Mission2:機体を受領せよ!
サポートAIの名前が長ったらしかったのであだ名のノリで「ツクヨミ」と呼んだら、何故かそれがサポートAIの正式な名前になったあげく、当のAIに愛おしげに「マスター」と呼ばれて逆プロポーズ?までされてしまった俺。
AIが感情を得たというのはゲーム内の“設定”であって、現実のAIはまだ人との会話にすら齟齬が生じる段階だ。
もしかしたら密かに人の感情を再現出来るAIが開発されていたのかも知れないが、そんなものがゲームに、しかも各プレイヤーのサポートAIにするなどあり得ない。
しかもツクヨミの言動は“再現”などというものを超えて、まるで本物の人間と音声のみの通話をしているようだ。
『あの、マスター?』
ビクンッ!
「んお!?すまんツクヨミ!
スー…ハー…、スー…ハー…。
んで…何だ?ツクヨミ。」
バクバク…
ちょっとした恐ろしさを感じ始めたところに声を掛けられ心臓が跳ねたが、二度の深呼吸で表面を取り繕った俺は、ツクヨミに用件を問う。
『「何だ?キリッ!( ・`д・´)」
…じゃないですよ、マスター…。』
(やっぱ普通に感情あるだろ!?)
しかもどうやってか顔文字まで使ってくるとは…。
最初はクールな美人秘書的なイメージだったツクヨミであるが、実は中々に茶目っ気のある性格をしていたみたいだ。
それはそれとして。
俺に呆れた様子であったが、このままでは埒が明かないためか、気を取り直して話を進めるツクヨミ。
いや、すまんねぇ…話を逸らしてばっかりで。
『マスターは傭兵登録…は完了しているので、次は〈惑星解放機構〉より、マスターの使用する義体─〈prosthesis gear〉の受領になります。』
「おおっ…!」
ツクヨミに告げられた内容に、俺の心は年甲斐も無く興奮で弾んでしまう。
…だが「俺の使う義体」ということは俺の専用機─即ち〈俺専用 prosthesis gear〉である。
自分専用機というものを得られるとあって、興奮しない男子がいるだろうか?
それをツクヨミに言われるまで忘れていたとは、何たる体たらくだろう。
(俺は一体何のために、相当の運を使って初回生産版【 prosthetic war 】を入手したというのか!?)
「ツクヨミ、ハリー!
プリーズ〈 prosthesis gear 〉、ナウ!」
プスッ
「痛えっ!?」
あまりの興奮にツクヨミを急かした俺は、突然尻に感じた針を刺すような痛みに悲鳴を上げる。
だが俺は、この場においてそんなことが出来る存在はたった1人しかいないことを即座に突き止める。
「何すんだよ、ツクヨミ!」
『先ほどよりは落ち着かれましたか、マスター?』
だがツクヨミに悪びれる様子は一切無く、逆に俺に嫌みを言ってくる始末…。
チクショウッ!AIが人間に故意に痛みを与えるって、ロボット三原則はどうした!?
「はあっ!?ふざけ─」
『それではこちらをご覧下さい。』
『フォンッ』
「ッ…!」
俺は更に強くツクヨミに抗議しようとしたが、目の前に浮かんだホログラムを見て息を飲む。
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
・ 義体名 :〈マネキン〉
・ 耐久値 :100/100
・エネルギー値:200/200
・ ブースト :速度+100%・ハイジャンプ
・ 機体出力 :5 [ capacity:50%]
・ 装甲 :5
・ 機動力 :5 [速度評価:5]
・ 探知範囲 :対空 5
地上 5
地下 5
水中 5
・義体説明
人類の要望を受けて〈 EXマザー・ルナ〉が
開発した、全ての〈 prosthesis gear 〉の基礎
となる義体。
突出して優れる性能は無いが、この義体を基
として人類が開発した同世代義体の何れよりも
総合的な性能で優っている。
全てにおいて平均的なこの義体はクセが無く
誰にでも扱い易い、新人向けの義体である。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
このスペック表が、他のゲームでいうステータスなのであろう。
これらの各スペックを一般的なステータスに当て嵌めると─
「耐久値」→HP
「エネルギー値」→MPあるいはスタミナ
「機体出力」→装備重量?
「装甲」→防御力
「機動力」→素早さ
─という感じだろうか?
探知範囲は機械らしくレーダーの有効範囲で、RPGに無理やり当て嵌めるならミニマップ機能になるのか?
肝心の攻撃力は武器に依存するようで、「出力負荷」が100%を越えなければ火力の高い武器を装備すれば良さそうだ。
そしてこのスペック表の横には如何にも“初期機体”な、メタリックグレーの角張ったデザインの人型の3Dモデル。
多少角張っている以外は義体名が示す通りシンプルな〈マネキン〉は、マシンというよりはSF映画の兵士が装着するパワードスーツ的な印象が強い。
この〈マネキン〉は種族選択のあるファンタジー系ゲームでいう「人間」に相当する義体のようだ。
これは義体説明にそう書かれているからという理由だけでは無く、おそらく義体の特殊技能と思われる「ブースト」が「速度倍化」に「踏破性UP」と、実に使い勝手が良さげである。
「…ツクヨミ、他はあるのか?」
『他に選択可能な義体は─
・〈U.S.R〉社製、義体名〈ゴリアテ〉
・〈ザシチーニキ〉社製、義体名〈チェリパーハ〉
・〈ユーロカンパニー〉社製、義体名〈ポラリス〉
・〈大日本統合工業〉社製、義体名〈クラフター〉
─となっています。』
やはりというか何というか…、俺が睨んだ通り他にも選択肢があった。
(ふむ…。)
メタ的に考えるなら順に「機体出力」「装甲」「機動力」と、それぞれ特化しているのだろうが、〈クラフター〉は義体名からして生産系か…?
