回復能力訓練
昨日の反省は、しっかりと胸に刻まれていた。
あの一撃は“強さの証明”というより、“制御不足の露呈”だ。
(今日は出力じゃなくて制御だな……回復と支援に集中しよう)
彗聖はそう決めて、訓練場へ向かった。
グラウンドではすでにクラス全員が集まっており、担当教師の指示のもと、それぞれの固有能力に応じて三つのグループに分かれていた。
物理系固有能力――剣や身体能力を強化する者たち。
魔法系固有能力――属性や現象を操る者たち。
そして回復・支援系固有能力――味方を助け、戦況を整える者たち。
「各グループごとに訓練を開始しろ。自分の役割を理解することが重要だ」
その言葉と共に、訓練が始まる。
彗聖は迷わず、回復・支援系のグループへと足を運んだ。
(いきなり攻撃系をやるのは危険すぎるしな……まずはコントロールだ)
支援グループでは、すでに簡単な訓練が始まっていた。
物理系の生徒たちが軽く模擬戦を行い、その中でできた傷を回復する――そんな実践形式の内容だ。
「よし、次のペアいけ!」
掛け声と同時に、二人の物理系の生徒が打ち合いを始める。
剣と剣がぶつかり、鈍い音が響く。
やがて一方の腕に浅い切り傷ができた。
「そこまで!回復班、前へ!」
その合図で、支援系の生徒たちが動く。
彗聖も一歩前に出た。
(まずは……“聖”の力)
目を閉じ、意識を集中させる。
昨日感じ取った能力の感覚を、今度は丁寧にすくい上げるように。
(回復は優しく、流すように……出しすぎるな)
手をかざすと、淡い光が生まれる。
それは氷の冷たさとは違う、静かで澄んだ温もりを帯びていた。
ゆっくりと、その光を傷口へと向ける。
すると――
傷が、みるみるうちに塞がっていく。
皮膚が再生し、血が止まり、まるで最初から何もなかったかのように。
「……すご……」
誰かが小さく呟いた。
(よし……今度は上手くいった)
内心で安堵する。
昨日のような暴発はない。
出力も、範囲も、しっかり抑えられている。
だが――
「お、おい……なんか体、軽くないか?」
回復された生徒が戸惑った声を上げる。
その場で軽く体を動かし、驚いたように目を見開く。
「さっきより動きやすい……力も出やすい気がする」
(……あ)
彗聖は気づく。
(これ、回復だけじゃなくてバフも乗ってるのか)
“聖”の力は、ただ癒すだけではない。
対象を“強化する”性質も持っている。
しかも――
(これも増幅されてるな……)
自覚した瞬間、少しだけ背筋が冷える。
意図せずして、回復と同時に強化まで付与してしまっている。
だが今回は暴走ではなく、“制御された結果”だ。
「いいぞ、その調子だ!」
先生の声が飛ぶ。
「回復だけじゃない、支援も立派な力だ。戦いを支える重要な役割だぞ!」
その言葉に、彗聖は小さく息を吐いた。
(……なるほどな)
攻撃だけが強さじゃない。
守り、支え、引き上げる。
そのすべてを扱えるのが、自分の力。
氷の冷たさと、聖の温もり。
相反するようでいて、どちらも“支配する側”の力。
(……少しずつ、慣れていくか)
静かにそう思いながら、彗聖は再び手をかざした。




