Mission3:チュートリアルなぞ無い!
本編開始です。
さて。
義体の選択を完了し─ゲーム的に言うなら事前に作成した俺のアバターと併せて、キャラクターメイキングが終わったわけだ。
となるとお次は、多くのゲームでは形式の違いはあれどチュートリアルが開始されることだろう。
ガコ…、ゴウンゴウンゴウン
しかし【 prosthetic war 】は王道に喧嘩を売って行くスタイルの【 game form 】社製。
故に、仮にチュートリアル的な何かがあったとしても、他のゲームのように手取り足取り教えてくれるような優しさを求めてはいけない。
ガコンッ
『パイロットボックスの搭載完了。』
先ほどから外側で音が響いていたような気がしていたのだが、どうやら俺のアバターは箱型ユニットに入っていたらしく、俺が選んだ〈prosthesis gear〉にそのまま載み込まれてしまったようだ。
『〈prosthesis gear〉との接続完了。
各動作テスト開始…、完了。
システムオールグリーン。』
(おおっ…、何か“それ”っぽい!)
アニメや映画の出撃シーケンスそのものな状況に感動を覚える俺。
アニメや映画では後になるにつれカットされがちであるが、出撃シーン─特に最初の出撃シーンは何度視ても高揚するものだ。
そして遂に、その瞬間が訪れる。
『〈 possession system 〉起動します。』
『ヴォンッ…!』
(キターーッ!)
機体の起動音が鳴れば、外の景色が映し出される─
(………、あれ?)
─ことは無く、相変わらず俺の視界は黒一色。
(何だこれ、バグか?)
『続いて、降下フェイズを開始します。』
「おーいツクヨミ、ちょっと問題発生だ。」
案の定、このまま実地に放り込まれるようだが、さすがにこれはいけない。
VRが一般化する以前のデスクトップ型のゲームでは「目隠し縛りプレイ」なる遊び方があったらしいが、いくら formゲーマーを自認する俺も、【form】社製ゲームで「初見・縛りプレイ」が可能なほど「変態」を極めていないのだ!
俺は淡々と「降下フェイズ」とやらを進めるツクヨミに、準備を中止するように言った。
ゲームの雰囲気的なあれであることは分かっているが、「『システムオールグリーン』とは?」とツッコミを入れたくなる。
『システムは正常に稼働していますが?』
ウウィーン…
「いや、ツクヨミにはそう見えているんだろうが…」
当然と言うべきか、【 prosthetic war 】内の存在であるツクヨミにゲームのバグは認識されていないようで─まぁ、「あなたの世界はバグっています!」なんて上位次元の存在に言われたところで、その世界の住民には狂人としか映らないだろう。
現実世界にも「物理的に不可能にもかかわらず飛べる」クマバチなる虫が存在していたようだが、この虫を根拠に「現実世界はバグっている!」と誰かが言い出しても、俺は「あっそ。」としか思わない。
(…バグ(=虫)だけに、ってな!)
しかし俺は快適に【 prosthetic war 】をプレイするべく、どうにかこうにかと苦労しながらも俺の現状をツクヨミに切に訴えた。
『成る程、…ところでマスター。
マスターは高所に耐性が有りますか?』
ガコッ…
しかし俺の切な訴えに対してツクヨミは、バグの影響を受けてしまったのか、俺へのヘンテコな質問を返答とした。
「え?…まぁ、高所恐怖症では無いな。」
取り敢えずツクヨミからの質問に答えたものの、何故今高所への耐性について聞かれたのか。
俺の訴えに基づいての質問であるとするなら、そこはせめて暗所への耐性について聞くところではないのだろうか?
これは本格的に【 prosthetic war 】がバグってしまっているのかも知れない…。
プシュッ
『それは何よりです。では…
ドロップカプセルとの映像リンクを開始。』
俺の答えを受けて、ツクヨミがそうアナウンスすると─
パッ!
「おわっ!って、おぉっ…!」
─黒一色であった俺の視界にはズラリと並んだ金属のカプセルにクレーンアームという、実にSFチックな格納庫のような光景が広がった。
ゴウン…、シュボッ!
いや…「格納庫のような」では無く、〈prosthesis gear〉の格納庫兼出撃口なのだろう。
「ドロップカプセル」とツクヨミが言っていたように、今まさに射出されて行った金属カプセルの中には出撃する〈prosthesis gear〉が入っていたのだろう。
つまりパイロット(俺のアバター)in 〈prosthesis gear〉in ドロップカプセル、なわけだ。
それどんな過剰包装?
(…まぁ、大気圏に突入するなら、それくらいの防護は必要か。)
等と暢気なことを考えていた俺であったが、俺はツクヨミが何故「高所への耐性」について質問してきたか、その意味を考えるべきだった。
遂に目にした【 prosthetic war 】の世界に対する感動で俺の頭からスッポリ抜け落ちてしまったが、ブラックアウトがバグで無かったのであれば、必然的にツクヨミに「バグの影響」などというものは存在していなかったのだから。
『ドロップカプセル、セット完了。
出撃待機時間…0、出撃します。』
「ゑ…?」
ツクヨミの宣告を受けた俺は、ここに至りようやく事の重大さに気付くも…、もう遅い。
『ご武運をマスター、“エントリー”』
「ちょ、待っ…─」
シュボッ!
止めようとした俺だったが無慈悲にもカプセルは射出され、俺は大気圏で燃え尽きる宇宙ゴミの気分を味わったのであった。
[称号獲得:ファーストペンギン]
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