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ダンジョンがありふれる世界で最強の固有能力に目覚め組織を作ったら助けた子供の愛が重いんだけど  作者: アルプス


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運命の起点2

――ココネ視点――


私は、何も持っていなかった。


勉強もできない。友達もいない。

ただ一つあったのは、両親だけだった。


それだけでよかった。

それだけで、生きていけた。


――なのに。


ある日、家に知らない大人たちが入ってきた。


目の前で、両親が殺された。


声も出なかった。

体も動かなかった。


何も、できなかった。


そのあと、私は殴られた。何度も、何度も。

でも、殺されなかった。


どうしてかは分からない。

ただ、じわじわと痛めつけられて、どこかへ連れて行かれて――


そこから先の記憶は、ない。


きっと、売られるはずだったんだと思う。


でも。


気づいたら、痛みがなかった。


傷も、消えていた。


目の前には、一人の人がいた。


私の話を聞いてくれた。

一緒に怒ってくれた。


その時、初めて思った。


――あったかい。


ずっと冷たかった世界に、急に火が灯ったみたいだった。


だから。


もっと知りたいと思った。


この人のことを。


そして、私のことも知ってほしいと思った。


離れたくない。


一緒にいたい。


ずっと、ずっと。


(……いたい)


その想いは、静かに、でも確実に大きくなっていく。


胸の奥に絡みついて、離れない。


もっと。もっと。もっと。


――私は、この人のそばにいたい。


気づけば、自分の中に――

それまでなかった“大きな欲”が生まれていた。



――氷輪 彗聖視点――


警察が到着した頃には、すでに話は通っていた。


鴉野さんが先に説明していたらしく、手続きは驚くほどスムーズに進んだ。

凍らせた男たちはそのまま連行されていく。


(……終わったな)


いや、“始まった”のかもしれない。


ココネを連れて家に戻る。


玄関を開けると、母親が出迎えた。


「この子が……」


「ああ。頼む」


短いやり取りで、すべてが通じる。


ココネを母親に任せ、彗聖は自分の部屋へ戻った。


ドアを閉める。


静寂。


ベッドに腰を下ろし、天井を見上げる。


(……決めた)


もう迷いはなかった。


「俺は、学校には行かない」


言葉にすることで、決意が形になる。


「冒険者になる」


理由は一つ。


あの光景を、これ以上増やさないため。


助けを求める声に、届く力を持つため。


そして――


「強くなる」


誰よりも、圧倒的に。


そのための道は、もう決まっていた。


――翌日。


彗聖は二人を呼び出した。


「なぁ、雷華、剣河」


少しだけ間を置く。


「俺の目的は決まった」


二人の視線が向く。


「卒業後、俺は冒険者になる」


静かに、だがはっきりと告げる。


「昨日、瀕死の女の子を助けた。……ああいうのを、少しでも減らしたい」


拳を軽く握る。


「そのために、一刻でも早く強くなる」


そして、二人を見る。


「できれば一緒に来てほしい。でも、決めるのはお前たちだ」


言葉が落ちる。


沈黙。


少しの間、二人は考え込んでいた。


やがて――


「……俺は元々、冒険者になるつもりだったしな」


剣河が口を開く。


ニヤッと笑う。


「お前についていくのも面白そうだ。いいぜ」


続いて、雷華がため息をつく。


「はぁ……」


少しだけ呆れたように、でもどこか楽しそうに。


「私は本当は学校に行くつもりだったけど」


視線をまっすぐ向ける。


「――あなたたちについていくわ」


「二人とも……ありがとう」


彗聖は静かに言う。


「絶対に後悔させない」


「おう、期待してるぜ」


「人生かけたんだから、ちゃんと責任取りなさいよ?」


「ああ――任せてくれ」


その瞬間。


三人の道が、一つに重なった。


それは、ただの進路じゃない。


覚悟で結ばれた、始まりだった。

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