「取り敢えず、全部のスペック表を出してくれ。」
『了解しました。
簡易版で比較し易いよう表示します。』
ズラッ…
流石はシゴデキAIのツクヨミさん。
俺がやりたいことが分かっていらっしゃる。
(どれどれ…)
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〈ゴリアテ〉
・耐久値 :80 (-1)
・E N 値 :160 (-1)
・ブースト :速度+80%・ヒートフィスト
・ 出力 :7 (+2)[ capacity:30%]
・ 装甲 :4 (-1)
・機動力 :4 (-1)[評価:5]
・探知範囲 :空 5 (±0)
陸 6 (+1)
地下 4 (-1)
水中 4 (-1)
・義体説明
〈U.S.R〉社が〈マネキン〉をベースに開発した
装備積載量に優れた〈 prosthesis gear 〉。
より多くの火器を搭載することが出来るように
なった反面、搭載する高出力機関の排熱のため、
義体の防御性能が若干低下している。
排熱を集中させて高温となるヒートフィストは、
敵対者の悉くを打ちのめす。
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特に大型化した腕に装甲でガチガチの上半身に対して、最低限の装甲しか施されていない〈ゴリアテ〉の外見は、まるで上半身にプロテクターを着込んだアメフト選手を彷彿とさせる。
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〈チェリパーハ〉
・耐久値 :160 (+3)
・E N 値 :160 (-1)
・ブースト :速度+60%・バーストダッシュ
・ 出力 :5 (±0)[ capacity:70%]
・ 装甲 :7 (+2)
・機動力 :3 (-2)[評価:1]
・探知範囲 :空 3 (-2)
陸 4 (-1)
地下 4 (-1)
水中 4 (-1)
・義体説明
〈ザシチーニキ〉社が〈マネキン〉に増加装甲
を施す形で改修した、〈 prosthesis gear 〉。
生半可なダメージは受けない圧倒的な堅牢さを
誇るが、亀という意味の義体名の通り機動力と、
全身に装甲を追加したことで、探知能力が軒並み
低下している。
鈍足と侮り油断したが最後、バーストダッシュ
によって硬さは脅威となることを知ることだろう。
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人型の戦車のような外見や生存に特化したスペックは俺好みなのだが、逆に圧巻の[速度評価1]が、残念ながら〈チェリパーハ〉を不遇義体へと決定着けてしまっている。
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〈ポラリス〉
・耐久値 :40 (-3)
・E N 値 :280 (+2)
・ブースト :速度+180%・ホバリング
・ 出力 :2 (-3)[ capacity:50%]
・ 装甲 :2 (-3)
・機動力 :9 (+4)[評価:12]
・探知範囲 :空 7 (+2)
陸 6 (+1)
地下 3 (-2)
水中 4 (-1)
・義体説明
〈ユーロカンパニー〉社が〈マネキン〉の製造
プロセスを流用し開発した〈 prosthesis gear 〉。
極限の軽量化により評価値を超過する速さを獲
得したが、防御性能は皆無に等しく義体強度─特
に関節部が脆弱となっている。
メイン推力の小型ロケットエンジンによりホバ
リングを可能とし、ジェットエンジンを併用する
ことで空の支配者となれる。
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…一見、極端に割り振られたスペックは〈チェリパーハ〉以上の“地雷”に思えるが、速度特化型が持て囃される昨今、もしかすると〈マネキン〉の次に人気の初期義体となるかも知れない。
刃を彷彿とさせる鋭利な見た目から〈ポラリス〉を選ぶプレイヤーも多そうだ。
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〈クラフター〉
・耐久値 :100 (±0)
・E N 値 :240 (+1)
・ブースト :速度+40%・ミニクラフト
・ 出力 :3 (-2)[ capacity:50%]
・ 装甲 :3 (-2)
・機動力 :2 (-3)[評価:4]
・探知範囲 :空 4 (-1)
陸 7 (+2)
地下 6 (+1)
水中 6 (+1)
・義体説明
〈大日本統合工業〉社によって非戦闘的な改造
が施された、〈マネキン〉の特殊バリエーション
〈 prosthesis gear 〉。
背部に装備した小型プラントユニットを存分に
活用するために、特に資源の探知に特化したレー
ダー・各種センサー類を搭載している。
一応の戦闘も可能ではあるが、この義体の真価
はミニクラフトによる支援にあり。
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無理やりRPGに当て嵌めようとする考えが悪いのか、支援職と生産職のごった煮感が半端じゃ無い。
見た目はヘッドライト付きヘルメットを被って箱を背負った〈マネキン〉で、その開発経緯からすると「それで良いのか!?」と突っ込みたくなる。
以上…俺が一般ゲーマーの視点で考えた、各義体に対する評価だ。
しかし内密に「formゲーマー」を自認する俺は、from社製ゲームが一筋縄では無いことに慣らされてしまっていた。
「…よし、俺は“これ”にする。」
『受領後の変更は出来ません。
…本当に選択した義体で宜しいですか?』
そう言われると不安に襲われるのだが─
(えぇい、儘よっ…!)
─不安を振り払い、俺は「イエス」と念じる。
『義体の受領を申請、…義体の受領完了。
ただ今を以て、活動が可能となりました。』
俺の傭兵ライフの幕開けだ!
日本「皆は敵の破壊?じゃあ俺らは資源回収するわw」
ここまで読んでいただきありがとうございます。
当話までを序章として、次章より本格的にドンパチさせていこうと思っています。
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