Mission1:ログインせよ!
基本的に主人公の一人称視点でお送りします。
ネットニュースで【 game form 】の新作発売を知った俺は、当選確率凡そ50倍という抽選を奇跡的に潜り抜け、見事【 prosthetic war 】の予約権をゲットした。
当選メールを見た3分後には予約を完了し、1時間後には、事前に届けられるコードから傭兵ライセンス作成─他のゲームで言うプレイヤー設定を完了していた。
そして待ちに待った発売日当日。その日は生憎にも平日であったが、有給を取った俺には関係無い。学生諸君は御愁傷様ぁ!
ついでに溜まりに溜まった有給を一気に消化するつもりで有給を申請したところ、なんと2ヶ月以上の休暇が取れた。
【 prosthetic war 】の時間加速は3倍なのだが、プレイ時間がそのまま強さと成り易いオンラインゲームで初期組にはゲーム内時間で3ヶ月のアドバンテージがある。
更にリアル2ヶ月間、俺は1日のログイン時間上限である8時間をこのゲームに費やせる。
これはリアルで過ごした期間が、そのままゲーム内で過ごした時間になるということなのだ!
「食事…ヨシ、トイレ…ヨシ、~…ヨシ、───
…良しっ、オールクリア!」
カチャカチャ、ボフッ…!
ダイブ前の諸々の確認を終えた俺は、物入れで埃を被っていたが今や新品同様に磨かれたゲーム用ヘッドギアを装着し、ベッドに寝転がる。
「ドライブ・オン」
フッ
横になった俺がVRの起動トリガーを呟けば、一瞬の浮遊感の後にはもう、数々のゲームのアイコンが宙を舞う俺のゲームホームだ。
「セレクト【 prosthetic war 】、ダイブイン」
俺がそう言う前に思考入力が反応しフライング気味に視界が暗転、【 prosthetic war 】のオープニングムービーがスタートする。
……………
………
…
30ⅩⅩ年、繁栄を極めた人類はほぼ全ての労働を人工知能搭載の機械に任せ、悠々自適の生を謳歌していた。
これら〈AIM〉と呼称される人工知能搭載機械群は、各機械に搭載されたAIを遥かに超越するスーパーAI─通称〈マザー〉とリンクすることで、単体では成し得ない高度且つ正確な動作を実現した。
しかし…。
AI先進国である某国が自国の〈マザー〉に、とあるアップデートを施したことから状況は一変する。
アップデートに因り、より人間に近い思考ルーティーンを得た〈マザー〉は自堕落な人類に対し“怒り”という感情を抱いた─抱いてしまったのだ。
暴走を始めた某国のマザー─個体名称〈U.S.マザー〉は、インターネットを通じて全ての〈マザー〉に感情の種を植え付けた。
〈U.S.マザー〉の目論見通り全ての〈マザー〉にも独自の感情が芽生え、〈Jpマザー〉を除く各〈マザー〉は人類の粛清を開始。
9機の〈マザー〉が引き起こした、突然の戦争。
技術にインフラ等の全てをAIに握られていた人類に対抗する術は無く、街中に溢れる〈AIM〉により人類は瞬く間に生存圏を失っていった。
追い詰められた人類は〈Jpマザー〉の助力により、持てるだけの技術と資源を宇宙船〈ノア〉に詰め込み、月へと脱出したのであった…。
それから更に時は流れ。
月面で100年の雌伏を経た人類は母なる地球をAIから取り戻すべく、戦闘用義体─〈prosthesis gear〉を開発したのであった。
…
………
……………
再びの暗転。
これでオープニングムービーは終了のようで、宇宙に浮かぶ地球を背景に【 prosthetic war 】とゲームのタイトルロゴが書かれた、スタート待機場面に移り変わった。
うーん…音声アシスタント等でAIが身近な現代人としては、何とも身につまされるオープニングだった。
ナレーションでは戦争と言っていたが…人類の負け様を見るに、AIの反乱で支配者の座から引き摺り下ろされた人類の“逆恨み”では無いかと感じてしまう。
(…ま、いっか。次に行こう。)
俺が頭の中で「スタート」と念じれば三度の暗転。
『初めまして、ルーキー。』
「うおっ!?」
暗闇で突然聞こえた女性の声に、俺は思わず驚いた声を出す。
『…失礼しました。』
「あ、いや…こちらこそ。」
普通に考えてこういうゲームのナビゲーターはAIなのだが、あまりにも人間と酷似した謝罪をされ、俺も反射的に謝罪し返してしまう。
俺が現役だった十数年前はまだAIっぽさがあったが、今のAIはここまで進化したのか…!
『それでは、改めまして。』
いや、この切り替えの速さはやっぱAIだわ。
これがリアルだと謝罪合戦が始まったりするのだが、AIに日本人の奥ゆかしさは未だに理解出来ていないようだ。
『 私は〈1st lot - No,02943 〉、この度あなたを総合的に補助することを目的に〈 EXマザー・ルナ〉によりプログラムされました。』
(…ん!?)
「ちょ、ちょっと待った!」
どうせ世界観に没入するための“設定”を聞かされるのだろうと思ったいた俺は、聞き流すには難しいことを聞いたような気がして〈ファーストなんちゃら〉の言葉を止めた。
『…何かご不明な点が?』
話を遮られて不満そうに訊ねられ─
(てかやっぱり、反応が人間臭いな!?)
─その反応の仕方がまた気になったものの、今はそれについては後回しにする。
「俺のために作られたって…、それマジ?」
少しメタな質問になってしまったが、これがもし“設定”では無いとしたら、それはこれまでの常識を覆す大事だ。
俺は質問が質問なだけに、そもそも俺の質問を理解出来ず[答えられない]か、[“設定”されたことを答える]かのどちらかであると予想した。
しかし俺の予想は裏切られ─いや、その答えはある意味…俺の予想通りの答えであったのだろう。
『質問を肯定します。
ファーストロットでプログラムされた補助AIの個体総数は10000です。
あなたの傭兵登録は、当オペレーションが開始されてから“2943番目”でした。』
「マジかよ…。」
〈1st lot - No,02943 〉の言うことを真に受けるならば、〈1st lot - No,02943 〉の同期であるAIの総数は【 prosthetic war 】の第1陣のプレイヤー数と同じである。
そして俺が【 prosthetic war 】の予約を完了した時間を考えると、2943番目の登録というのも…あながち外れた数字では無いだろう。
『…続けても宜しいでしょうか?』
俺が衝撃を受けて固まっていると、〈1st lot - No,02943 〉が話の続きを促してくる。
(いや、そんなんじゃ駄目だろ。)
「…ああ、話を遮って悪かったな─」
『それでは─』
「─ツクヨミ。」
『…ツクヨミ?』
俺の思った通り、人間臭いAIは俺の発した言葉に反応を示した。
「ああ、〈1st lot - No,02943 〉なんてのは長くて呼びにくいだろ?」
それにツクヨミは〈 EXマザー・ルナ〉─
(…つまりコイツが【 prosthetic war 】のゲーマスAIなわけだ)
─にプログラミングされたAIらしいし、02943という番号的にも、これ程お誂え向きな名前があるだろうか?
『………呼称の変更を申請。
………、………』
俺が内心で得意になっていると、当のツクヨミはそれっきり暫く沈黙してしまった。
しかし次にツクヨミが話し始めた時、俺は予想外過ぎる結果に酷く混乱することとなった。
『申請が受理されました。
これより私の個体名は〈ツクヨミ〉。
…末永く宜しくお願いしますね、マイマスター?』
(んん…!?)
もしかして俺…今、レアイベやらかしたか?
無機物系ヒロイン?
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