Mission4:口は災いの元
ゴォオォォォ…!
俺は今、炎に包まれながら、一切身動きの取れない状態で宇宙から地表への超速ダイビングを楽しんで─
「うわぁああぁっ!」
─などいなかった。
五感の完全再現が可能なフルダイブ型のVR機器の開発・普及によって、バンジージャンプやスカイダイビング等のレジャーは身近なものとなった。
更に“本物”で有りがちな事故の危険性が皆無という絶対的な安全性から、VRバンジーは一時期ブームになったほどだ。
俺も興味本位で、VR機器のアピールのため最初からインストールされていることも多いこれらの体験をしたことがある。
態々有料版を買う─その奇特さから「落下民」と呼ばれる者からすると物足りないらしい体験版VRバンジーであるが、俺のVRバンジーのアプリ利用履歴が1件で止まっていることからどうであったかを察して欲しい。
「あぁああぁあ~っ!!」
(“高所”にも程があるだろ~っ!!)
内心でそう叫ぶ俺だが、実際に口から出るのは振動で揺れる悲鳴オンリーだった。
オォォォ、ブワッ…!
「ああぁぁ、あ…?」
その時、ドロップカプセルを包んでいた炎が吹き飛ばされるようにして鎮火し、俺の視界には快晴の空が広がった。
『成層圏に突入しました。
高度約160,000フィート、…15、…14、…13─』
マッハなど優に超える速度で減る高度。
『高度100,000フィートに到達。』
『ピコン!』
はるか下に広がっていた雲海がそれなりに近くなった時、ツクヨミのアナウンスと共に通知を示す電子音。
〔 release 〕
(ん?何だこれ。)
それと同時に目の前に表示された単語を、俺は思わず読み上げる。
「れ…り、『リリース』?」
多くの日本人がそうであるように、俺はたどたどしく英語で“解放”を意味する言葉を口にした。
その瞬間─
『音声認証を確認しました。』
「…は?」
ボボンッ!
─俺が自らが口にした言葉の意味に思い当たる暇も無く、ツクヨミのアナウンスと爆発音。
足元から伝わって来た振動から推測するに、ドロップカプセルの底面外周が何ヵ所か同時に爆発したようだ。
ガタガタガタッ…!
「おいっ!ツクヨミ!?」
明らかに意図的な爆発と、とても正常とは思えないドロップカプセルの激しい振動に、俺はこの事態の原因であろうサポートAIを呼ぶ。
『両腕部のロック解除。
マスター、武器をお取り下さい。』
ガタガタ!
こんな非常事態にもかかわらず、淡々と俺に指示を出してくるツクヨミ。
(ちっ、これも“仕様”か…!?)
「武器!?………、武器ってどこだよっ!?」
キョロキョロ
この揺れの最中では未だに固定されたままの胴体と足がありがたいが、限られた視界の範囲にそれらしい物は見当たらず、俺は半ばキレながらツクヨミに武器の所在を聞いた。
『ガイドを表示します。』
[ weapon ]━↘️
ツクヨミがそうアナウンスすると、俺の視界に矢印が現れ、その矢印が示す方へ視線を辿ると─
(あれかよっ!?)
─矢印が示していたのは、先ほど俺が周りを見渡した際にスルーした左右の縦長の出っ張り、その右手側であった。
妙にドロップカプセル内のスペースを圧迫するとは思っていたが、俺はてっきりドロップカプセルのテクスチャだと思っていた。
カチャ…、パカッ!
俺が自由に動く腕の右手を伸ばせば、思考を読み取ったのかロックが外れ、開いたその中にあったのは─
『ピピッ』
[〈トルバーⅠ〉]
[ damage 100 ATK 2 ]
[ capacity +20% condition 100% ]
─という名称の、円筒にグリップとトリガーが付いただけのような、実に初期装備らしいシンプルなデザインのバズーカ砲であった。
ダメージとATK─つまり攻撃力がどう違うのかは分からないが、ダメージ100が弱いわけが無い。
俺は躊躇うこと無く〈トルバーⅠ〉を装備─
『ビッ!』
[※ caution ※]
[ capacity 90% speed 50%↓]
─しようとしたら、ただでさえ遅いのに更に速さが半減するという警告が出る。
しかし俺は、元より速さを捨てた身。
(速度半減?ナンボのモンじゃい!)
ガッ…!
『ピッ!』
[NEW weapon !]
[ 右腕装備 〈トルバーⅠ〉 残弾10 ]
俺が〈トルバーⅠ〉を手に取ると、そんなメッセージが表示される。
どうやら武器の入手と同時に、ある程度の弾は自動で手に入るらしく、FPSのように「銃はあるのに弾が無い!」とならずに済むのは楽だ。
しかし今は、暢気にメッセージを読んで場合では無いようで─
『武装を確認。
耐熱外殻、パージします。』
バシュンッ!
─俺が入っていたドロップカプセルは、未だに俺を固定する足元と背中の枠を残して分解する。
ビュオゥッ!
「うわぷっ!?」
VRスカイダイビングで体験したものなど比べものにならない風圧に、俺は生身でないにもかかわらず息が詰まる錯覚に陥った。
(ひぇ~っ、どんだけ高いんだ!?)
一体どれ程の高度なのか、知りたいような、知りたく無いような…。
『間も無く高度50,000フィートです。』
飛行機が飛ぶ高度の5倍の高さじゃねぇか!
まさかこんなとこからスカイダイビングしろって話じゃ無いよな!?
『義体の全ロック解除。
マスター、飛んで下さい。』
おー…嘘だと言ってくれ、我がツクヨミ様よ。
次回、やっとフィールドに…
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