Mission9:爆殺のプロ
【 prosthetic war 】がリリースされて、今日で一週間が経った。
ゲーム内では約1ヶ月が経過しているのだが、相変わらず闇市に出品されている武器のリストは〈ラビットホーンランス〉一本に染まっている。
これには原始人もニッコリだ。
そして新たな射撃武器が手に入らない間、俺がどうしていたかというと─
『ピピ!』
シュボッ…、チュドーンッ!
ガシュンガシュン…
『ピピ!』
シュボッ…、チュドーンッ!
ガシュンガシュン…
─1万Mtを稼いで公式ショップから入手するにしても、1万Mtを稼ぐまでは〈トルバーⅠ〉を使うしか無い。
だが一度の出撃で稼げるマテリアは、クソウサギ10体から回収出来る100Mt。
俺は一度の所要時間が平均1時間となるこれをこの一週間、ログイン制限一杯までひたすらに繰り返した。
すると単純計算(100Mt ×1日24回 ×6日間)で、14,400ものマテリアをクソウサギから回収したことになる。
加えてクソウサギは、解かせば200Mtとなる例の槍を20回に1回はドロップしたので、俺が今日までの6日間で稼いだマテリアの総計は3万Mt近くになった。
勿論これは単純に考えての話であり、実際はうっかり消し飛ばしてしまいマテリアが回収出来なかったり、〈ラビットレッグ〉なるパーツの設計図が槍の変わりにドロップしたりと、何だかんだで28,000Mtに少し足りない稼ぎとなった。
事実、目標の1万Mtを稼ぎ出したのは3日目のことであり、ここまで爆風狩りを続けていると「もう良いや…。」という気持ちになってしまった。
〈ラビットレッグ〉はブースト速度アップとハイジャンプが使用可能となる、一般的には有用な効果があった。
しかし換装した場合脚部の装甲値が義体の装甲値-1となるデメリットがあったため、速攻でお蔵入りとなった。
「てことで今日は、稼いだマテリアをカスタムチップ代に全ツッパするぞ!」
『…マスターのお好きにどうぞ。』
共にマテリア稼ぎをした相棒の許可も下りたことだし、早速公式ショップへGo。
カスタムチップは闇市でもちょくちょく出ているのだが、まだ公式ショップで買った方が安い。
「チップが一つ…、チップが二つ…。」
一つ一つ数えながら購入した結果、買えたカスタムチップはたったの6枚。
約1,000Mtが残ったが、次に買うカスタムチップの値段は8,000Mt。
「あっ!?」
カスタムチップの購入を終えて、なんとなくで闇市を見ていた俺は、相場より安い6,500Mtでカスタムチップが売りに出されているのを発見し、思わず声を上げた。
(で、でも…500くらいの差で─)
『大型弾100発分損しましたね、マスター。』
「ぐぅ…!」
心の中で言い訳をして落ち着こうとした俺は、ツクヨミにより突き付けられた具体的な損失に、ショックを受け止め切れずに崩れ落ちたのであった。
ガバッ!
「こうなりゃヤケだっ、ツクヨミ『エントリー』!」
『音声認証、確認。
降下待機時間0、出撃します。』
フッ…
orzの姿勢から俺が顔を上げてキーワードを叫べばツクヨミが機械的に応じ、視界が暗転したと思った次の瞬間には、俺は既に〈チェリハーパ〉と同期してドロップカプセルの中。
俺の認識としてはほんの一瞬だが、以前気になって時間の経過を確認したところ、どうやら毎度きちんと“俺の〈prosthesis gear〉への搭載”から行われているらしいことが判明した。
ソロ専用のゲームだとそういう内部処理で済むのだが、MMOでの時間跳躍は本当にどういう処理をしているのか?
ズドンッ!…バシュゥッ
それはそうと今回は─というか最初以外は、ちゃんと着地してからドロップカプセルの外に出ている。
ガシュンガシュンガシュンガシュン
スペックでは[速度評価]が最低の〈チェリハーパ〉であるが、使っている感じは「ちょっとゆっくり目の歩き」という速度感だ。
他のゲームでタンク職向けの全身鎧を装着しているよりは、〈チェリハーパ〉の方がよほど動けている印象だ。
まぁ…他のプレイヤーを見た感じ〈チェリハーパ〉の速度を「徒歩」と表現するなら、[速度評価5]の義体は「自転車」といった具合の速度感だ。
〈ポラリス〉?…あれは「暴走バイク」だよ。
そんなことを考えながら探索すること、一般的なカップラーメンの完成する時間。
…ちなみに俺は、1分ほど早い麺硬めの状態で食うのが好きだ。
『ピピ!』
もはや親の声よりも聞いた電子音。
俺はいつもの流れ作業の如く、対象を確認すること無くマーカーが示した場所に〈トルバーⅠ〉の砲口を向け─
『マスターッ!
〈 unknown 〉ですっ、スキャンを!』
─ツクヨミが鋭く発した制止の言葉に、今度は引き金を引く前に留まることが出来たのであった。
直ぐ様、マーカーの示す方に目を向け枠の中を良く見るように意識すれば、アイカメラのズーム機能が働いて〈 unknown 〉の姿をはっきりと捉える。
「ッ…!」
そして見えた〈 unknown 〉の姿に、感情が昂る余りに息を詰まらせる俺。
だがそれも無理の無い話…、何故なら─
(見つけたぜ、捻くれウサギ…!)
─四角で囲まれた“そこ”に居たのは、〈ランスホーンラビット〉に似た姿ながら、〈RHラビット〉とは決定的に異なる捻れた角のホーンラビット(仮)であったのだから。
初日以降、千体以上もの〈RHラビット〉を狩り続けての漸くの再会だ。
(レアMOBにしたって、遭遇しなさ過ぎだろっ!?)
俺の遭遇例をマトモに受けるのならば、このホーンラビット(仮)の出現率は0.001%以下ということになってしまうのだが…。
あれか?初遭遇で自己紹介の暇も与えず木っ端微塵に吹き飛ばしたのが、そんなに根に持たれることなのか!?
ジーッ…
[データ照合中…]
そんなことを思いながら俺は、ホーンラビット(仮)を注視する。
すると、時間にして僅か数秒後。
『ピピ!』
『スキャン完了。
ELO呼称、〈ドリルホーンラビット〉です。』
(なるほど、あの捻れ角はドリルか…。)
言われて見れば確かに、あの捻れた角はドリル─とは言ってもリアルで一般的に使われる工作用ドリルでは無く、古典的なロボット作品のドリルだが。
そして〈RHラビット〉をスキャンした時も思ったのだが、「スキャンして〈ELO〉のデータベースと合致するんなら、最初から〈prosthesis gear〉に既にあるデータは入れておけよ。」…と。
(…まぁ、良い。)
どうせゲーム的な都合で言えば「ネタバレ防止」だろうし、世界観的にもそれらしい理由があるのだろう。
カチッ、シュボッ!
元より大したことの無い自分のツッコミに適当な理由を付けた俺は、ホーンラビット(仮)改め〈DHラビット〉の至近を狙って〈トルバーⅠ〉を発射。
とその時─
キィィィィン…ッ!
『レアMOBいただきぃ~!』
チュドーンッ!
『ぐわぁああっ!?』
─上空より突如〈ポラリス〉が飛来し、〈トルバーⅠ〉から発射されたロケット弾の爆発に巻き込まれたのであった。
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