卒業
春の空はやけに高く、校舎の屋根が少し遠く見えた。
ついに、卒業の日がやってきた。
式は静かに進んでいく。
先生の話はいつもより少し長くて、でもどこか優しかった。
これからのこと。未来のこと。
背中を押すような言葉が、教室にゆっくりと落ちていく。
やがて名前が呼ばれ、一人ずつ前に出る。
卒業証書を受け取るその一瞬だけ、世界が少しだけ重くなる。
――そして、すべてが終わった。
最後の言葉も終わり、ざわめきが広がる中、俺たちは校舎を出た。
外に出た瞬間、現実が待っていた。
校門の前にはスーツ姿のスカウトマンたち。
まるで獲物を待つ狩人みたいに並んでいる。
「卒業おめでとうございます!ぜひうちの学校へ!十分なリソースを――」
一人が俺に声をかけてくる。
迷いは、もうない。
「すいません。お断りします」
まっすぐ目を見て、はっきりと言う。
「卒業後のことは、もう決めているので」
一瞬だけ空気が止まる。
けれど、それ以上何も言わせず、その場を離れた。
少し歩いた先で、二人の姿を見つける。
「2人とも、卒業おめでとう」
「あぁ、お前もな」
剣河が軽く手を上げる。
「えぇ、貴方もおめでとう」
雷華も、いつも通りの調子で微笑む。
「ありがとう、2人とも」
短い言葉。でも、それで十分だった。
少しの沈黙のあと、俺は口を開く。
「なぁ、2人とも」
風が一瞬だけ強く吹いた。
「俺の目的は、一刻も早く強くなって、困ってる人を少しでも減らすことだ」
言葉を噛みしめるように続ける。
「そのために、いずれは組織を作りたいと思ってる」
二人の目を見る。
「だから、危険でもダンジョンに入る。強くなるために」
そして、もう一度。
「改めて言うよ」
ほんの少しだけ、息を吸う。
「――俺と一緒に来てくれるか?」
間髪入れずに、声が返ってくる。
「あぁ、当たり前だ!!」
剣河が笑う。
「えぇ、もちろん」
雷華も迷いなく頷く。
胸の奥が、じんわりと熱くなる。
「ありがとう」
静かに、でも確かに言う。
「俺は明日、探索協会に行って冒険者登録する」
二人を見る。
「2人はどうする?」
「なら俺も一緒に行くよ」
剣河が即答する。
「私も」
雷華も続く。
思わず、少し笑ってしまう。
「じゃあ、明日だな」
そう言って、その日はそれぞれの帰路についた




