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さて、ここなら暴れても壊れる物もないからね、ここで存分に話し合おうじゃないか。
おやおや、睨んでては話し合いにならないのだから、そう怖い顔はしないでくれないかい。
ああ、そうだ。残念ながらお茶は出せないよ。また投げつけられても困るからねぇ。
そうそう、ここで冷静になれるのが一番賢い人間だ。では先ほどの話の続きをしようか。
バカなお前でも分かるように説明すると、お前はこの国の第二王子を含めいずれ未来を担う貴族子息を手玉に取り、国を崩壊させようとした罪で裁かれた。
しかもその子息には婚約者がおり、お前が篭絡したために婚約は破綻している。
この婚約は貴族間のバランスを考えての政略的なものだった。そのため、各方面で多大な被害をもたらしている。
なんの被害か分からないって顔だねぇ。
例えばそうだね、お前のハーレム要員だった伯爵子息。アレの領地はここ数年不作でね、領民を養うために土地の改良と物資援助を目的としての縁組だった。
婚約令嬢の子爵家は元々学者気質な所があり、代々土地改良をし穀物や農作物の一大産地となっている。そのノウハウと領民を飢えさせないよう農作物の援助のためのものだった。それをお前は見事に潰してくれたってわけさ。
自分には関係ないって顔は見飽きたよ。
その後、伯爵家とその令息はどうなったか知っているかい?
伯爵家は爵位を返上し領地を国に戻し平民へと下った。令息もまた平民として野に下っているよ。
国はその領地を慰謝料として元婚約者の子爵家へ与え、国として対策を支援するらしいねぇ。
はぁ?なぜ平民になったのかって? お前、ここまで聞いてなにも考えないんだねぇ。
れっきとした国が絡んだ政略婚約だったからだろうが。あの伯爵家は隣国との境にある。領地が荒れ他国から賊が侵入でもしたら一大事じゃないかい。
今は争うほど国同士の仲が悪いわけじゃいが、将来どうなるか分からない。だから一刻も早く立て直しが必要だったのにねぇ。
お前は本当に花畑の頭をしてるねぇ。
伯爵家として国に賠償をしたのが爵位と領地の返上だ。これで国としても面目他立つが、それでは婚約していた子爵家との賠償金が払えない。だから元伯爵一家全員、借金奴隷として平民になったのさ。
あたりまえだろう? 浮気で有責破綻させたのに、賠償金が発生しないなんてことはない。
先代はもういないが、あの一家にはまだ働き盛りの元伯爵夫妻と十七になる子息と十四、十歳の娘二人がいるから充分さ。これから一家は労働奴隷として賠償金を払うために生きていくんだよ。
他の三人も、似ったような理由と立場になったけれども聞きたいかい?
おや? そうかい。ああ、王子様の方は流石に平民にはできなくて、王位継承権はく奪の上、王城外れの塔で幽閉が決まったらしいよ。
王子に対して対応が軽いって? あはは。お前はそう思うのかい。
確かにこれだけでは分からないのも仕方ないが、この国のあり方を知っていればそうとも言えないのだがねぇ。
一応、腐ってもこの国の貴族だったっていうのに残念だよ。
生まれ育ちは平民だったから、そんなこと知ったことではないって?
それでも十の頃には男爵家に引き取られ、五年は貴族として教育されているはずだから知らないってことはないんだが。まあ、いい。
この国はある意味弱肉強食の所があるのは知っているかい?
働いた分だけの対価を払う。平民も貴族も等しく働き、その対価として自由と権利を得ている。
おや?これは理解できるのかい。 バカにしていないさね。ただの確認だと思ってくれないかい。
そう、それは幽閉された人間にも適応されるってことさ。
お前に篭絡されたとはいえ、王族として教育されていたことは確かだからね。いないよりはマシ程度でも政務に関わらせるらしい。
衣食住を提供する代わりに、今後一切人前には出ず一生塔の中で仕事をしろという罰らしいねぇ。さぼれば住以外のあらゆるもの与えられない。
適当な事をすれば僅かに与えた使用人すら取り上げられる。ああ、当然去勢してから幽閉されることになっているはずだ。使用人を孕まされるなどということになってはいけないからね。
ここまでは分かったかい? ではお前の話をしようか。




