。


「それより、遅刻しますよ?」


 僕の言葉にも七塚先輩は決して焦るということはなく、むしろ平然としていた。

 そして、僕に視線を送り返すと


「いいじゃない、別に遅刻しても」

「はぃ?」

「どのみち、今から言っても間に合うわよ」

 七塚先輩は相変わらず毅然きぜんとした態度で物言う

「それは、そうですが……」


 確かに七塚先輩の言う通り、今からアパートを出たとしても授業には十分と間に合うわけで、ただ僕が言いたかったのは七塚先輩がなかなか起きてくれなかったから、このままだと遅刻してしまうのではないか?と言うことなのだ。

 どうやら、七塚先輩は僕の考えなど元よりわかっていた様で全てお見通しだったみたいだ。

 僕は仕度をしようと洗面所まで行き鏡の前に立つと我に返る。

 首元に着けられた首輪の存在、先日に着けられたことを僕はすっかりと忘れていた


「えぇ~と……」


 これはどうしたものか。

 これから学校へ、アパートの外に出ると言うのに僕はこの様な姿を公衆の面前に晒すことになるのだろうか?

 悩む僕の元へ歩み寄る七塚先輩の足音


「どうしたの?」

「えぇ~とですね…… これは、どうすれば?」

 僕は首輪を指差しながら七塚先輩に訴える

「あぁ、それね。外してもいいわよ」

「えっ? 本当ですか?」

「なに? 着けていたいの? 私としては全然構わないけれど」

「いやいや! 外します! むしろ外させてください!」


 正直、僕は七塚先輩が素直に僕の意見を聞き入れてくれたことに驚いていた。

 その素直さが逆に怖いとも感じる僕であるが、少なくとも今は助かったと思いたい。


◇◇ ◇◇ 


 それから、僕と七塚先輩はアパートを出て学校へと向う。

 何だろう、凄く外の空気が久し振りに感じる。

 少しの間、ベッドに縛り付けられた様に貼り付け状態となり半ば監禁生活をしてきたからだろう。

 挙句の果てには、あんな扱いだ……

 最近の僕は、まともな食生活をしていない様な気もしてきた。

 苦い思い出も募るばかりだが、そんなことを思いながら登校路の住宅街を二人で歩いていると、七塚先輩は突然に何かを思い出したかの様に足を止める


「どうしたんですか?」

「忘れ物をしたみたいだわ」

「忘れ物ですか? なら、取りに行きましょうか? まだ、間に合うと思いますし」

「ちょっと行ってくるから、桐崎君はここで待っていること。わかった?」

「……は、はい」 


 それだけ言い残すと七塚先輩はアパートへと戻って行く。

 別に僕が取りに行っても良かったのだけれど。むしろ、いつもの七塚先輩なら『忘れ物しちゃったみたい。だから桐崎君、ちょっと取りに行って来てくれる?』とか平気で言いそうなんだけれど、まさか自分から行くなんて……


(何だろう、とてつもなく嫌な予感しかしない……)


 まさか、僕に知られてはマズイものなんだろうか?七塚先輩の秘密とか?


(……そんな事はないか)


 まぁどうせ、僕にとっての災難でしかない事なんだろうけれど。

 『ここで待っていなさい』と言われた僕ではあるが、当然の如く不吉な考えしか思い浮かばないわけで。

この空白の時間がとても長く感じてしまう

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